6話 【温泉】のデメリット
「そうだゲルガーさん。今新しい温泉が解放されたので、折角だから試してみませんか?」
「お、いいのか?頼む!」
「一旦お湯を抜いてと……」
お湯が消えてくのも便利だなぁ。ハズレスキルどころかアタリスキルじゃん。
「お湯の種類はどうやって選ぶんだろう?」
蛇口に手を触れると浮き上がる青ウィンドウ。選択肢は「炭酸水素塩泉」と「硫黄温泉」。
硫黄温泉を選択っと……あれ?
何度選択肢をタップしても反応がない。
「えっなんで?」
青ウィンドウの下部に文字が出現。
「『浴槽が違います』……えぇっ!温泉の種類変わると浴槽も変えなきゃなんないの?!」
「どうしたナツ?」
「ラーちゃん、新しい温泉入れるには新しい浴槽が必要なんだって」
「マジかよ。どんな浴槽が必要なんだ?」
「ええと……"クギノキの浴槽"だってさ」
「クギノキかぁ。ダンジョンかバザールで手に入れて材料を持ち込めばドワーフが作ってくれるぜ」
「ちなみにおいくらなの?」
「今ある浴槽くらいの大きさから考えっと……材料費込み、制作費込でざっと金貨12枚」
「高っ!だ、ダンジョンでも手に入るんだよね?」
「クギノキがあるダンジョンはCランク以上。ゴブリン相手に腰抜かしてたら歯が立たないぞ」
「そんなぁ。じゃあコツコツお金貯めるしか無いのかぁ。銭湯経営にもお金、新しい温泉を増やすためにもお金……いやでも、硫黄温泉入りたいし!最初はコツコツ地道に!目指すは銭湯経営スローライフ!」
「おぉナツ!その意気だ。銭湯が出来たら教えてくれ。俺たち皆で毎日入りに行くぞ」
「ありがとうございます!あ、お湯張りしなおしますね」
炭酸水素塩湯を選択した瞬間、くらり……目眩に襲われる。
「なんかちょっと目眩が……」
「お前もしかして……ステータスウィンドウ見てもいいか?」
「え、うん」
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拠点:ラザ国
所持金:銀貨8枚
クリハラ ナツ(転生者)
Lv6
HP 250
MP 30
スキル【温泉】Lv2
炭酸水素塩泉
硫黄温泉
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「あー。スキルを使う時MP消費するんだな。短時間で多量のMPを失うと目眩が起こることがあるが、死にはしねぇよ」
「ホントだ!確かに都合良すぎるスキルだと思ったんだよねぇ……ってことは一日に張れるお湯は4回くらいが限度かぁ」
「ま、レベルアップすりゃMPの最大値は増えるからな」
「そっか!レベルアップしてどんどん温泉入れられるようになって、温泉の種類も増えていく!成長の余地あり!……ってうわぁ裸!!」
「よし!ナツの努力の結晶は無駄にせず、俺が力に変えてやる!入らせてもらうぜ!」
ゲルガーはタオルを肩にパンッとかけて湯船へと飛び込んだ。
「既に強いのに温泉に浸かって更なるレベルアップかぁ」
「この男は強くなることに変態的な執着がありますのよ。私はゲルガーと幼馴染ですが、五歳の頃村の御神木を打ち込み稽古台にし、粉砕したことがありますわ」
「めちゃくちゃ罰当たり……」
「えぇ。どうしようも無い馬鹿ですの。さ、私達は天幕で休みましょう」
「え?私までいいんですか?」
「夜の森は危険が多く潜んでいますからね。これから街に戻るのはやめた方がいいですわ。ほら体が冷える前に来なさい」
えぇ〜ウィラさん優しい!一人っ子だったけど、お姉ちゃんがいたらこんな感じかなぁ……
「ありがとうございます!ラーちゃんもおいで」
「えっお、俺は男用の天幕でい」
ラーウェルを抱え、私とウィラは天幕にて体を休めた。
マツタケ鍋でおなかいっぱい。温泉で心も体もポカポカだ。
天幕の中で微睡んでいたが、何やら外が騒がしい。
「んん……どうかしましたかぁ?」
天幕から顔を出すと素っ裸で倒れているゲルガーと、それを心配するイリスとグランツの姿。
「えっ?!ゲルガーさん?!」
「あぁナツ殿。儂が夜の見張りから戻ってきたらゲルガーが浴槽の縁でぐったりしていてな……」
ゲルガーの顔を覗き込む。息はあるが体中真っ赤。ぼんやりしている意識。そしてすっかり更けた夜。
「これ、逆上せてますね……」
長時間浸かったとしても屋外だし、ゲルガーさんには水を飲んだり時折休むよう伝えてた。実行してた形跡もある。それでものぼせちゃったんだ……やっぱり普通の温泉じゃない……!
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次回、冒険者パーティ達と別れ新たな依頼に挑戦!そこでナツを待ち受けていたのは……




