16話温泉が変なもの呼び寄せてる気が……
「はぁ〜なんでちゅかこれは?全身がポカポカと温かく肌に馴染むようでちゅ」
黄色のピクシードラゴン、シーシアは大浴場の虜になっている。私とリンファもついでに入浴だ。
「へへ、私の温泉凄いでしょ?それでさ、どうしてグライス君はキングボアにあんなに執着するの?」
「グライス様の妹様が病気なのでちゅよ。キングボアの血は、滋養に良いでちから」
「そうなんだ。だからあんなに必死で……」
「まぁ、恩人に暴力をふるっていい理由にはなりまちぇんが」
シーシアの顔に陰が落ちる。見た目は可愛いのに怒ると怖いなぁ。
「妹のユラ様は幼少期から体が弱く、最近あたち達の村で流行っている病にかかってしまったのでち。常人なら罹っても咳やくしゃみ程度。でちが体の弱いユラ様は咳が止まらないのでち」
喘息かな?あれ辛いよね……
「キングボアの血ってそんなに効くの?」
「いいえ。症状を和らげることにはなりまちゅが、完治はできないでちょう。グライス様はそれでも、妹が少しでも楽になるならと剣を手に取ったのでち」
「そうなんだ。えっと、血なら分けてあげられるよ?レオクシスさんからぼったくりしちゃってるし」
「ご迷惑をかけた上に分けていただくなんて悪いでちよ……ナツさんは優しいでちね」
「えぇでもほら、助けてあげたいし」
「お主らは馬鹿か?」
草津の湯の縁を背もたれに足を組むリンファ。
「ナツ、貴様のスキルはなんのためにあるのじゃ?」
「あぁっ!!」
自分のスキルなのに盲点。
私の温泉が人の命を救える……?!
◾︎◾︎◾︎
「ってことで、グライス君。妹さんを私の温泉に連れてくることってできる?」
「ユラを?まぁ、多少体には堪えるだろうが、そこまで遠くはない。走れば一時間ほどだ」
「そっか。ええっと……お、温泉も良かったみたいで安心したよ」
頭にタオルを乗っけて、不戦湯で売り出し予定の青い浴衣まで身につけてらっしゃる……
「不思議な泉だな!レベルが上がった上に体も軽くなった!ユラの病気にも効きそうだ。明日にでも連れてこよう」
「本当になんとお礼をもうちあげてよいか。村に戻ったらお礼を持って、もう一度きまちゅね。こちらは少ないでちゅが迷惑料でちゅ」
「えぇ……お気遣いな、くぅっ!」
シーシアがグライスのアイテムボックスから取り出したのはパンパンに膨らんだ巾着袋。受け取るものの重すぎて腕がちぎれそうだ。
「えっ?!ちょっと何これ?!うわぁっめっちゃ金貨!」
巾着袋の中身はキンキラキン。一体何枚あると言うのだろう。
「んじゃあまた明日。昼過ぎには行けると思うから、泉の準備を頼むぞ。それからナツ……」
「えっ、あ、何?」
「すまなかった。その、俺っち……お前に桶を投げちまって」
「グライス君……」
「行くぞ、シーシア」
「あぃっ!グライス様っ!」
「ちょ、まっ!この金貨の量!おかしいからぁああああ!!」
私の叫び声も虚しく、グライスとシーシアは森の中へと駆けていった。
「ほう、これは凄いのう?何枚あるか数えてやろう」
「えぇ〜……リンファどうしよう〜」
「別にくれると言うんじゃから貰っておけばええじゃろ。ひぃふーみー」
「ナツのスキルって変なの呼び寄せるよな」
「確かに……って私じゃなくて絶対レオクシスさんが呼び込んでるからね!」
「ぬっ!わ、我は何もしておらぬわ!」
「次トラブル持ち込んだらレオクシスさん出禁」
「なっ……貴様!我に対する態度が雑すぎじゃないのか?!」
結局、グライス達がくれた金貨は述べ300枚であった。
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次の日
「貰った金貨とキングボアを売って……皆の衣食住費を引いたら……金貨657枚。石鹸だけじゃなくてシャンプーとかリンスも配置しようかなぁ」
「ナツちゃん真面目ちゃん〜凄いねぇ」
「ソラはそろそろちゃんと護衛した方がいいと思う……」
「キラが居るから大丈夫!僕は中を護るってことで」
湯上りの客が寛げるよう設けた畳の上で横になっておきながら、いけしゃあしゃあと……
「な、ナツー!大変だ!!」
銭湯に突っ込んできたラーウェルが慌てふためきながら飛び回る。
「どうしたの?!」
「人間たちがいっぱい、銭湯目がかけて押し寄せてきてんだよォ!」
「えっ?!それって……」
私の不戦湯がいよいよ有名に?!
「皆殺気立ってクワとかカマとか持ってんだ!早く逃げねぇと殺されるぞ!」
「なんで?!?!」
不戦湯……のはずなのに……
クラリと目眩に襲われた。




