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第57話 今度こそ!アレリア帰還せよ!

漆黒の絶望が完全に晴れ、

長く締めつけていた緊張が、ようやくほどけていく。


アレリアの体を包んでいた黄金のオーラが静かに散り、

女神のような姿はゆらりと溶けるように消えた。


シュゥ……


翼も霧のように消失し、

長く伸びていた髪もいつもの長さへ戻る。


「変身が解けたな、長くは持たないか」


軽く息を整えるアレリアに、仲間たちが駆け寄る。


「アレリア殿!! よくぞご無事で!!」


「ほんとに…ほんとにありがとう……!」


クナギと陽翔が胸をなで下ろすように、深く頭を下げる。


そして、その後ろから


「アレリア!!! ……って、当然よね……!

私が怪人を足止めしたおかげなんだから!!」


元気いっぱいにつばきが堂々と胸を張る。


「つばきちゃんは相変わらずなのだ……」


「だが、それが君らしくて安心するな。」


アレリアが苦笑すると、

つばきはちょっと照れたように顔をそむけつつ歩み寄った。


そしてアレリアの腕の中――

そっと抱かれた少女へと目を向ける。


「……マジェスタリア。救ってあげれたの?」


「大丈夫だ。今は……深く眠っている。」


かつて漆黒だった衣装は、柔らかな緑のドレスへと変わり、

その寝顔には怯えの残滓ではなく、

ひどい疲労とほんの少しの安堵が見えた。


つばきは胸に手を当て、ほっと息をつく。


「……よかった。ほんとによかった……」



そんな中で、つばきはふとアレリアに視線を向ける。

普段の勢いとは違い、どこか言葉を選ぶような、ぎこちなさ。


「あ、アレリア……その……ね……」


「……どうした?」


「い、色々と……ありがと……」


最後はほとんど囁きのようで、

風が持っていきそうなほど小さい声。


アレリアは少し目を細め、穏やかに頷く。


「それを言うなら、こちらこそだ。

つばき……チュチュも、クナギも、陽翔も。

みんながいたから勝てた。

君たちがいなければ、この世界は本当に滅んでいた。」


その言葉に、つばきの肩がピクリと跳ねた。



つばきはそっと視線をそらす。

強気な仮面の奥に、小さな影が落ちる。


「……でも……帰っちゃうんでしょ?

ひよりのこともあるんだし……」


アレリアはゆっくりとまばたきをし、

その不安げな瞳をまっすぐに見つめ返す。


「む……そのことだがな。」


その瞬間だった。


――ピカァァァァァッ!!


アレリアの腰につけていたドール箱が、ひときわ強く輝きだした。


「な、なんだ!? ドールは全部出ているはず……!」


誰も触れていないのに、箱がぐらぐらと震え、

中から生き物のように光が膨れ上がる。


モコモコモコモコ……ッッ!!!


「ゾーイ! ついに解放されたゾイ!!」


箱を破って現れたのは――

巨大な魔神……いや、魔神のようでどこかポップでゆるい雰囲気のある、不思議な存在。


角は立派だが、目はまんまる。

筋肉質なのに、動きはむにゃっとしている。


「うわわわわ!! ゾーイ様なのだ!! 本物なのだ!!」


「わ、わたしも初めて見ましたぞ……!!」


チュチュもクナギも完全にパニック状態。


アレリアは目を見開き、そっと呟く。


「これが……ゾーイ……」


ゾーイは両手を広げ、誇らしげに胸を張った。


「よくぞ私を解放してくれたゾイ! 礼を言うゾイ!」


「ひょ、ひょええ……なんかすごいの出てきたわね……」


「う、うん……これは……想像より……すごい……」


つばきも陽翔も、ただ口を開けたまま固まるしかない。


そんな空気の中、ゾーイは腕を組み、堂々と宣言した。


「ゆえに、お前たちには願いをひとつ、叶えてやろうと思ったゾイ!」


「「「!!?!?!?」」」


みんなの瞳が一斉に輝く。


………が、


「……と思ったが! 残念ながら私のパワーは……

ほぼ全てマジェスタリアに吸い尽くされてスッカラカンなのゾイ!!」


「「「えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」」」


チュチュはひっくり返り、

クナギはその場で固まり、

つばきは頭を抱え、陽翔は静かに驚愕する。


「そ……そんな……」


そして、アレリアの声が震えた。

あれほどの戦いを越えた直後だというのに、胸の奥がざわつき、焦燥がどっと押し寄せてくる。


つばきも堪えきれず、怒鳴った。


「ちょっと!!! なに言ってんのよ!?

ここまで全部覚悟して戦ってきたのよ!?

できませんで済ませる気!? なんとかしなさいよ!!」


緊迫した空気が一瞬で辺りに張り詰める。


だが――


「まてまてまて! まだ話は終わってないゾイ!」


「!?」


全員の動きが止まる。


ゾーイは胸をどん、と叩きながら言葉を続けた。


「確かに、吾輩の“本来の力”はマジェスタリアに吸われてヌケガラだ。しかしその代わりとなるモノが、実は存在していたのゾイ!」


「……代わり……?」


「そう!ここにある マジェスタリアがこれまで作り出してきたドール怪人”たちの人形ゾイ!」


「つ、つまり……?」

陽翔がごくりと息を飲む。


ゾーイは誇らしげに両手を広げた。


「それを一定数集めれば……“疑似ゾーイ”をつくれるのゾイ!

本物ほどではないが、願いをひとつ叶えるくらいの力は付与できるゾイ!」


「一体……何体必要なんだ?」


「ちょうど100体……ゾイ!」


「100……!?!?!?」


「安心するゾイ。奇しくも、お前たちが倒してきたドール怪人……あれは決して無駄ではなかったゾイ!」


そう言うと、ゾーイの両掌に淡い光が集まり、

倒されたドール怪人の人形100体が一斉に出現した。



そして――


ザザザザ……ッ!


そのすべてが、アレリアの腰のドール箱へと吸い込まれるように戻っていく。


「これで準備は整ったゾイ!」


ゾーイは満足そうに頷き、ふわりと空中に浮かんだ。


「ではさらばゾイ!

ドール怪人はまだまだトーキョーに潜んでいる。

100体集めたら……吾輩をまた呼ぶがよいゾオオイ!!!」


――ボフンッ!!


煙のように消えていった。


静寂。


そして――


アレリアはゆっくりと手元を見る。

ドール箱は、かすかな金色の光をまといながら脈打つように輝いていた。


「願いが……ついに……叶えられる、か……」


その呟きは希望で震えていた。

つばきも陽翔も、チュチュもクナギも、息を飲んでその光を見つめていた。


アレリアは箱を胸にそっと抱く。

そこには確かな未来への一歩が宿っていた。



「ついに…ついに…なのだ!!」


「長かったですぞ…!」


「アレリアさん…お疲れ様でした」


チュチュ、クナギ、陽翔が労いの言葉をかける。

そして、つばきも胸を張りながら言った。


「ほんとに…よく頑張ったと褒めてあげるわ!

…こっちは大丈夫なんだから、さっさとひよりを戻して帰っちゃいなさい…!」


アレリアは仲間たちに深く頷き、そっとドール箱を開く。


モコモコモコッ…!!

再び巨大な魔神が出現…しかし、少しサイズが小さい。


「願魔神…ギジゾーイだゾイ!

どんな願いでも一つだけ叶えてやるゾイ!」


「……」


アレリアは少し目を細め、慎重に問いかける。


「質問だ。…どんな願いでも、か?」


「うむ!一つだけだが、何でも叶えるゾイ!」


「…………例え、人の生死に関わることでも可能か?」


「うむ。色々と条件は面倒だが…行けるゾイ!」


「ひょえええ!すごいのだ!」


トーキョーの世界組も思わずどよめく。

だがアレリアは、深く沈黙に沈むように考え込み――


「もう一つ質問だ。

このドール箱は持ち運びできるか? 例えば…別の世界でも使えるのか?」


「使えるゾーイ!」


「…………よし、決まった」


アレリアは息を吸い、まっすぐギジゾーイを見る。


「ゾーイ。願いを保留させてくれ」


「「ええっ!?」」


「わかったゾイ!また呼びたい時は、その箱を開けるゾイ!」


もくもくもく…


ギジゾーイは再び箱の奥へと消えていった。


つばきが驚愕した声をあげる。


「な、なんでよ…!一体どういうつもり、アレリア…!?」



「……生き返る。みんなが……」


アレリアの呟きに、場の空気が一気に張りつめた。


「ど、どういうことなのだ?」


「私の世界で……魔物に殺された人達だ。

かつての同期も、ガロスの村の人たちも、セリアの恋人も……コーの娘も……。全員、戻せるかもしれない。」


その言葉に、誰も呼吸を忘れたように静まり返った。


「し…しかし、その為にはまずそちらの世界に帰る必要がありますぞ…」


すると、つばきが食い気味に叫ぶ。

「そうよ!ひよりだって今も向こうで危ないかもしれないじゃない!」


アレリアはゆっくりと頷いた。


「丁度それを言おうと思っていた。

実は…エターナルの呪文を使った時、一瞬だけ異次元に行った。そこで見たんだ。あれは、きっとひよりだ。」


「そ、そんなことがあったのだか?!アレリア突然消えたと思ったら…」



「ああ……恐らく、ひよりも私の世界の術を成功させた。

条件は同時発動……なのかもしれない。そして…多分だが向こうの世界で、魔王を…」


アレリアは言いかけて、言葉を切った。


「不確定要素が多すぎるが。

都度このエターナルを使っていれば、再び接触できる可能性はある……が、見込みがあると断言はできない。

でも……もし成功すれば…」


その続きを遮るように、つばきが小さく呟いた。


「……ひよりは本当に無事なの?…」


アレリアははっきりと答えた。


「……ああ…!」


そして、皆を見回すように続ける。


「一週間……一週間だけ試させてくれ。

なにも無ければ転移に使う。

皆……これが最後の頼みだ!」


「ぼ、僕は大丈夫なのだ!ひよりの反応もあるのだ!」

チュチュが拳を握る。


「私も…掛けますぞ!」

クナギも頷く。


「アレリアさんはそろそろ幸せになってもいい……!俺もだ」

陽翔が静かに言う。


「……わかったわよ。本当に“一週間だけ”よね?」

つばきも折れた。


「みんな……」


アレリアはこれまでにないほど深い感謝を込めて、全員を見つめた。


ーーーー


数日前までの激戦が嘘のように、アレリアの部屋には穏やかな光が差し込んでいた。

カーテンを揺らす風すら、どこか柔らかい。


「アレリアー! 肩もみして!」

ベッドに寝転んだつばきが、当然のように腕を広げる。


「うむ、いいだろう」


アレリアは素直に後ろへ回り、指を押し当てる。

モミ、モミ……


その光景を眺めていたチュチュとクナギは、なんとも言えない顔をする。


「……つばき様……」


「アレリアを堪能しすぎなのだ……」


「なによ! アレリアから一緒にいてくれるって言われたのよ!

 これはもう権利なのよ、権利!! ……アレリア、髪といて!」


「わかった、こっちへ来い」


アレリアがくしを手に取り、つばきの柔らかな髪をゆっくり梳かす。

サラ…サラ…と軽い音が部屋に溶け、つばきはとろけるように目を閉じた。


「あ〜……至福……。平和って最高ねぇ……」


「そうだな。ウェルミールも、こういう日常が続けば良いのだが」


色々あった二人を包むように、静かな時間が流れる。

そこへ――


ガチャッ。


控えめな少女が、おずおずと顔を覗かせた。


「ア、アレリアさん……その……一緒にゲーム、しませんか……?」


「マジェスタリアか。うむ、いいぞ今は暇だからな」


「ちょ、ちょっとぉ!? アレリアは今、私が雇ってるの!

 というか昨日も一緒にゲームしてたでしょ!」


「え、え……で、でも……つばきちゃん……怒るから、怖い……」


震えるマジェスタリア。

かつて“最強の魔法少女”と恐れられた面影は、もうどこにもなかった。


「むきぃぃ!!誰が怖いのよ!!私は優しいのよ!!」


必死に虚勢を張るつばきに、アレリアが淡々と突っ込む。


「つばき、そういうところだぞ」


そのやり取りを横目に、マジェスタリアが恐る恐る口を開いた。


「ア、アレリアさん……それと……

惑星ドールは……どうなったんですか……?」


「ああ、その件か」 


アレリアは穏やかに頷く。


「気にするな。君はもう背負う必要はない。ここで、ゆっくり過ごしてくれればいい」


「え……!?そ、そんな……いいんですか……?

でも……なんで……?」


戸惑いで目を見開くマジェスタリアに、チュチュが胸を張って答える。


「あの後なのだ!

僕とクナギとアレリアで、もう一度惑星ドールに行ったのだ!」


「そして、魔法使いと住民たちに

『マジェスタリアには二度と関わるな。

これは貴様らが招いた結果だ、死人が出なかっただけでも

ありがたく思え。

これからは、自分たちの力で復興しろ』

と、説教してきたのだ!」


「え……」


「……あまりの迫力に、

私とチュチュの怒りも、すっかり吹き飛んでしまいましたが……」


クナギは苦笑いを浮かべる。



「当然だ。奴らは、長年ぬるま湯に浸かりすぎていた

そしてマジェスタリア、君は優しい。

住民に絶望を与えても殺すことはしなかった。」


沈黙…そして


「……あ………ありがとうございます……本当に……」


その声は小さく、震えていたが、

そこにはもう“絶望”ではなく、確かな安堵が滲んでいた。


ピコピコピコピコ!!


「怪人なのだ!」


「来たか……よし、行くぞ」


「もぅ……いいとこで毎回くるんだから……というかなんでゾーイ、こんな回りくどいことするのよ!」


「そういうな。おかげでまた100体集めれば願いが叶う。

 今度はつばきか、ひよりか……好きに使うといい」


「あ、あの……ごめんなさい……私が作りすぎたせいで……」


「大丈夫なのだ! これからゆっくり回収するのだ!」


「そうですぞ! 我々が惑星ドールに説教しに行きます!」


「あ……あ……ありがとうございます……」


「「変身!」」


光が弾ける。


「今度こそ……異次元に行けるといいな」


「行けなかったら、帰ってきて私に付き合いなさいよ!」


「もちろんだ。喜んで付き合おう」


魔法少女アレリアは今日も怪人と戦う。

かつての世界へ帰るために。



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