20話未来予知。魔王って何?!
「ちょっと待って魔王ってどういうこと?!苦しむってどうやって……?」
「申し訳ございません……私が見えたのは、荒野に立ちすくむナツさんと魔王ネオ。ナツさんは、泣いておられました」
「魔王ネオ……この世に四体存在する魔物の頂点の一匹だ。Sランクパーティでも歯が立たないといいます……そんな奴と、ナツ様が……」
キラが深刻そうな顔をして拳を握りしめる。
「えぇ……私冒険者じゃ無いんだけどなんで魔王と関わることに?」
「過程までは……それに何時この風景が訪れるかも分かりませんし……」
荒野で魔王と二人きりになる瞬間が来るってこと?!泣いてるってことは、ラーちゃんやリンファ達が……もしかして
「だーっははははっナツ!お前のスキルはホントに引き寄せ体質だなぁ?」
お腹を抱えて笑い転げるラーウェル。
「何笑ってんの?!悪い結果じゃん!対策もよく分かんないし!」
「本当になぁ……ぬしは、期待を裏切らんのぅ」
ぷぷぷ……
笑いをこらえきれていないリンファ。
二人とも自分のことじゃないからって笑いのネタにしちゃって……皆のこと心配してソンした……
「はぁ……いいよいいよ。どうせ困るのは私だけだ〜って言いたいんでしょー?」
「あ?何言ってんだナツ?魔王がお前に会いにくる理由とか、一個しかないだろ?」
「え?」
小首を傾げていれば、不戦湯メンバーだけでなく、野次馬の村人達もウンウンと頷く。
「ま……まさか、温泉……?」
ラーウェルとリンファがニヤリと悪巧みするように笑い、ソラは他人事のように笑い、キラは呆れたように顔を伏せる。
まさか最弱温泉スキルが魔王を引き寄せることになるなんて。
「ぜっっったい!嫌だ――!!!」
◾︎◾︎◾︎
「それではナツ様、私達は村へと戻ります。この度は命を助けて頂いただけでなく、心地の良い女神の泉にまで入れて下さり、ありがとうございました」
不戦湯の前にて20人程度の村人達とユラが頭を下げる。
「占いの件はすみませんでした。やはり、不用意に人を占うものではありませんね……」
目を伏せるユラ。
他人に不幸が起きると告げるってのは良い気がしないよね……なんかごめん
「いーのいーのっ!ほら、私悪運強いし!多分なんとかなるよ!それに対策も心構えも、これからできるしね!」
「ナツ様……はい!私もお役に立てることがあればいつでも力になります!それで……よろしいのですか?此度の温泉料金が金貨10枚程度で……」
「充分貰いすぎなくらいだよ。ほとんどが一般?っていうのかな。冒険者とかでもないんだから」
「また入りに来ても良いですか?」
「あっずるい!女神様私も!」
「俺も!」
グライスに対して殺気立っていた村人達がこぞって手を挙げる。
いろいろ面倒なこともあったけど……温泉がこんなにもたくさんの人に気に入って貰えたのは嬉しいなぁ……
「うんっ。また皆で入りに来てよ!不戦湯、水曜日以外はやってるからさ!」
ワッと沸き立つ村人たち。「女神様!」って崇め奉るのはやめて欲しい。
「ナツ」
グライスは一歩前へ。
「もう分かってると思うが、俺っちはユラの本当の兄貴じゃねぇ。ユラのこと、かくれんぼに連れ出して病気悪化させたせいで……屋敷に入ることも禁じられてた」
「兄様っあれは私が遊びたいと言ったのを叶えてくれて」
「それでも、それでも俺っちは、ユラを、妹を助けたかったんだ」
「だから冒険者になって、キングボアを倒そうとしてたんだ……」
「あぁ。でも、結局俺っちはナツ達や村のみんなに迷惑かけただけで……妹を救ってくれたのはナツだ」
グライスは僅かに涙の膜が張る瞳で真っ直ぐに私を見つめる。
唇を戦慄かせ躊躇いながら――
「ありがとう!桶投げつけて、ごめんなさい!」
じわ、胸に広がる温もり。顔全体に風を浴びたように爽やかな心地になり、目尻が優しく痛む。
「うんっいいよ!グライス君。また不戦湯に入りに来てね!ユラちゃん達と一緒に!」
「あぁ!また来る!じゃぁなナツ!」
踵を返し、去っていく村人たち。揶揄うように大人たちに頭を撫でられ、耳を赤くするグライスの後ろ姿は成長を感じさせるものだった。
◾︎◾︎◾︎
温泉で、トラブル万事解決。さて――
絶対に未来変えないと!ラーウェルもリンファも楽観的だったけど、私には魔王に温泉振る舞う想像とか一ミリもできない!しかも泣いてたんだよ?!なんか悪いことが起きるって予知に決まってるよ……
とりあえず魔王の耳に"温泉"の話が届かないようにしなくちゃ……ん〜でも折角建てた不戦湯だしなぁ……
「あのぅ……女神様が入れてくれた温泉って泉に浸かりたいんですが……」
あ、うん。話題にならないのはもう諦めよう。
「あぁ〜どうしよう……」
頭を悩ませるナツを休ませることなく新たなトラブルが近づいていた――




