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第59話 アレリア!最後の一週間!


アレリアたちは今日も元の世界へ戻るために励んでいる

……はずだった。


「きぃぃぃ!! このっ、このっ!!」


「冷静になれ、つばき。戦闘もゲームも同じだ。状況を見極めなければ、勝てるものも勝てなくなる」



ドーーン!!

画面に勝利の文字が表示される。


「くそぉぉぉ!! また負けたわ!!」


「つばき様……口調がだいぶ荒れておりますぞ……」


「あわわ……こ、怖い……」



アレリアたちは部屋で、ただゲームをしていただけだった。


「基本、この手のものはコツを掴めば容易い。

これをウェルミールに持ち帰れないものか……」


「ちょ、ちょっと!! それ私のゲームよ!!」


「ふふ……冗談だ」


「アレリアの冗談は、なかなか珍しいのだ!」


怪人が現れない日。

それは、疑いようもなく平和そのものだった。


「あーもう! 負け負け! お腹すいたわ!!」


「よし。私がデザートを作ろう」


「アレリア殿……! それは私が――」


「いや、いいんだクナギ。私が帰るまで、つばきの世話をする。そういう約束だ。……だろう?」


つばきは一瞬、言葉に詰まり、少しだけ視線を逸らす。


「そ、そりゃ……そう言ったけど。

そんな堂々と言われると……」


「任せておけ。今日はパフェを作ってやろう」



バタン――。



アレリアが部屋を出て、キッチンへ向かう。

その背中を見送りながら、つばきは小さく、どこか不機嫌そうに呟いた。


「……ほんと、徹底してるわよね。“帰る”前提で動いてるところも……」


「つばき様……」


「つばきちゃん……大丈夫……?」


マジェスタリアが、そっと心配そうに声をかける。


「だーっ!! 大丈夫に決まってるでしょ!!

子ども扱いしないでちょうだい! マジェスタリア!!」


少し強めの声で、つばきは言い放つ。


「……ほら、ゲームするわよ!」


「う、うん……」



つばきは、複雑な感情を胸の奥に抱えていた。


(……つばき様……お気持ち、分かりますぞ……)


クナギもまた、何も言わず、その背中を見守っていた。




キッチンでは。

ものの数十分で、アレリアは手際よくパフェを仕上げていく。

グラスに重なる層は美しく、彩りも申し分ない。



「アレリア、手際がいいのだ!」



「魔術の研究と似ている部分があるからな。

料理も、素材を加工し、合成し、最後に装飾する……

この世界の食事を、私の世界でも再現できればいいのだがな。

牛乳は問題ないとして……糖分をどう確保するか……」


彼女は、この世界の技術や知識を、できる限り吸収しようとしていた。


帰った時に、少しでも役立てるために。

集中が深まり、キッチンに静かな沈黙が流れる。

その沈黙を破ったのは、チュチュだった。


「アレリア……その……」


「む? どうした、チュチュ?」


「そ……その……淋しく……ないのだか?」


チュチュは、ずっと聞きたかった。

この質問がアレリアを困らせることも分かっていた。

それでも――冷静に、淡々と作業を続ける彼女の本当の気持ちを、知りたかった。

アレリアは、一瞬だけ手を止めた。



「……淋しいさ。正直に言えば、かなりな」


「……やっぱり、そうなのだ」


「だが、帰る方法がおおよそ定まった今、長居をするわけにはいかない。だからこそ……今は出来る限り、君たちとの思い出を作っているつもりだ」


その声音は、穏やかで、どこまでも誠実だった。


「約束の一週間まで、あと四日もある。存分に励むぞ」


「そうなのだ! 行きたいところがいっぱいあるのだ!

海! 山! テーマパーク!」


「ふふ……そうだな」


アレリアは、ほんの少しだけ微笑んだ。



そして、部屋に戻りスイーツタイム。



「待たせたな。特製パフェだ」


「ん〜っ!! 美味しいわ〜!!

これこれ! 腕、上がってるじゃない!」


「非常に美味ですぞ……!」


「アレリアは本当に器用なのだ!」


「……美味しい……初めて食べた……」

マジェスタリアも、控えめに、でも確かに笑顔を浮かべていた。


「それは、よかった」

スイーツを頬張り、幸せそうに笑う皆の姿を見ながら、

アレリアは静かに満足感に浸っていた。

この時間が、どれほど尊いものかを噛みしめながら。


その夜

皆は自然とアレリアの部屋に集まり、そのままお泊り会のように眠りについた。

激戦が続いた日々が嘘のように、

静かで、少しだけ名残惜しい夜だった。




翌朝


ピコピコピコピコ!!


「怪人なのだ!!」


「来たか……! 今日こそ発動すればいいが……!」



「うーむ……発動条件が、分かりそうで分からないのだ……

だが、やるだけやるのだ!」



「つばき! 怪人だ、起きろ!」


「うーん……むにゃむにゃ……眠い……」

布団にくるまったまま、まったく起きる気配がない。


「参りましたな……

これは手強い時のつばき様ですぞ……」


「つばき……私は今日、エターナルの魔術を使う。

もしかすると……今日で帰るかもしれないのだぞ」


「むにゃむにゃ……どうせ……発動しないわよ……

先に行ってて……後で……いく……」


半分夢の中だった。


「つばき様は、私が必ず起こします!

アレリア殿とチュチュは、先に行ってください!」


「すまない、クナギ」


アレリアは振り返り、もう一人の眠そうな少女に目を向ける。


「マジェスタリア……きっとすぐ戻る。

帰ったら、パンケーキを作ろう」


「……むにゃ……

いってらっしゃい……」


安心しきった声だった。


「行くぞ、チュチュ。変身だ」


「了解なのだ!」


ギュオオオン――!!



アレリアとチュチュは一足先に空へと飛び立つ。



「ドガガガガァァ!!

ぶちかましてやるぜぇぇぇ!!」

轟音とともに公園に立ち尽くすのは、

巨大な砲身そのもののような怪人だった。


胴体は大砲。

砲口はレーザー発射装置のように不気味な光を放ち、

にやりと歪んだ“いかにも悪そうな顔”が貼り付いている。


「ブレイブ☆ガール!アレリア、参上!」


「チュチュなのだ!」



「来たなぁ? 魔法少女ども!

俺様の名はドガースター!!

邪魔する奴は、まとめてぶっ飛ばしてやるぜぇぇ!!」


ギュィィィィ……!!


砲身の奥に、凄まじいエネルギーが収束していく。

空気が震え、周囲のビルの窓ガラスがビリビリと鳴り出した。


「ハイパー!ブラストォォォ!!」



グワァアアアアアア――!!!



極太の光線が、一直線に空を貫く。


「っ……!!」


アレリアは瞬時に軌道を見切り、身体をひねって回避。

光線は背後の空を裂き、遥か遠くで爆発音を響かせた。


「……凄まじい解放だな。ネーミングセンスは酷いが……」


「やはり……ここ最近の怪人は、明らかに強くなっている

行くぞ、チュチュ!」


「了解なのだ!!」


アレリアは静かに聖剣を掲げた。


「ミラクル……エターナル……ラヴァー!」


かつてマジェスタリアとメカニーナに使って以降、

何度も試した呪文。

だが、反応は一度もなかった。

今回も、何も起きない………はずだった。



カッ――!


突如、聖剣が鋭く光を放つ。


「……!?」


次の瞬間――




チュドォォォン!!!



凄まじい爆発が発生した。


「ぐわぁぁぁぉ!!」


爆風に巻き込またアレリアが悲鳴を上げる。


「アレリアー!!……って、この反応は……!?」


チュチュが目を見開く。


「ドガ……!?な、何が起こったドガ……?」




黒煙が、もくもくと空を覆い尽くす。

――やがて。

ゆっくりと煙が晴れていく。

そこに立っていたのは――

怪人でも、アレリアでもなかった。



「……ん……」



小さく、戸惑うような声。



「ガロスさん……?無事ですか……?」



少女はきょろきょろと周囲を見回し、

ふと、自分の立っている場所に気づく。



「……え……?ここ……もしかして……」


桃色の髪。

ハート型の装飾がついた杖。

アレリアよりも幼い、魔法少女の姿。



「ひ……ひより……なのだか……?」


震える声で、チュチュが呟く。

その声に、少女がびくりと反応した。


「……その声……」


ゆっくりと振り向く。


「チ……チュチュ……?チュチュなの!? チュチュ!!」


「ひよりぃぃぃぃ!!!!」



チュチュは堪えきれず、空中を飛び出した。


「お帰りなのだ!!!」


「チュチュ……!!ごめんね……!!ただいま……!!」


二人は強く抱き合い、

戦場の空に、涙と再会の声が響いた。


「お……おい! おい!!俺様を忘れるなぁぁ!!」


状況がまるで理解できていないドガースターが、わめき散らす。

だが、誰一人として彼に視線を向けなかった。


「……アレリア……アレリアは、どこに行ったのだ……?

帰れたのだか……?」


不安げに、チュチュが周囲を見回す。

その時――

ひよりが、はっとしたように顔を上げた。


「……あっ……!

アレリアさん……本当に……この世界にいたんだ…」


「チュチュ…アレリアさん、エターナルの呪文を唱えてくれたんだよね?」


「そうなのだ!!

メカニーナの時に唱えた呪文と、まったく同じなのだ!!」


ひよりは大きく頷いた。


「やっぱり……!私、見たんだ……異次元で。

アレリアさんの姿……確かに、そこにいた」



「だ、大丈夫なのだか……?」


「大丈夫だよチュチュ……アレリアさんは、元の世界に帰った」


その言葉に、チュチュの肩から力が抜けた。


「ううう……よかったのだ……!

まさか、本当に成功するなんて……!」


「ぐぬぬぬ……!

コイツら……完全に俺様を無視しやがって……!」


ドガースターが悔しそうに歯噛みするが、

その声はもう、誰にも届いていなかった。



――――――――



一方、少し遅れて現場へと向かう二人。

「なんでちゃんと起こしてくれなかったのよ! クナギ!!」


「で、ですから……三回は起こしましたと……」


「次からは五回にしなさいよ!!

もう! 遅刻じゃない!!

アレリアに先こされちゃうじゃない!」


「とほほ……」


口論しながらも、ようやく現場へ到着する。



しかし



「……へ……?」


つばきの動きが、ぴたりと止まった。


「……あれって……」


「つ、つばき様……も、もしかして……」


二人の視線の先

そこに立っていたのは――

見間違えるはずのない、桃色の髪の少女。

その姿に、ひよりも気づく。



「……つばき……ちゃん……?」


恐る恐る、名前を呼ぶ。


「……つばきちゃん、だよね……?」


その瞬間


「つばきちゃ――」


ガバッ!!



ひよりが言い終わる前に、

つばきが一気に飛びついた。


「うわぁぁぁぁぁん!!!!

じんばいじだんだからぁぁぁ!!」


「ぶじでよがっだわぁぁぁぁぁぁん!!」


子供のように泣き叫びながら、

力いっぱい抱きしめる。


「つ、つばきちゃん……!

くるし……!」


ひよりの声も、涙に震えていた。


「うう……ううう……!」


横で、クナギも深く頭を下げる。

「ひより殿……お帰りなさいませ……本当に……」


「うん……うん……!みんな……ただいま!!」


「よかったのだ……!よかったのだぁ……!」


再会の涙が、静かに、そして確かに流れていた。




「ドガァァァ!!てめぇら!!!!

いい加減にしろ!! もう許さねぇからな!!」


ドガースターの咆哮とともに、砲身が不気味に唸りを上げる。



バチチッ――!

バチバチバチ!!




砲口の奥で、これまでとは比べものにならないエネルギーが収束していく。

周囲の空気が歪み、地面が低く震え始めた。


「最大火力でぶっ飛ばす!!

俺様の最高出力は山だって削る!!

喰らいやがれぇぇぇ!!」



「ギガ・ハイパー・ブラスト!!」



ギュルギュルギュルギュル――!!



砲身が回転し、圧縮された光が暴れ回る。


「ぎょええ!!す、凄いエネルギーなのだ!!」


「これは……!回避すれば後ろの街が危ないですぞ!!」


「……まずいわね……!」

つばきが歯を食いしばり、一歩前へ出る。


「ひより!

下がってなさい!!

ここは――私のアングリー☆バーストで…!!」


決死の覚悟で構えた、その瞬間――

ひよりが、静かに一歩前へ出た。


「……え?」


「ひより……?」


つばきとチュチュの声を背に受けながら、

ひよりは落ち着いた所作で杖をかざす。

その表情には、恐怖も焦りもなかった。


「……ラブリー☆ビーム……!」


カッ――!!


純白に近い閃光が、瞬時に収束する。



キュイン――!!

放たれた光は、一直線に突き進み、

迫り来るギガ・ハイパー・ブラストを

跡形もなく、消し去った。

そのまま減衰することなく――



「……へ?なにこ――」



ジュッ……。

短い音を残し、ドガースターは一瞬で蒸発した。

爆発も、悲鳴もない。

ただ、そこにいなかったかのように。


シュウ……



沈黙。

ひよりは、そっと杖を下ろし、胸の前で手を握った。


「……ごめんなさい……怪人さん……」


呆然と立ち尽くす三人。


「ひ……ひより……?なに、今の……?」


「え……?ラブリー☆ビームだけど……?」



「……威力が……桁違いなのだ……」


「ウェルミールで……一体、何を学ばれてきたのやら……」


つばき、チュチュ、クナギ。

三人は揃って、言葉を失っていた。

かつての“魔法少女”は、

いつの間にか、圧倒的な力を携えて帰ってきていた。

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