28話ナツ、冤罪逮捕?!
「はいココに!リンファが作ってくれた冷蔵ショーケースがあります!」
番台の横に設置。そして――
「続いてシャルナ特製、コーヒー牛乳をイン!」
ショーケース内に立ち並ぶ、コーヒー牛乳達はこれでキンキンに冷やされる。
「一本銀貨1枚で販売しようと思うの!」
不戦湯メンバー+シャルナに解説完了。
温泉上がりにコーヒー牛乳……あぁ、今夜が楽しみ――
「おぃ、この泥水ドリンクを入れるためにわらわにコレを作らせたわけではあるまいな?」
「泥水じゃないって!ねぇ、キラ、ソラ」
「信じられん程の甘さを持つ甘味……ほのかな苦味がアクセントになりいくらでも飲めてしまいそうだ……」
「甘くて美味しかった〜温泉入ったらまた飲みたい〜」
双子勇者はすっかり虜だ。
「嘘だと思うなら飲んでみてよね!」
「むぅ……」
リンファとラーウェルは顔を見合せたあとコーヒー牛乳に口をつける。
「っ!な、なんという甘さ!なんという喉越しじゃ?!これが……泥水ドリンク!」
「コーヒー牛乳ね!」
「なんだこれ!めちゃくちゃうめーぜ!いくらでも飲めっガブガブ」
ラーウェルの口の周りは茶色い髭と化し、二人はあっという間に一瓶飲み終えた。
「気に入って貰えてよかったっス。ただクァンの実は高級品。銀貨1枚じゃ安すぎるっス。最低金貨1枚にするべきっスよ」
「賛成だな!シャルナお前良いとこあるじゃねぇか!」
「うんうんっこれでシャルナも不戦湯の一員だね」
「「ってなるかぁああ!」」
リンファとキラがハモった。
「なんで?これからコーヒー牛乳生産担当だよ。他にはフルーツ牛乳とかいちご牛乳とか、その他諸々やって貰うんだから!」
「だからこやつは犯罪者じゃろうが!信用した後にレジの金全部もってかれかねんぞ!」
「リンファの言う通りです!スキル【変幻】で俺たちの誰かに化けてたら騙されますよ!」
「ひでぇ言われようッスね……まぁ、当たり前と言えば当たり前ッスけど」
「ここの店長は私!私はシャルナを信じてる!」
「お主はコーヒー牛乳が飲みたいだけじゃろうが!」
バレてた。確かにリンファとキラの言うことは一理ある。シャルナの境遇には同情する部分があるがそれが本当の話とも限らない。
「うーん……どうしよっか」
「ナツ。私じゃなくても料理人はたくさんいるッス。アンタにすら化けられるアタイを従業員として雇うなんて、アタイ自身もしねぇッスよ。逆になんでアタイに拘るのか分かんないッスけどね」
「シャルナが夢を追いかけてるからかなぁ。応援したくなっちゃったんだよね……駄目、かなぁ?」
控えめに不戦湯メンバー達を見やる。三人と一匹は顔を見合せた後大きなため息をついた。
「ナツはお人好しだなぁ」
「ええじゃろう。貴様の銭湯じゃ。好きにせい」
「ナツ様のお願いとあらば……しかし暫くは見張らせてもらう」
「逃げたらレオちゃんに頼んでぶっ殺して貰えばいいんだよ〜」
ソラが脅しをかけてくれたし大丈夫だろう。
「ってわけで、料理人としてよろしくね、シャルナ」
「いいんスか?……あ、ありが、とう」
淡く頬を染めるシャルナ。不戦湯に新たなメンバーが加わった。
早速冷蔵ショーケースの充実と、隣に食事処を開いて貰わなきゃ――
私の頭は商売のことでいっぱいだった。
シャルナは従業員宿泊所に泊まるため一度荷物を取りに帰った。
「作業早すぎじゃない?気づいたら従業員宿泊所できてるし。リンファ様様だね」
「これくらい数時間あればできる。布団やらカーテンやら、諸々の買い出しには行く必要があるぞ」
「ならソラとリンファで行ってきて――」
ガララ
来客だ。
「いらっしゃ……」
不戦湯に入ってきたのは銀色のヘルムと甲冑を身につけ、槍を手にした騎士。明らかに"温泉に浸かりに来た客"の装いではない。
「店主は誰だ?」
「あ、はい……私ですが」
「小瓶の中身を"女神の泉"と称し、傷や病が治るなどと嘘の宣伝文句にて販売した罪で、王より出頭命令が出ている」
「エッ」
ええええ?!
ハッ、温泉の効果は張ってから24時間……今頃小瓶の中身はただの水ってこと?!シャルナ……やってくれたなぁあ!
◾︎◾︎◾︎
私は完全なる冤罪でラーウェルと共に王宮へと呼び出されたのだった。
銭湯経営スローライフなのに罪人として王の前に立つなんて聞いてない!なんとか無罪だって分かってもらわないと!
手錠をかけられ、玉座の間へ。階段上にある厳かで巨大な椅子に王様がどっしりと腰を下ろした。




