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青春の2ページ

理子とタケの青春ショート・ショート、第2弾

『恋愛映画』


「ねえ。映画見に行かない?『君に会いたくて』って恋愛映画見に行きたいのよ」

「恋愛映画?そんなもん彼氏と一緒に行ってくりゃいいだろう」


「それが今の彼、恋愛映画は眠くなるから嫌だとか言うのよ」

「じゃあ、一人で行け」


「寂しいじゃない。映画の感想とか話すのが楽しいのに。それに、私知ってるのよ」

「何だよ?」


「タケ見た目によらず、恋愛物好きでしょう。図書館で良く恋愛小説借りてるの知ってるのよ」

「な!なんで、そんな事、知ってるんだ……。もしや……図書委員を口説いて人の図書カード見たんじゃ」


「当たり〜」

「てめえ。人の個人情報を勝手に!」


「ばらされたくなければ、映画一緒に行ってくれるわよね」

「……わかったよ」


 困ったやつだとため息をつきながら、ふと気がついた。図書カードを見たのなら、俺が『君に会いたくて』の原作小説読んでるの知ってるよな。しかも俺がこの見た目で恋愛映画見に行くの恥ずかしがるの分かってるだろうし。

 もしかして理子は俺の為に映画に誘ったのだろうか?


「なあ。どうして『君に会いたくて』見たいんだ?」

「主演の俳優のファンだから」


 ミーハーな事を言ってるが、そんな話聞いた事がなかった。やっぱり気使ってたんだな。理子といると時々こういう事が会って、そのさりげない気遣いに俺は何度だって好きになってしまうのだった。



『料理』


「タケ口開けて?」

「ああん?……げほっ!何口に入れた」


「どう?」


 俺は咳き込みながら、水を要求した。どうやら口に入れられたのはクッキーの要だった。


「水が欲しくなるほど不味かった?」

「味は悪くねぇけど、堅くてぼそぼそするな」


「そうなのよ。手作りクッキーってどうも、そこら辺が難しいのよね。今の彼氏が『お菓子作りとかする子可愛いよな』って人なのよ。だから作ってみたんだけどね……」

「いいんじゃねぇのか。不味くはないし、こういうのは気持ちだろ」


「でももうちょっと凝りたいって言うか……」

「あのよー。女の無駄に凝った食べものって男は喜ばこばねぇぞ。ハートの弁当とか、デコレーションされたチョコとか、食べ物にそんなファンタジーは求めてないんだよ。普通が一番」


「そっかー。あんたもいい事いうじゃない。ありがとう」

「おう」


「ねえアドバイスのお礼に今度なんか作ってきてあげようか?」


 理子が俺の為に作ってくれる料理。それだけでなんでもいいと思ってしまうぐらい嬉しい。そんな気持を隠しながら言った。


「腹にたまる。弁当がいい」

「わかった。じゃあ私これからデートだから。また今度ね〜」


 他の男の所に向かう理子を見ながら、喜びを噛みしめた。理子の弁当が楽しみだな。



 数日後、理子は約束通り弁当を持ってきた。しかし開けた瞬間喜びは吹き飛び、思わず首を傾げた。

 白いご飯に隅のほうに少しのプチトマトとブロッコリー。残りは全て黄色い炒り卵。前衛的すぎる。しかし作ってくれた物に文句を言うのもどうなんだ?でも気になって仕方がなかった。


「なんで大量の炒り卵?」

「それね。最初卵焼き作ろうとしたのよ。でも美味く作れなくて炒り卵になっちゃって。何度も練習しているうちに、大量の炒り卵が出来ちゃったのよ。今日の私のお弁当も同じなのよ」


 おそろいの弁当というのはいいかもしれない。例え炒り卵だらけの弁当だとしても。


「まあ味は卵焼きも炒り卵も変わんねえよ」


 その時の俺は知らなかった。理子が卵焼きを習得するまで、この炒り卵弁当が続く事を。

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