10話温泉で閃き!銭湯経営への道筋
「さぁてお待ちかね!硫黄温泉!」
パチパチパチ
ホテルの客室にて、ラーウェルが拍手を送ってくれる。小さいお手手で愛らしい。
「ではまずクギノキの浴槽をセットして……スキル【温泉】。そして"硫黄温泉"を選択!」
ドドド――
勢いよく放出されるお湯。部屋中に硫黄温泉独特の腐った卵のような匂いが立ちこめる。
「うわっ、何だこの匂い……」
「最初びっくりするよね〜そのうち癖になるんだなぁこれが。よーし効能は、と。【温泉鑑定】!」
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【温泉Lv 2】
硫黄温泉
入浴者の傷、状態異常を治す
飲むと瀕死から回復する
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「おおっこれまたすげーなナツ!つーか温泉って飲めるんだな」
「私も飲んだことあるよ〜。肝機能の改善とか、生活習慣病に効くんだよ」
「病の予防にもなるってことか!温泉すげぇな!」
「よぉしっ!入るぞ〜!」
服を脱ぎ足先をつける。少しつけただけで分かる。
とろっとろだぁ〜!ってことはそこそこアルカリ度が高いから、毎日入るのはやめた方がいいけど、傷の回復とか殺菌作用は高そう
肩まで浸かって手足を伸ばし、深く深呼吸。
炭酸水素塩より熱くて足先まで血流が伝わる感覚がする。
「お!見て見てラーちゃん!石拾ってた時にできたかすり傷、綺麗に治ってるよ〜!」
「……お、おぃナツ。これ、本当に入っても大丈夫なんだろうな?」
「え、大丈夫だけど……ははぁん?ラーちゃん硫黄温泉怖いんだ」
「怖くねぇよ!変な匂いだからピクシードラゴンには害があるかもしんねぇだろ?!」
「ハイハイ。ほらおいで〜怖くないよ〜」
「赤ん坊みたいに掴むな!」
「ペットだって」
暴れるラーウェルをゆっくりと湯船へ。小さな足先が入った途端、ラーウェルの羽がくたりと脱力した。
この光景前も見た気がする……
「すげぇ!とろとろじゃねぇか!」
「ね、温泉っておもしろ〜い」
ラーウェルも落ち着いたようで硫黄温泉を優雅に泳ぐ。
「極楽極楽〜っと。やっと硫黄温泉も手に入ったし小さな銭湯ならいけるかな?」
「借家ならいけるかもしんねぇな。でも前みたいに怪しいって言われて客が入んねぇかもだろ?」
「あーそっか……んー」
ラーウェルと二人して首を傾げる。
私の【温泉】の最大のメリットは、レベル上げと回復。ってことは、私のスキルを求めてくれるのは冒険者と魔獣……
「そうだ!」
ザバァッ
思い切り立ち上がったせいでラーウェルが硫黄温泉に飲み込まれた。
「ゲホッな、なんだよ?」
「街じゃなくて、森とかダンジョン付近に建てればいいんだよ!」
「バッカお前それ魔獣に襲ってくださいって言ってるようなもんだぞ?」
「いやいや、最近私の温泉に入ってるのはどこのどいつよ?」
「……あ」
ラーウェルの頭に過ぎる、強面のグリフォン。
「よぉしっ!私の銭湯を魔獣も冒険者も浸かりにくる、不戦湯にするぞ〜!」
次の日、私は浮き足立ちながら昨日と同じ鍛冶屋を訪れていた。
「はぁあ?!ダンジョンの真横に銭湯建てたいだ?馬鹿なこと言うんじゃねぇ。作業中にこっちが死んじまうよ。つーか銭湯ってなんだ?」
鍛冶屋のドワーフ、髭もじゃ筋肉ダルマのコルトはトンカチ片手に素っ頓狂な声をあげる。
「冒険者とか、魔獣が疲れを癒すところっていうか……造って貰えたらアイテムボックスに入れて持っていくからさ!」
「入るわきゃねぇーだろっ!なんだか知らんが、命知らずに手は貸さねぇよ。帰った帰った」
撃沈。
その後も二、三件回ってみたが追い返されてしまった。
「護衛とかつけなきゃ駄目かなぁ……冒険者ギルドに依頼出すとしてAランクくらい欲しいよね……そしたら雇う費用は〜」
「ナツって馬鹿っぽいのにちゃんとしてるよな」
「失敬な……」
「きゃあああっ!」
劈くような悲鳴。ラーウェルと顔を見合せてから駆けつけてみる。
危険そうだからあんまり近づきたくないけど……
建物の影からそっと現場を覗く。そこには目を疑うような光景が広がっていた。
「え……あれって、コルトおじちゃん!」
鍛冶屋の前に倒れ込んでいたのは、ついさっき話したばかりのコルトだった。頭に打撲痕があり何者かに殴られたのだと分かる。
「酷い……」
「盗賊が押し入ったんだと。今騎士様が追いかけてるらしい」
野次馬の男が心配そうに眉を寄せる。
回復ポーション飲ませる?いやでも、意識ないし……
「一か八か。ラーちゃん!コルトおじちゃん助けるよ!」
「おうよ!アレの出番だな!」
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次回、アレでコルトおじちゃんをアレします




