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【温泉】スキルでスローライフしていたら、冒険者と魔獣が押し寄せ、女神の泉扱いされるようになったんだが  作者: あきかたりれお


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27話お風呂上がりにはコーヒー牛乳

「アタイが10の時のことッス。ウチは大きなケーキ屋で、お袋の作るケーキは貴族や王様にだって献上したことのある有名店だったんス。だけど親父が――」


◾︎◾︎◾︎


『貴様の夫、ダナクは数十回の盗みを繰り返し、この度は国庫に忍び込んだ。これは重罪である!よって、本人は指切りと鞭打ちの刑とし、罰金金貨5000枚を言い渡す!』


『お、夫はもう二ヶ月間帰ってきて居ません。何処にいるのかも……』


『ならば刑法に定められている通り、身内が罪を負うこととする!指切りは本人のみだから、鞭打ちと罰金だ』


『そんな……』


その日シャルナの母とシャルナは、全てを失った。必死で繁盛させたケーキ屋も、店を大きくするための蓄えも、信頼も。


そして母は鞭打ちの傷が原因で体を病み、精神的ショックも重なったことにより、一月後。息絶えた。


『お袋……待ってろ。アタイが絶対に、お袋の大好きだったケーキ屋、取り戻してやる』


◾︎◾︎◾︎


「――だからアタイは、金が必要なんス。でも、犯罪者の娘って記録のせいでどこも雇っちゃくれねッスよ」


「だから盗みを?」


「……あぁ。アタイのスキルは親父譲りのクソスキル。人をたばかるスキルなんてあったところで犯罪にしか役ただないッス」


シャルナは湯船の中で膝を抱える。


きっと今日まで、たった一人で生きてきたんだなぁ……私とそんなに変わらないのに、苦労人だ


「それに今はクソ親父が帰ってきてるッス。数日おきに金をせびられて、お金を貯めるどころか、明日も危うい。アンタの温泉で稼いだお金も、全部取られちゃったッス」


「うわ、酷いね……だからクァンの実が欲しいの?でも"お金払う"って言ってたよね?売ってお金稼ぎたい訳じゃなくて」


「クァンの実でケーキを作る。それがお袋の夢だったんス。アタイはケーキ屋を復興し、お袋の夢だったクァンの実ケーキを作ってみてぇんスよ。ま、商人は地道にコツコツッスよね。さっきはがめつく欲しがって悪かったッス」


「……」


「おぃナツ。お人好しも程々にしとくんじゃぞ。困ってる奴なんて、そこら中におる。それに、そいつは他のやつを困らせて利を得ていた悪党じゃ」


「うん。そうだね。私は許せるけど、許せない人も居るだろうね……でも、ここでシャルナを突き放したら、今後も困る人は増えるしシャルナも困り続ける。

という訳で、シャルナ。コーヒー牛乳作ってくれない?」


温泉内が静まり返った。私の脳内はあろうことかシャルナの過去話より、"クァンの実=コーヒー牛乳"でいっぱいなのである。


◾︎◾︎◾︎


「おぃおぃリンファ。何がどうやったらシャルナを不戦湯で雇うって流れになるんだよ?……やっぱり俺も女湯入った方が良かったかぁ?」


「無駄じゃな。どう足掻いてもこの結論に辿り着いとったじゃろう。ナツのアホさ加減には着いて行けん」


「み〜んなそんなこと言って〜シャルナに頼んだ例のブツを飲んだら、絶対納得するよ!」


「か、解放してやったのですか?!また盗みに来るかもしれないのに!」


「まぁ一回目だしね。二回目は容赦しない。私の酸性泉に沈めてやるから」


静まり返る不戦湯メンバー。私の期待と闘志は静かに燃えるのだった。


◾︎◾︎◾︎


次の日


「頼まれたもの、作ってみたっス!」


「おぉっ!早い!」


朝イチで飛び込んできたシャルナ。番台の上に茶色い液体が入った牛乳瓶が置かれ、私の胸が大きくときめいた。


銭湯のお供!甘く冷たい、コーヒー牛乳!


「うわぁ!凄い!注文通りだよ!」


「レシピを聞いた時は簡単すぎると思ったッス。でも牛乳との比率や温め方によって味が変わるから、一晩中試作したッスよ」


「こ、これ、味見してみてもいい?」


「あぁ。腰抜かすほど美味いッスよ!」


「なになに〜?ってうわ、泥棒さんじゃん」


「貴様、よくもぬけぬけと。何をしに来た?」


「お、双子勇者!たった今湯上りにピッタリな飲み物が完成したとこだよ!飲んで飲んで!」


瓶の中身を湯のみに分け、キラとソラに手渡す。


「変わった色……というか、泥水?」


「な、ナツ様。この盗賊。俺たちを騙して泥水を飲ませる気じゃ……」


ゴクゴク


「もう飲んでる――?!え、ええぃっナツ様だけに身体を張らせる訳にはっ」


キラもソラもコーヒー牛乳を煽る。


舌を撫でる柔らかい甘味と微かな苦味。喉を撫で落ちる冷たい液体。キラとソラが目を見開く。


かつての世界で一気飲みした、懐かしのコーヒー牛乳に違いなかった。


「っは――!!最高!」


コーヒー牛乳に浮かれる私はまだ知らなかったのだ。シャルナが引き連れてきた、とんでもない客の正体を――













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