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其の四:別離

(…一体僕はどうしたんだ……)

家のベッドで寝ながらそう思っていた。

好きじゃないのに。

結局別れを言う事はできなかった。

このままじゃいけない!

別れなければ!!

だが、何もせずに日々は過ぎていった。

僕と藤本は何回かデートをした。

その度に『別れよう』と思っているのだが、なかなか言い出せない。

藤本は藤本で、毎日楽しそうだ。

最初のデートの日から、大学にくるときもコンタクトにしたり髪もしばらなかった。

その事で事情を知っている友人は、からかったりしてきた。

僕はそれを適当に流しながら日々を過ごしてきた。

そして十二月。

季節は冬。

大学では各教科から課題の提出を迫られていた。

昼休みに僕は友人と自動販売機のジュースを飲みながら廊下を歩いていた。

「お前さぁ。梅田教授の課題終わった?」


「いや、全然。まだ花井教授のしか終わってない。」


「マジかよ。そりゃやべぇって。」


「やばいよなぁ…。」


「あぁ……」


「……」


重苦しい会話。

そのうち、どちらともなくその話題には触れないようにした。

「そういえばさ、お前まだ藤本と付き合ってんだろ?」


「…まぁな。」


「本当に好きになったのか?」


「……違う…と思う。」


「なんだ、消極的だな。」


そう。

僕は迷っている。

もしかしたら藤本の事を好きになってるのかも、と。

友人は何も言わない僕を見て、申し訳なさそうに言った。

「悪かったよ。まさかあの告白が成功しちまうとは思わなくてさ。」


「…僕もだよ。」


「ジャンケンってのが間違いだったな。別の方法を取ればよかったぜ。」


「そういう問題じゃねぇよ。罰ゲームで告白っていうのが間違いだ。」


僕は友人の頭を軽くはたいた。

その後半ば冗談で落ち込んでるフリを見せたら、思った通り飯をおごってくれた。

次の日。

僕は歩いていると、バッタリ藤本に会った。

藤本は昨日の午後の授業出てなかったな。

休むようなやつじゃないんだけど。

もしかして風邪とかかな。

そう自然に心配してしまう僕がいた。

「あっ……」


「ねぇ佐倉くん。ちょっといい?」


「あ…うん……。」


そしてあまり人気のない所に連れてこられた。

「…どうした?」


「……」


藤本はなかなか口を開かない。

が、しばらくして意を決したのかしゃべりだした。

「私、聞いちゃったんです。」


「何を?」


「おととい、佐倉くんが友達としゃべってる内容を。」


おととい?

友人?

話?

僕は藤本が何を言っているのか、理解するのに十秒ほどかかった。

「……罰ゲームだったんですか?私に告白したのは…」


「……」


「全部遊び、嘘だったんですか!?」


藤本の語調が強くなる。

「デートしたのもキスをしたのも全部!!!!」


藤本はいつのまにか涙を流していた。

僕は何も言えずにいた。

「…ゲームだったんですね……」


「ぼ、僕は…」


「もう…いいです。今日…今をもって別れましょう。」


藤本は僕の顔を見ずに言った。

そして僕の言葉を待たずに走って行った。

『別れる』

それは望んでいたはずのもの。

だが僕の心にあるのは喜びではなく、寂しさだった。

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