13話不戦湯の準備完了!
「レオクシスさん……」
リンファと相対していた"バケモノ"とはグリフォンのレオクシスのことであった。何の用かは大体想像がつく。
「おぉナツ!この馬鹿な女をどうにかしてくれ」
「ほう?わらわの大斧で輪切りにしてやろう。何枚がよかろうか?」
「ええっと……とりあえずレオクシスさん、街の近くまで出てきたら皆びっくりしちゃうでしょ?」
「貴様が約束の時間になっても川辺へ現れないからだろう!今日の温泉はどうした?!」
「あ〜ハイハイ。じゃあお駄賃出してね」
「このっ……我を舐め腐りおって。普通客を待たせたら、もてなしをするのが人間の決まりだと聞いたぞ」
「なんでそんなこと知ってるんですか……あ、そうだ。新しい温泉ありますけどそれで許してくれますか?」
「おおぅっ!良いでは無いか!よし、今日の供物はこれだ」
巨大な肉球に包まれていたのは紫の宝石。
「綺麗……宝石?」
「おぉっグレイトですよナツ君!これは魔石!売れば金貨30枚にもなりますよ!」
浮かれた声のシュタイン。レオクシスが近くにいると言うのに、商人というのは肝が座っている。
「ナツ。この毛むくじゃらは知り合いか?」
「あ〜こちらレオクシスさん。温泉の常連客」
「おぃ!我は誇り高きグリフォンの始祖、レオク」
「スキル【温泉】〜、硫黄温泉〜」
浴槽を広げ温泉を注ぐ。シュタインと護衛の二人も身を乗り出して興味深そうに温泉を見つめている。
「む……変わった匂いだな。ナツ、この温泉は大丈夫なのか?」
「慣れたらいい匂いって思うよ〜硫黄温泉っていって、傷の回復になるんだよ」
「ほう……」
「あ、レベルアップはしないからレオクシスさん的にはいつもの方がいい?」
「否、古傷にも効くのだろうか?」
「あ〜実験したことないから分かんないなぁ。擦り傷とか打撲とかは治ったから可能性はあるかも!」
「ふむ」
ちゃぷん……
レオクシスが湯船へと浸かる。その光景に人間達は「おぉ……」なんて変な盛り上りだ。
「っと、こんな感じで温泉を入れられるんですが、どうですか、ね?」
「ナツ君……」
ワナワナと肩を震わせるシュタイン。
どうしよう。思ってたのと違う!みたいなクレームかな……
「コングラッチュレーション!S級魔獣ですら虜にする"温泉"!風呂というライフラインで流行りもナシ!おまけにレベルアップ!ナツ君、これで契約成立だ」
両手で手を握られ上下にブンブン。
「えっえっ?!いいんですか?そんな簡単で」
「おっと、この後新たな商談があるんだ。僕は帰らせていただくよ。送金は後ほど。キア、ソラ。しっかりお守りしなさい」
「あぁ」
「はぁーいー!」
見た目はそっくりなのに内面は真逆の護衛勇者二人を残し、シュタインは颯爽と踵を返して去っていく。
「早っ?!いいんですかほんとに?!私が言うのもなんですが、詐欺師だったらどうするんですかー?!」
「グッドラック!"銭湯"とやらができたら是非入りに行きたいものだ!」
連れてきていた馬に跨り大きく手を振りながらシュタインは街へ戻って行った。
「うぅ、スピード感についていけない……」
「シュタイン様は考えてないようで考えてるから大丈夫だよ〜」
慰めてくれたのは護衛の一人ソラ。屈託のない笑顔と伸び伸びした口調だ。
「それで主、俺たちは何をすればいい?」
もう片方は堅物そうなキア。ソラと違って無表情だ。
「えっと……」
「そうじゃナツ。骨組みができたぞ。見るがいい」
「おぉナツ!我の古傷が癒えておるぞ!」
「なぁナツ俺にも温泉出してくれよ〜」
「うわーーー!一気に喋んないで!パンクしちゃうから!順番に!まずは……えっと、ソラ?」
「こっちはキラだよ〜ん」
ソラがキラの両肩を掴んで笑う。
「ご、ごめん」
「構いません。俺たちは護衛を命じられていますが、具体的に何を守れば宜しいのですか?」
「銭湯かな。銭湯っていうのは、このレオクシスさんが浸かってる温泉が、いっぱい置いてあるお風呂屋さんのことね」
「次は我だ」
のしっと肩に顔を乗せてくるレオクシス。心臓飛び出るかと思った。
「古傷治ったんですよね?やっぱり凄いなぁ、硫黄温泉」
「うむ。100年前勇者に不意をつかれた傷が元通りよ。これで我の名に塗られた泥が拭えたというものだ」
「はい、で、リンファは骨組みができたんだっけ?早いね」
「わらわを誰だと思っておる。だが、師匠ならばもう外壁までできているであろうなぁ」
ドワーフ凄い……
リンファに渡していた銭湯の見取り図を広げる。体を洗う場所、掛け湯の場所、温泉の設置場所。
私だけが造れる、異世界の不戦湯……!
完成が楽しみだ。
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次回銭湯完成!そしてまた新たな温泉をゲット!次は一体どんな効能が……?




