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第9話 友情でつかむ勝利!眠りの学園を救え!


トーキョー。

騒ぎが嘘のように、街には平和な日常が戻っていた。

朝の光が差し込む部屋で、つばきは制服のリボンを整えながらアレリアに声をかける。


「学校へ行ってくるけど、あんた今日どうするの?」


「そうだな……図書館というものに行こうかと思っている」


「え?一人で大丈夫なの…?」


横でトーストをもぐもぐしていたチュチュが胸を張る。


「僕が付いてるから大丈夫なのだ!」


「それと、その格好で?」


「この前は寝巻きだったが、今回は大丈夫だ。鎧も外したし、目立たないだろう」


確かに鎧よりはずっとマシだった。

だが、腰までの長いチュニックに、膝丈のブリーと革のベルト。加えてブーツまで履き込んでしまったら

その姿はまるで古い北欧の絵本に出てくる村人そのもの。


「………ちょっと待ってなさい…。」


ドタドタと足音を響かせながら、つばきは部屋を出て行った。


――それから約30分後。


「……これは……落ち着かないな……」


「我慢しなさい! お姉ちゃんから借りてきたんだから!」


アレリアの身に纏われていたのは、上品なベージュのブラウスに膝丈のレッドのフレアスカート。髪も軽くまとめられている。

まるでファッション誌から抜け出してきたような、洗練された都会の女性の装いだった。


「その格好なら目立たないわ」


「つばきちゃん、センスいいのだ!」


「……これはまるで、貴族の正装のようだな」


恥ずかしそうに自分の身なりを確かめた。

裾を指先で摘み、布の感触を確かめる。

鏡に映った姿が、まるで自分ではないように思うアレリア。


「つばき様、遅刻しますぞ」


「あ〜っ!!せっかく早起きしたのに!」


慌てて鞄を抱え、部屋を飛び出していくつばき。


「朝から騒がしいな……」


走りながら登校。


(……め、めちゃくちゃいいじゃない……アレリア!

まさか美人の外国人が私の家に居候するなんて……!

なんてドキドキな展開なのもう!

帰ったらメイクの方法でも教えようかしら〜。あぁ、楽しみが増えたわ、ほっほっほ〜!)


(……いや、これくらいにしておこう……なんか不謹慎だし)



「チュチュ、それでは図書館まで案内を頼む」


「了解なのだ!」


チュチュの先導で、アレリアは街中を進む。

やがて、近代的な建物の前に立った。


ウィーン……


「自動で扉が開いたな」


「これは自動ドアというのだ!」


アレリア「そうか……素晴らしい扉だ」


「お、思ったより反応が薄いのだ」


「私からすれば、この世界は非日常の塊だ。いちいち驚いていたら、きりがない」


ーーーー


白百合学園

家柄のよいお嬢様が集う名門女子中学校。

今朝も、白い制服に身を包んだ生徒たちが優雅に校門をくぐっていく。


「つばきちゃん、おはよう〜」


「ごきげんよう〜、ほほほ」


「つばきさん、今日はなんだかテンション高いね! どうしたの?」


「えっ……いや、その……ホームステイに外国の素敵な方が来たのよ!」


「え〜、いいなぁ」


「よければ、今度紹介しても…」


「えっ? 約束ね! つばきちゃん!」


キーンコーンカーンコーン……


授業が始まり、生徒たちは机に向かい、ペンを走らせる。


「ふぁ〜……眠いわ……早起きしたせいかしら……」


ぼんやりしていると、校庭の方から騒がしい声が聞こえてきた。


「なによ、もう……」


「キャー! 逃げろー!」


「スヤヤヤヤ……ここか。アンガー☆ガール、つばきが通う学校というのは……」


そこに立っていたのは、怪人ネムル。

枕のような頭部に、パジャマ姿で現れた怪人。

胸元には巨大な目覚まし時計がぶら下がっている。


警備員と先生が慌てて駆けつける。


「怪人だ! 皆、逃げろ!」

「うおおおっ!」


「スヤヤヤヤ! オヤスミ〜!」


バタンッ……!


取りかかろうとした男たちは、その場に倒れ込み眠ってしまう。


「それじゃあ……皆さんもオヤスミ〜!」


校舎全体へ向けてスヤスヤビームを放つ。


「ま……まずいわ……」


気づけば、周囲の生徒たちや先生までもが机に突っ伏し、深い眠りに落ちていた。


「うっ……つばき様……私も……」


「クナギ……貴方だけでも……逃げなさい……私……ダメかも……油断したわ……」


「駄目です、つばき様……諦めないで……」


「……そうね……クナギ……アレリア……アレリアに……助け……」


──すやぁ……。

つばきはついに眠りに落ちた。


「……! かしこまりました!」


必死に睡魔と戦いながら、クナギは学校を脱出していく。


「ん……? ザコの使い魔か。まあ放っておいてもいい。

今はドールを回収することが大事だからなぁ〜……スヤヤヤヤ!」


ーーーー


場面は図書館に戻る。

アレリアは静かに書物を読みふけっていた。


(やはり……仮定していたことが……これはもしかして……)


「アレリア、すごく没頭してるのだ」


静寂に包まれるはずだった図書館…突然の反応


ピコピコピコピコ!


チュチュ「怪人なのだ!」


アレリア「何!?それはどこだ」


2人が怪人の元へ向かおうとした時…


慌ただしい羽音とともにクナギが飛び込んでくる


「チュチュ!アレリア殿、大変でございます!」


ア「クナギ? どうした?」


「つばき様の学校に怪人が現れ……つばき様も敵の技を受け、眠らされてしまいました!」


「つばきちゃんもかのだ?」


「それは非常に危険だな……クナギ、案内してくれ」


「わかりました! こちらでございます!」


ふわふわと先導しようとするクナギ。

しかし


「……だめだ、遅い」


ガシッ。

アレリアは両手でチュチュとクナギを掴み、そのまま窓際へ駆け出す。


「な、何をするつもりなのだ!?」


「すまない、緊急事態なのだろう? 案内は口頭で頼む!」


そのまま躊躇なく窓から飛び降りるアレリア。


「ここは5階なのだーーーっ!? うわあああ!!」


「し、死ぬぅぅぅぅ!!!」


しかし、滲身で強化されたアレリアの身体は落下の衝撃を完全に制御、そして空気を切り裂くように疾走。



「でさー、最近できたお店で――」


「おお、それ気になるな」


男子生徒と愉快に会話する男、天城 陽翔。

ひよりと同じ愛ヶ丘中学校に通う男子生徒。

ある出来事をきっかけに、ひよりとつばきの正体を偶然知ることになった男。


その時


ゴォォォッ!

人体を遥かに超える速度で、街を駆け抜ける影。

風圧に髪を乱しながら、一直線に駆けるアレリア。

それを遠目でみる2人。


「うぉ!? 外国の美人のお姉さんが超スピードで走った!?」


「……チュチュ? クナギ……?」


「ん? どうした陽翔?」


「すまん! 急ぎの用事ができた!」


「お、おい!」


(あの方向……つばきちゃんの学校と同じだ。

怪人か?まさか……使い魔を人質にするつもりか?)


走り出す陽翔。

その先には、白百合学園が見えてくる。


---


「スヤヤ……つばき、みーっけ。ドールボックス、回収しちゃうもんね〜」


その手が眠るつばきに触れようとした瞬間


「そこまでだ。皆に何をした?」


「むむっ! ラブリー☆ガール……じゃない? お前は誰だ!? 俺は睡眠怪人ネムルだ!」


「いちいち名乗るな。効率が悪い奴め」


バッ―――

アレリアは一気に距離を詰め、つばきへと向かう。


しかし


「……っ!」


強烈な睡魔が全身を襲った。


(眠い……これは魔術か。属性は……おそらく黒……くそ、発動を確認できなかった。まずいぞ)


「スヤヤヤヤヤヤ!! スヤスヤビームは目に見えないのだ!」


(こんなふざけた魔術で……っ!)


必死に意識を繋ぎ止めるアレリア。

しかし、睡魔に抗うだけで精一杯だった。

「ね、眠い……のだ……」

「うぅ……意識が……」


「二人とも、踏ん張れ。このままでは……負けてしまう……!」


「スヤヤ……しつこい奴め」


ガン!

突然、後ろからゴミ箱が飛来し、ネムルの頭部に直撃した。


「いってぇ! 何だてめぇは!」


「怪人……! お、俺が……相手になる!」

 

震える足で怪人に立ち向かう一人の男子中学生。


「……誰だ?」


「あれは……陽翔くんなのだ! ひよりの同級生なのだ!」


「フン、無駄だ! スヤスヤビーム!」


見えない何かが陽翔を包み込む。

まぶたが重くなり、足がふらつく――。


「くっ……眠い……っ……」


しかし次の瞬間


「うぉぉおおおッ!!」


バシンッ!

自分の頬を思い切り殴りつけ、意識を繋ぎ止めた。


「な、なにぃ!?」


「……! なるほど……」


アレリアはポケットから、小型の護身用ナイフを抜き取る。

迷いなく自分の太ももを


グサッ!


「……目が覚めたぞ」


「ぎょええっ!? イカれてやがるコイツ!」


「な、なにやってるんですか!? 自分で刺すなんて!」


「この程度、怪我のうちに入らん」


その様子に、ネムルは動揺していた。


「おいおいおい……じゃあ、こっちは切り札だ!オハヨウ〜〜〜!」


ジリリリリリリリッ!

ネムルの胸元の目覚まし時計が甲高く鳴り響く。


その音に呼応するように、教室や廊下から

ムク……ゾロゾロ……

生徒や先生達が、眠ったまま立ち上がった。


「お前達! あの二人を捕らえろ!」


まぶたは閉じられたまま。

だが足取りは迷いなく、操り人形のようにこちらへ迫ってくる。

その列の中にはつばきの姿もあった。


「くそ……これは厄介だな」


肩元へ声をかけるアレリア。


「チュチュ、クナギ……何か逆転の案は……」


だが


「すやぁ……」

「……むにゃ」


「やられたか……!」


「うわぁっ!」

目の前まで迫った生徒の手が陽翔に伸びるが、その瞬間。

鋭い動きで陽翔の腕を引き、彼を生徒の群れから引き離す。


(助けてくれた。超スピードの外国の人…怪人じゃないのか?)


二人は屋外の花壇横、群れから距離を取った。


「ケガはないか?」


「は、はい……ありがとうございます! 俺は天城陽翔っていって……ひよりとつばきちゃんの友達です。彼女達が魔法少女なのも……知ってます」


「簡潔な説明、助かる。……さて、ここからどう動くか」


陽翔は息を整えながら、拳を握った。


「俺が……囮になります。だから、貴方はつばきちゃんを助けに行ってくれませんか?彼女さえ起こせば…怪人を倒せると思います」


「失礼だが……君にそんなことが可能なのか? あの怪人は手強いぞ」


「……わかりません。でも、彼女達を見捨てたくない。だから、なんとかしてみせます」


その瞳に、迷いはなかった。


「よし。君の方が、この世界の事情に通じている。頼んだぞ」


「……? はい!」


ーーーー


「クソっ、アイツらはどこへ行ったんだ……?」


再び怪人の前へ現れる陽翔。


「おい! 卑怯者の臆病ザコ怪人!! 自分で戦うのがそんなに怖いのか!」


「なんだと? このガキが……いいだろう、身の程を教えてやる!」


(よし……引っかかった!)


陽翔は、全力で階段を駆け降りる。

「こっちだ、トロい怪人!」


「あ! 待ちやがれ!!」

怒声を上げ、ネムルも後を追う。


――その間に。


「……やるな、あの男。つばきは…いた!」


眠りながら並ぶ生徒達の列、その中に彼女はいた。

アレリアは人垣をかき分け、乱暴に抱え上げる。

「乱暴ですまない……!」


そのまま校庭の端まで運び、ベンチにそっと降ろす。


「つばき……つばき! 起きろ、怪人だ」


「むにゃ……うーん……うるさいわね……っ!? アレリア!? なんでここに?」


「起きたか。怪人の襲撃で君も巻き込まれた。……天城陽翔と名乗る男が囮になってくれたおかげで、ひとまず避難できた。ここからは頼む……君の力が必要だ」


「は……陽翔くんが……!? ちょっと、クナギ!! 起きて!」


アレリアの肩で熟睡していたクナギの首元を、つばきは遠慮なく掴んでブンブン振る。


ク「ぐえっ!つばき様……!起きました!変身ですね!」


「変身!」


「闇を照らす、怒りの光! 孤独も嫉妬も、私の力に変えてみせる!」

「アンガー☆つばき!!」


スカートの裾がふわりと舞い、変身が完了する。


「いくわよ! クナギ!」


「はっ!」


急ぐように学校へ向うつばきとクナギ。


「やはり、その工程は必要なのだな」


ーーーー


「さて……あと一人……」


「怪人ネムル! 覚悟なさい! アンガー☆ガールつばき、参上!」


「チッ、変身しやがったな……。なら、コイツらを使わせてもらうぜ! オハヨウ〜!」


再び、眠りの支配下にある生徒や教師たちが整列し、ぎこちない動きでつばきに迫る。


「これじゃ、下手に攻撃できないわ!」


「つばき様……あれを……!」


その視線の先、操られた陽翔が、目を閉じたまま立っていた。


「陽翔くん……!」


「スヤヤ! コイツは俺に喧嘩売ってきた身の程知らずだ!」


つばきの表情から色が抜け落ち、代わりに怒気が満ちる。


「ねぇ……アンタ、何してんの……? 

……私の陽翔くんに……ねぇ……?」


ゴゴゴゴゴ……


クナギ「駄目です、つばき様!巻き添えが!」


だが、怒りに満ちたつばきの耳には届かない。


「げっ……やべぇ……! だが、こっちには人質たちが!」


ガシッ!


「なっ!?」

背後から襟首を掴まれ、視界が一気にぶれる。


「ふんっ!」


ブオン!

怪人の身体が宙を舞い、運動場の真ん中に叩きつけられた。


「ぐわあああっ!」


「つばき、思う存分やれ!」


「わかってるわよ……絶対に許さないんだから!!!」


杖にに赤黒い光が集まり、怒りの熱が空気を震わせる。


「アングリー!!! ビームッ!!」


「ぎょええええええええ!」


ドゴォォォン!!!

爆風と閃光が運動場を包み、土煙が天へと舞い上がる。


「……怒りによる魔力上昇。二度も目の当たりにしたが、やはり理屈がわからんな」


「う、う〜ん……」

目をこすりながら、まだ眠気の残る声を漏らすチュチュ。


「起きたか。怪人は、つばきが倒してきたぞ」


「そ、そうなのか!」


――場面は校舎内。

ネムルの催眠から解放された生徒や教師たちが、ざわざわと状況を確認し合っている。


「う……俺……無事だったのか」

額を押さえながら立ち上がる陽翔。


その姿を見つけたつばきが駆け寄ってくる。


「陽翔くーーーん♡」


陽翔「わっ!? つばきちゃん!」


「私のために来てくれたのね、ありがとう!怪人、すっごく怖かったわー!」


「でも、君は勝てた。助けようと思ってたのに……結局、助けられちゃったな。ありがとう」


「……っ!! い、いや……陽翔くんが来てくれたから……」

あまりの直球に、つばきの頬が一気に赤く染まる。


周囲の生徒たちは、陽翔の存在にざわめき始めた。

「あれ? 何で男子が?」「つばきちゃんの友達……?」


「まずいな……とりあえず、俺はここを出るよ」


「えー? じゃ、わ、私見送るわ!」


「どうやら皆、無事そうだな。しかし……ここの怪人は、思っていたより殺傷性の低い魔術を使う」


そう言いながら、ゆっくりと陽翔たちに近づくアレリア。


すると――

「えっ……美人!」

「ナチュラル金髪!?」

「鼻高っ! いいなぁ……」

ざわめきは、いつの間にか黄色い声へと変わっていく。


「……えっと、目立ってきたわね」


3人はひとまず校舎の外へと出る。


「さっきの……超スピードの外国の方。助かりました」


「アレリアだ。よろしく頼む」


「うーん……なんて説明したらいいのか

……って――あああーーー!!」


つばきはアレリアのスカートを見て顔を引きつらせた。


「お姉ちゃんのスカートがぁ〜!! 高いやつなのに〜!」


「これか……すまない。緊急事態だったものでな」


「あちゃ……じゃあ、俺が新しいの買ってあげるから」


「えっ!? ってことは……一緒に買い物行くってことよね! やったーー!」


「元気になってよかったです」


「わかりやすいのだ」


四人の間には、怪人との戦いの緊張が嘘のように、和やかな空気が広がっていた。


そんな中――


(図書館で見た歴史の資料……そして、この異界にして妙に多い私の世界との類似点……もしかして……)


だが、すぐに首を軽く振った。

(いや……今は先に、元の世界へ戻る方法を見つけることに専念しよう)


つばきと陽翔が次の買い物の話で盛り上がっている。

その姿を見て、アレリアは静かに安堵した。


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