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第45話 100体達成!!アレリア帰還せよ!

メテオマンとの激闘に勝利し、

ドールを100体すべて集めたアレリアたち。


ついに――長かった旅の終わりが訪れようとしていた。


「それで……ここからどうすればいい?」


「箱に向かって、僕かクナギが呪文を唱えるのだ!

そしたら――箱から“100体魔人 願魔ゾーイ様”が登場するのだ!」


「よし、それなら今すぐ頼む。」


「えっ……えぇ!? い、今から!?」

つばきが目を丸くする。


「な、なんかこう……帰る準備とか……挨拶とか、あるじゃないの!」


「そうしたいのも山々だが……

事が事だからな。早めに済ませたい。」


「そ、そうなの……そんな…」

つばきは小さく視線を落とした。



アレリアは皆を見回し、ゆっくりと口を開く。


「チュチュ、クナギ、そして、つばき。

これまで本当にお世話になった。

君たちと過ごした時間は、私にとって何よりも貴重な経験だった。

……本当は陽翔にも礼を言いたかったが、時間がない。」


「ううゔ……!アレリアぁぁ!さよならなのだぁ!!」

チュチュが涙目で抱きつく。


「わ、私も……淋しいですぞ……!

でも、皆様本当によく頑張りました……!

ようやく……ようやく、すべてが解決するのですな……!」


「………………」


つばきはただ黙っていた。

その沈黙に、アレリアが少し眉をひそめる。


「……つばき?」


「……!?えっ、えと!さっさと行ってしまいなさいよ!

……はぁ、ここまで世話してあげたんだから、感謝しなさいよね!」


「まったく……最後まで君らしいな。

でも、一番世話になったのは私の方だ。心から感謝する。」


「ふんっ!」

(……アレリア、帰っちゃうんだ……。仕方ないけど……

やだなぁ……。)


(ひよりが戻ってきたら、きっと陽翔くんとくっつくんだろうなぁ……。なんか、あっけなかった…私…頑張ったのよ?

自分の集めてきた怪人ドール…渡したし…色々としてあげたのよ…?もう少しだけいてくれてもいいじゃない…

なんで私だけ……頑張ったのに、貧乏くじ引くのよ……)



アレリアはその様子を横目に、

小さく微笑んでからドール箱の前へ進む。


「……それじゃ、頼む。」


チュチュが前に出て、両手を合わせる。

「い、いくのだ……! “願いの箱よ、いま開かれよ――ゾーイ様、目覚めの時なのだ!”」



チュチュの両手にあるドール箱が――

パカッと音を立てて開いた。


その瞬間、

黒い雲がもくもくと立ち上がる。


黒煙は瞬く間に空を覆い、

まるで墨を流したように暗転していった。


「こ、これから……何が起こるというのか……」

アレリアは緊迫した様子で見上げた。


「な、なんか……いかにも“魔人”って雰囲気になってきたじゃない……」

つばきも思わず後ずさる。



グワァァァァァッッ!!!


箱の中から、紫の光柱が轟音とともに突き上がった。


「アハハハハハ!!!

――解放してくれてありがとう!!

ここまで……本当に長かったわ!!!」


空を埋め尽くすような巨大な影。

その姿は、まるで漆黒の魔女。

紫の髪を揺らし、瞳は妖しく輝いていた。


「これが……“ゾーイ”とやらか。」


「さて……願いを。」


彼女はチュチュの方を振り返った。


しかし――。


「ち、違うのだ……な、なんでなのだ……?」

チュチュの表情が一瞬で青ざめる。


「は、話が……違いますぞ!?

魔法使い殿、これはどういうことなのです!?」


「チュチュ……クナギ……何が起こってる?」


その問いに答えたのは、空を裂くような哄笑だった。


「アハハハハ!!おバカな使い魔たちね!!

あのクソジジイの言葉を信じて、

まんまと私を解放するなんて……おめでたすぎるわぁ!!!」


「な、なんですって……!?ねぇアレリア……これ、多分……」


「ああ……間違いない。ゾーイではないな。」


紫の魔力が渦を巻き、空を引き裂く。

そこに立つのは、

笑みを浮かべた強大な魔女。


「私の名前はマジェスタリア。

ドール怪人の創造主にして、惑星ドールの救世主……だった。」


黒雲の中、紫の光が脈動し、巨大な女性の姿が浮かび上がる。

漆黒のローブ、虚無を映す瞳。



「創造主にして救世主……?」

アレリアが剣を構えたまま、チュチュを振り返る。

「チュチュ、どういうことだ?」


「わ、わからないのだ……!

ただ“恐ろしい魔女”としか聞いてないのだ!

で、でもなんで……ゾーイ様の箱に……?」


「それが“ゾーイ”の箱だと?

……まったく、本当におめでたいこと。」


マジェスタリアの口角がゆっくりと歪む。



カッ!!


「――ブレイブ☆サンダー!!」


バチバチバチッッ!!

強大な電撃が空を裂き、マジェスタリアを直撃――する、はずだった。


だが――。


「アハハハ!! 無駄よ!」


電撃はマジェスタリアの身体を通り抜け、

霧のように掻き消えていった。



「アンガー☆バインド!!」


すかさずつばきが追撃。

黒い網状の魔法陣がマジェスタリアを包み込む――が。


シュゥウウ……。


それもまた、霧に飲まれ、何も残らない。


「きーっ!!攻撃が当たらないじゃない!!」


「つばき……落ち着け。

今までの戦いを思い出せ。常識は通用しないが必ず突破口はあるはずだ。」


アレリアの声に、つばきが唇を噛む。


「なによ……!こんなの、今までで一番やばいわよ……!」


マジェスタリアは笑いながら、ゆっくりと二人を見下ろす。


「チュチュ! クナギ!!

緊急事態だ、ひとまず我々についてこい!!」


「「!?」」


「は、はいなのだ!!」

「かしこまりましたぞ!!」


アレリアの鋭い指示に、二匹は慌てて駆け寄る。



「アハハハハ……♪

惑星ドールに復讐する前に……まずはこの世界で肩慣らしでもしておこうかしら。」


マジェスタリアが不敵に笑い、手をゆっくりと掲げた。


ズァァァァァッ!!!


紫と黒が混ざり合う奔流――

強烈な魔力光線が一帯を薙ぎ払った。


「ぐっ……!!」

「きゃあぁぁ!!!」


アレリアとつばき、咄嗟に防御するも、衝撃波に飲まれ吹き飛ばされる。




「これで終わり? クソジジイが厳選した魔法少女って、この程度?」

マジェスタリアの嘲笑が響く。


「……図に乗るな。」


煙の中から、アレリアが静かに歩み出た。

その瞳には一切の怯えがない。


「私の剣を喰らえ。」


聖剣が閃く。


ズバババババッッ!!


一瞬のうちに、何百、何千という斬撃がマジェスタリアを刻む。


「ギャアアアアアアア!!」


黒い肉片が四散し、辺りに飛び散った。


「やったわ!!アレリア!!それくらいしてくれなきゃ

困るんだから!!」


しかし――。


シュタッ。


「つばき……恐らくだが、ダメージは通っていない。」


「えっ!?な、なんで!?今、あんなに苦しそうだったのに!!」


散らばった肉片が、ドロドロと溶け合い、再び一つの人影へと戻っていく。


「フフ……流石は異界の勇者。油断はしないのね……アハハハハッ!」


完全に再生したマジェスタリアが、今度はより禍々しい笑みを浮かべた。


「ひ、ひぃぃ……これどうするのよっ!!」


つばきが後ずさり、チュチュが震えながら叫ぶ。


「ま、まだ……これが本気じゃないのだ……!」



「ならば本気を出すまでの間に、必ず突破口を見つける。」



「突破口……?ずいぶんと楽観的なのね、勇者って。暇なのかしら?」


「答える必要はない。」


遠距離にも近距離にも対応できる、中段の構え。

それは、長年の戦場を潜り抜けた者の冷静な構えだった。


しかし――


ギンッ!!


マジェスタリアの瞳が妖しく光る。

その瞬間、アレリアの身体が硬直した。


「がっ……はっ……!」


筋肉が痙攣し、足が地に縫い付けられたように動かない。

喉を震わせても声が出ない。


「アレリア!!アンタ、何をしたのよ!!」


「ただの金縛り。……やっぱり、大したことなかったわね。」


「がっ……は……」

(……動けん……!声も……解放も……滲身も……呼吸すら……!)



「アレリアー!! 解呪するのだ!!」

「わ、私も手伝いますぞ!!」


チュチュとクナギが駆け寄り、必死に解呪を施す。


「マジェスタリア、って言ったわね……

ここは私が相手になるわ!!

この“アンガー☆ガール”つばきが相手よ!!!」


「……フフ。面白い子ね。」



「貴方……私と同じ。孤独の匂いがするわ。」


「は?…何言ってんのよ!!」


「さぞ、利用されて……美味しいところは全部取られて……。

辛かったでしょうね?」


つばきの指先がピクリと震える。


「好きな人は貴方を見ていない。

憧れの人は、すぐに貴方を置いて帰ろうとしている。

信じていた使い魔たちでさえ……貴方を利用していた。」


「ごちゃごちゃ……うっさいわねッ!!!」


マジェスタリアは妖しく笑う。

「アハハ……怒ってごらん。――ほら。


「望むところよッ!!

アングリー☆バースト!!!」


ドオオオオオォォォン!!!


つばきの全身から黒と紅の魔力が放出される。

怒りが形を持ち、巨大な爆発となってマジェスタリアを飲み込む。


轟音が山を裂き、地が揺れ、周囲の木々が根こそぎ吹き飛ぶ。


アレリア達のいる方向だけは、

つばきの無意識の制御によって、一切の被害が及ばなかった。



---荒れ果てた大地。

吹き荒れる熱風の中、黒い煙が渦を巻き――

やがてひとつにまとまり、再びマジェスタリアの姿を形づくる。


「……残念ね。本当に面白い子だわ。」


「ぎ、ぎぃぃ……っ!!

ぜっったいに後悔させてやるんだからぁ!!」


「いい“怒り”よ、夜野つばきちゃん。

その怒り……よくわかるわ。」


「アンタが怒らせたんでしょうがッ!!私を――ッ!!」


「もっと、理解したいの。だから――」


ギンッ!


マジェスタリアの瞳が鋭く輝き、

つばきの身体も硬直した。


「あ……っ!が……っ!」

(う、動けない……!?この、私が……ッ!!)



「つばきちゃん!! 大変なのだ!!」

「こ、こちらももう少しで解呪が終わるというのに……っ!!」


チュチュとクナギはアレリアの金縛りを解こうと必死だった。


マジェスタリアが、ゆっくりと手を伸ばす。


「こっちに来なさい――」


つばきの身体が、まるで見えない糸に引かれるように宙へ浮く。

超能力めいた力が彼女をマジェスタリアのもとへと引き寄せていく。


(な、なによ……!?何をするつもりなのよッ!!)


「怒り、憎しみ、嫉妬、悲しみ……。

ずっと貴方はそれを抱えて、一人で耐えてきたのね。

でも――もう一人じゃないのよ。」


マジェスタリアの身体が黒い霧へと変わり、

その全てがつばきを包み込む。


「や、やめなさいよ!!離しなさいってばッ!!!」


「できたのだ!!!」


バチィン!!


アレリアの身体から金縛りが解けた。

彼女は即座に立ち上がり、剣を握りしめる。


「つばき――!!今行くッ!!!」


だが次の瞬間、

黒いオーラが弾け飛び、衝撃波がアレリアを吹き飛ばした。


「ぐっ!!つばき!!」



ーーーー



――気がつくと、そこは静かな空間。

どこまでも白く、何もない空間。


「……ここは、どこ?」

「アレリア……? クナギ……チュチュ……?」


ふと振り向くと、そこにはマジェスタリア…しかし先ほど巨大な存在ではなく女性の等身大、心なしかどこか穏やかな雰囲気になっていた。



「アハハ……ここはね、私の――いえ、“私達”の精神世界。」


「精神世界……?なんで、こんな所に……?」


「貴方を理解するためよ。

そして――貴方とひとつになるために。」


「私と…ひとつに…?」


マジェスタリアはつばきの頬にそっと手を添える。

その瞳はどこか優しく、暖かった。


「つばきちゃん…ここまでよく頑張ったわね…

私と一つになれば、

貴方の願いは何でも叶えられる。

陽翔くんも、アレリアも、全部貴方のもの。

もう、我慢しなくていいの。」


「……そう……なの……?」


「そう…だから…私と一緒に…共に…生きていかないかしら…?」


「そんな…でも…不思議…なんだか……ここ……心地よくて……いいかも……」



ーーーー



現実世界。


黒いオーラの濃度がさらに高まり、

その中心にはつばきの姿が消えつつあった。


「くそ!!っ……間に合わなかった……!!!!」


アレリアが地面を叩く。


「あ、あわわ……つばきちゃんが……マジェスタリアに取り込まれてしまったのだ……!!」

「そ、そんな……つばき様……!!!」


風が止み、空には不気味な黒の月が浮かび上がった。


やがて、黒色のオーラがゆっくりと収束していく。

怪しげな夜の背景に一人の少女が、静かに浮かび上がった。


「……つ、つばき……? 無事か……?」


アレリアが震える声で呼びかける。

しかし、そこに立っていた彼女はもう、以前のつばきではなかった。


赤黒く染まった衣装。

禍々しい模様が脈を打つようにうごめき、

魔神のようなオーラを漂わせる。

瞳は冷たく、何の感情も映していない。


「……すごい力……」


口元に浮かぶのは、静かな笑み。


「今なら……何でもできそう。

これが……マジェスタリアとアンガー☆ガールの力……アハハハ。」


「つ……つばき……!」


「つばき様……?本当に……つばき様ですか……?」


「つばきちゃんを返すのだ!!!」


だが、彼女はゆっくりとこちらを見下ろし、無表情のまま答えた。


「つばき?ええ…私はつばきよ……アンガー☆マジェスタの、ね。」


「……アンガー……マジェスタ……?」


「もう、貴方たちは必要ないわ。

私はこのトーキョーで、そしてドール惑星で……

欲望の限りを尽くすだけ。」


冷酷な声が風を裂き、

周囲の空気が一気に重くなる。


希望だったドール箱――

その中に眠っていたのは、果てしない絶望だった。


黒い月が空を覆い

戦いの行く末は、もはや誰にも読めなかった。


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