第十四話 迷子?
そして入り口に居る門番に話しかけてみた。
「あの私たちここのギルドに登録しに来たのですが。」
そう言うと特に不信感も持たずに門番はあっさりと私たちを通らせた。大きな都市にテレポートさせると聞いていたからもっと厳重な警備とかあるのかと思ったらそうでもなかったわね。
「でも魔女の時は魔界にずっといたからこっちの人間界なんて始めて来たよ。」
アルテミスは街並みを興味深そうに眺めながら言った。
「奇遇ですね。私も初めて来ましたよ。前世ではずっと魔王様の事ばかり考えて部屋にこもっていましたから。」
二人のその言葉に思わず足を止める。
「どうかしましたか?」
私の動きが止まったことに気が付いてローザが私の方を振り返る。
「ラルムはギルドに行ってと言っていたけど誰も場所を知らないという事なのかしら?」
「そう言えばそうだな!」
笑顔であっけらかんと言い放つアルテミスに私は頭を押さえた。せめて誰か一人は案内のできる人を入れてほしかったわ……。魔界に帰ったら真っ先にラルムにお仕置きね。
「クシュンッ!この感覚は!?もしや魔王様が私のうわさをしている!?」
「そんなことは一生ないぞこの愚昧が!」
「そんなことより薫は無事でしょうか?」
三人はそれぞれ若干距離をとっていた。
「そう言えばあの二人は人間界の地理にどれくらい詳しいんでしょうか?適当に決めちゃったのでそこらへんわかんないですけどまあいっか。」
ラルムのあっけらかんと言い放った言葉によりその場で乱闘騒ぎに発展した。
「五月蠅いですわよ!」
魔王である薫がいないせいか月夜の機嫌は最悪だった。
「一大事だ!この愚妹人間界の地理に詳しい奴をメンツに居れるのを忘れていやがった!」
アンジュは今にも刀で切りかかりそうな勢いで言った。
「何ですって!?」
ラルムのその無責任な行為に月夜は目を見開いた。
「もし、薫の身に何かあったら氷漬けにして魔界の底に沈めますから。」
「でしたら私は特製の毒でドロドロにとかして差し上げますわ。」
「なら俺はこの自慢の刀で切り刻むとしよう。」
三人はラルムを囲う様にそれぞれ構えていた。
「ご、ごめんなさーい!」
当然今のこの場にはラルムを保護するような人物は一人もいなかった。