26話恥じらいのシャルナ
レオクシスが銭湯料金にと持参したクァンの実。どうやらシャルナは相当その実が欲しいらしい。
まぁ、許すわけもない。キラとソラが。
「貴様!ナツ様の温泉を盗んで転売した挙句に高級品を寄越せだと?!舐めるのも大概にしろよ……」
「コイツ言っても分かんないみたいだよね。一回半殺しにする?ね?ナツちゃん、いいよねもう。僕いっぱい我慢したよ」
抜かれる二本の双剣。勇者の圧力にシャルナはやや怯むがそれでも先程のように身は引かない。
「無礼なのは承知の上っス。でもアタイはどうしてもその実が必要なんス!お金ならいくらでも払う!だから」
「盗んだ金をか?そんな薄汚い金、ナツ様に渡されても困る。それにこの実は冒険者ギルドに売り払った方が即金な上に高値だ」
「妥当じゃな。盗人に売ったところで、金が払われるとも限らんじゃろう。ナツ、何故こいつを不戦湯に連れてきた?さっさと衛兵に突き出せばいいものを」
「いや……温泉一緒に入ろうかと思って……」
「は?……ラーウェル。この馬鹿はなにを言っとるんじゃろうか?」
「聞いての通りだぜ。ナツは温泉馬鹿だからな」
「ナツ様。コイツはダメです。根っからの盗人の事など、信じてはなりません」
「お前にアタイの何が分かるって言うんスか。スキルに恵まれて、Aランク勇者まで登りつめたボンボンには分からないッスよ」
「貴様っ!」
「ハイハイもう止め!不戦湯では私がルール!銭湯での戦闘は禁止!ってな訳でみんな温泉入ろう」
「だからなんで温泉なんだよ?」
「頭に血が上ってる時は、温泉に限ると言われてるからね」
「誰にだよ……」
「てなわけでレオクシスさん、この実ありがとうございます!今後もどうかご贔屓に!」
「うむ!」
「ナツちゃんってぇ面白いよね」
「コイツは金さえ払ってくれれば何でもいいのじゃよ」
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半ば強制的にだがシャルナは私とリンファ拘束の元、温泉に入ることになった。念の為ラーウェルも一緒だ。
「俺は一応オス扱いなんだが……いいのかこれは?人間の裸とか別に興味はねぇけどさぁ」
「ピクシードラゴンってそもそも性欲とかあるの?」
「せっ……ナツお前、もっと慎みをだな……はぁ。ねぇよ。ピクシードラゴンはエルフが魔法で生み出す生き物だからな」
「エルフ!この世界にいるんだ!会ってみたいなぁ」
「不戦湯が有名になったら、いつか来るんじゃねぇの?魔王と一緒に」
「ぅ……魔王とエルフのタックとか怖すぎるでしょ」
「なぁおいってば!本気で……は、裸で泉に、浸かるんスか?服、着たままじゃダメッスか?」
「え?あ〜確かに。今まで拒絶する人居なかったけど、他人と裸でお風呂に入るとか異世界にはない文化だもんね。抵抗感ある?」
「あ、あぁ……」
「盗人の癖に一丁前に恥じらいはあるのか?ははぁん、貴様さては小胸じゃのう?それを気にしておるのか?」
それなりに立派な胸を持つリンファがバスタオルを巻いた状態でシャルナの背後に回る。
「なっち、違うッスよ!アタイは裸を見せるのが嫌で……あっど、どこ触ってるんスかぁ!」
「ほうほう、案外立派じゃのう?隠すこともないと思うが」
リンファの無遠慮な手がシャルナの胸を揉みしだく。その光景を見せられている私とラーウェルは真顔になるしかない。
「おぃナツ。これでも俺を女湯に入れるのか?」
「うん、ごめん。外で待っててよ」
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喚くシャルナと悪戯心に火がついたリンファ。本人曰く「衛兵に殺されかけた恨みじゃ」とのこと。シャルナはまるで貞操を奪われたかのようにしおらしくなり、肌着のまま温泉に浸かっている。
涙目。意外とウブなんだなぁ……
「えーと……シャルナ、温泉はどう?」
「……分かんないッス」
「あちゃ〜もーリンファ、やりすぎだよ」
「これくらいの罰あっても良かろう。次に悪さをしたらど〜なるか分かったじゃろうし」
舌舐りをするリンファの金色の瞳が薄ら笑う。シャルナは大きく身震いをし肩まで温泉に浸かって縮こまってしまった。
一体何を吹き込まれたんだろう……
「それでさ、シャルナはなんで盗みなんてやってるの?」
「……金が、必要だから……」
「お金?生活がくるしいからとか?」
「それもあるッスけど、アタイは夢を叶えたいんス」
「へぇ、どんな夢?」
「…………デザート専門の、料理人」
「パティシエってこと?シャルナ料理好きなんだ?私なんか苦手な部類だよ〜」
「この間は目玉焼きと称した黒ズミが出てきたのぅ」
「うるさい〜。この世界の火加減難しかったの。パティシエならさ、そういうお店で働けそうだけど……」
「アタイを雇ってくれる所なんて無いッスよ……なにせアタイは、犯罪者の娘だから」
「犯罪者の、娘……」
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次回、シャルナの家事情が明らかに!




