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第50話 終焉の激突


城の最上階

世界の命運を懸けた戦いが、ついに始まった。


ガンッ! ドガァァンッ!!


爆発的な衝撃音が響き渡り、床がひび割れる。

ひよりと魔王

二つの強大な魔力が、

何度も何度もぶつかり合っていた。


「ラブリー☆ビーム!!!」


キィィィィィィン!!!


純白の光が放たれ、魔王の胸元へと向かう。

だが、魔王は微動だにせず、

片手の掌だけでその一撃を受け止めていた。


「……悪くないな。」


(だ、ダメージが……まったく効いてない……!?)


ひよりが息を呑んだ瞬間、

魔王の周囲の空気が一変する。


スッ……


黒い魔力が渦を巻き、腕に収束――。

次の瞬間、轟音が響いた。


ゴアアアアアアアア!!!


爆裂するような闇の閃光が放たれ、

ひよりの“ラブリー☆ビーム”を遥かに上回る出力で襲いかかる。


「くっ――!」


とっさに身体を捻り、

寸前で光線を回避。

直後、背後の石壁が蒸発する。


熱風が吹き荒れ、

ひよりの髪と衣が舞う。



「その程度か、世界を救うのではなかったのか?」

魔王の低い声が玉座の間に響く

そして、再び手ををかざす。


次の瞬間

無数の黒い光線が、嵐のようにひよりへ襲いかかった。

轟音とともに空間が裂け、闇の閃光が縦横無尽に奔る。


「ラブリー☆バリヤー!!」


ひよりは咄嗟に杖を構え、ハートの結界を全身に展開。


ズガガガガガガガ!!!


光線が降り注ぎ、床が砕け、壁が爆ぜる。

(……一発一発が重い……これが魔王の解放……!)


シュゥゥゥ……

焦げた空気が漂う中、ひよりは息を荒げながらも立っていた。


「……ほう、よく防いだな。」


「今まで来た者の中では、まだマシなほうだ。

もっと見せてみろその“ラブリー”とやらを。」


その余裕の笑みが、ひよりの胸に怒りを燃え上がらせる。


まるで「お前の力を見せろ」と言わんばかりに、魔王は無防備に立っていた。


(……完全に舐められてる!)


ひよりは両手で杖を強く握り、魔力を集中させる。


「セリアさん……どうか、私に力を!」


次の瞬間――

魔法少女の服が淡く輝き出した。

刺繍に刻まれた術式が光を帯び、彼女の全身へと流れ込む。


「力が増したな。

ここ数年で人間どもも随分と魔術を開発したらしい。」


魔王が興味深そうに呟く。


「ラブリー☆フラッシュ!!」


ズザザザザァァッ!!


高密度の放射線が奔流となって放たれ、

魔王の防壁を削り取りながら直撃。


ズドォォォォォォォン!!


爆光が玉座を飲み込み、床がえぐれた。


煙が晴れたその中で

魔王は微笑みを浮かべていた。


「……いい。実にいいぞ。」


感嘆の声を漏らす魔王。

だがその瞬間、目の前にひよりの影。


「もう一発!」


「ラブリー☆フラッシュ!!!」


カッ――!!!


閃光が炸裂。


「むっ?」


あのゼルハザでさえ動きを止めた、

視界を焼くほどの閃光が広がった。


「はぁぁっ!!!」


ひよりの渾身の一撃が、魔王の脇腹に炸裂した。

肉を裂くような衝撃音


メギィッ!!


確かな手応え。

しかし、魔王は眉一つ動かさなかった。


「……ゼルハザにしたことを、私にも試すか。

 発想は幼稚だな。」


直前にあれほどの閃光を浴びたというのに、

魔王の瞳は一切の眩しさを感じていない。

まるで光そのものを無効化しているかのようだった。


「な……っ!?」


ひよりが後退する間もなく


ガシィッ!!


魔王の手が彼女の腕を掴み上げた。

骨が軋む音が響く。


パキ……パキッ……!!


「――ッ!!あ、ああああぁっ!!!」


二の腕の骨が、鈍く折れる音が響いた。

激痛で杖を取り落しかける。


次の瞬間――

ゴッ!!


魔王の拳が腹部を直撃。

凄まじい衝撃。

空気が押し出される音とともに、ひよりの身体は壁に叩きつけられた。


ガァァン!!!


瓦礫が崩れ、ひよりは床に崩れ落ちる。

喉の奥から血が滲む。


「……く、ぅ……っ……!」


魔王は微動だにせず、淡々と告げた。


「治せ……待ってやる。」


その声音には、怒りも焦りもない。

まるで弱者に与える猶予のような冷たさだった。


「……っ、……痛い……!」


ひよりは震える手で腹を押さえながら、

それでも必死に立ち上がろうとする。


城の静寂を切り裂くように、

血の滴る音だけが響いていた――。


シュゥゥゥ……


ひよりの身体から淡い光が漏れ、滲身による自己治癒が始まる。

裂けた皮膚が再生し、折れた骨がわずかに音を立てて元に戻っていく。


(……強すぎる……実力差がありすぎる……)


立ち上がるひよりを見下ろしながら、

魔王はまるで雑談を始めるように口を開いた。


「ヨーレといったな。回復する間、話の続きをしてやろう。」


「……!?」


「なぜ人間を襲うのか――だったな。」

その声は冷たく、どこか楽しげでもあった。


「私はここに転移された者だ。

この世界に来た当初は、暇つぶしに侵略でもしてみるかと思った程度だった。」


ひよりの瞳が揺れる。

(……やっぱり、別の世界の存在……)


「だがな、初めて私に挑んだ者が現れた。

あれは、なかなか賢い男だった。」


(……ウィール・マルシャさん……!)


「人類という種も捨てたものではないと思った。

だから私は、奴を殺さず“再起不能”に留めておいたのだ。

その後が見てみたくなったからな。」


「……なんで……?なんでそんな……」


「奴なら、私の技術を応用し、

この世界に魔術を発展させるだろうと、そう思った。

結果は、予想通りだった。

挑戦者たちは次第に強くなり、私の元に現れる度に進化していた。……それが面白かったのだ。」


ひよりは唇を噛む。

(そんな理由で……!そんな気まぐれで……!)


「どうやらこの世界の人間は、窮地に立たされると進化する性質がある。少し力を与えれば、自ら学び、勝手に発展する。

退屈しのぎには、丁度よかった。」


「………………」


「それに――」

魔王の視線がひよりを射抜く。

「お前は、私と一緒でここの世界の人間ではないな。

魔力の根本が違う。……異界の者だ。」


「……っ!」


「今は、お前に興味がある。

“異界の魔術”と、この世界の魔術を掛け合わせた力。

すべてを見せてみろ。」


ひよりは息を整え、返事する。


「魔王って割に…おしゃべりなんだね。」


「そうだな。話すのは嫌いではない。

もっとも……話をするまで生きていられた者は、今までいなかったが。」


暗い笑みが響き渡る。

城の空気が再び震え、

光と闇の魔力が静かにせめぎ合い始めた――。



「暇つぶし……退屈しのぎ……」


「そんな適当な理由で……こんなことを……!」


魔王は微笑すら浮かべず、静かに答える。

「否定したければ、抗えばよかろう。

それが出来ぬのなら、ただの泣き言だ。」


「…………許せない!!!」


ギィィンッ!!


空気が震える。

ひよりの体から、再び膨大な魔力が噴き上がった。

傷は完全に癒え、体を包む光がさらに濃くなる。


「貴方のせいで……どれだけの人が死んだと思ってるの……!」

「どれだけ泣いた人がいたか……分かってるの!?

絶対に……許せない!!!」


魔力が爆ぜ、

ひよりの身体は宙に浮き上がり、

そのまま天井を突き破り、空へと舞い上がった。


魔王はゆっくりと顔を上げる。

「異界の魔術の応用……“浮遊”か。

……いいだろう。見せてみろ――お前の全てを。」


ーーーー



場面は――魔王の城前。

地獄のような戦場。

人類軍と魔王軍、そして幹部ゼルハザとの死闘が続いていた。


「敵は数が多い!結界を軸に連携を取れ!!」


ガロスの怒号が響く。

その声を頼りに、兵士たちは次々と陣を組み、魔物の群れに立ち向かっていく。


「ゼルハザは左からだ!死角を狙え!!」


「おおおおおお!!!」


無数の魔法陣が輝き、色とりどりの光線が空を裂いた。

赤、黄、青、三属性の解放が同時に放たれ、

拘束されたゼルハザへと集中砲火を浴びせる。


「ギィィィィィィ!!!」


大地を揺らす咆哮。

しかし、巨体はびくともしない。

ガロスたちが放つ結界拘束の鎖が、なおもゼルハザの全身を縛っていた。


「……効かねぇ……化け物め……!」


汗と血にまみれながら、ガロスが歯を食いしばる。


「くそ……あと何万発叩き込めば沈む……!」


だが次の瞬間――

ゼルハザの胸元が赤と黄色の光で脈打ち始めた。


「……!?あの反応は……!」


「ギィィィィ……ギィィアアアア!!!」


体内に詰め込まれる膨大な魔力。

炎と電撃の複合属性――最悪の爆発の前兆。


「ぐっ……!抑えてやる!!」


ガロスは咆哮を上げ、両腕を地に叩きつける。

結界の出力を極限まで上げると、光の鎖が再び締まり、ゼルハザの巨体を包み込んだ。


「総員!!ゼルハザから離れろ!!結界で身を固めろ!!!」


指揮官の叫びに兵士たちは一斉に退避し、防御結界を張る。


だが……遅かった。


「ガァァァアアア!!!!!」


ズゴォォォォォォォォン!!!


爆轟。

炎と電撃の奔流が地平線を飲み込む。


「ぐっ……うああぁぁぁ!!!」


轟音とともにガロスの身体が宙を舞い、

背中から地面へ叩きつけられた。


「うわぁぁぁぁ!!」

「ぎゃあああ!!!」


悲鳴。焼ける匂い。

仲間が次々と吹き飛ばされ、焼かれ、電流に貫かれる。


夜空が赤と黄の閃光に染まり、

まるで天そのものが怒っているかのように大地を照らしていた。


多勢だった人類軍も

ゼルハザのたった一撃で、戦況は一変した。


焦げた大地。焼け落ちた兵。

立ち上がる者は、もうわずか。


「………………」


ゼルハザの瞳が、ギロリと魔王の城を見据える。

そのまま、翼を広げて飛び立とうとした。


ブオンッ!!


バチバチバチッ!!


「ッ……!?」


雷鳴とともに、

巨大な雷斧がゼルハザの頭部に叩き込まれた。


「……まだ、雷神様が残ってるぞ……!!」


煙の中から、焦げた鎧を纏いながらも立つガロス。

その瞳には、まだ炎が宿っていた。


「グルルル……」


ゼルハザは再び地に降り立ち、

ゆっくりとガロスへと顔を向ける。


その瞬間――


「ガロスさんを一人で戦わせるな!!」


「俺たちは盾でも、囮でも構わねぇ!!」


「死ぬなら役に立ってから死ね!!!」


「おおおおおおおお!!!」


生き残った兵たちが次々と立ち上がり、

燃える地面を蹴って再び戦線へと戻る。

結界を張り、剣を構え、魔法を紡ぎ――

再びゼルハザを包囲した。


「……おい、ゼルハザ。」

ガロスは静かに雷斧を構える。

「覚悟を決めた“人間”を、舐めんなよ……?」


雷鳴が轟く。

空が裂け、閃光が地を照らす。


ガロスの身体はボロボロだった。

腕は震え、視界は滲む。

だが――その瞳だけは、決して揺らがなかった。


(ひより……頼んだぞ。お前なら……必ずやってくれる!…)


彼は、信じていた。

仲間を。

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