第43話「流れ星に願いを!勇気に力を!」
夜風が静かに流れるトーキョーの街。
魔法少女たちは、ついに99体目のドールを回収していた。
「ラブリー☆サンダー!!」
「アンガー☆ビーム!!」
「ギャアアア!!」
――チュドーン!
「やったのだ! 今日も勝てたのだ!」
「ふう……やはり、後半になるほど敵も手強いな。」
アレリアとつばきは、今日も息の合ったコンビで戦い抜いた。
-アレリアの部屋
「はぁ〜〜〜……やっと99体目! ここまで本当に長かったわよ!」
「つばき様……ご苦労様でございます。」
クナギが優しくタオルを差し出す。
アレリアは頷きながら、机の上に積まれたドール箱を見つめた。
「確かに長かったな。だが、もうすぐだ。」
「ねぇ……100体集めたら、本当に願いが叶うのよね?」
「叶うのだ!魔法使い様が言ってたのだ!」
「まぁ、今さら疑わないけどね。」
つばきはソファに寝転がり、だらけた声を上げる。
「クナギ〜、腰もんでよ〜。」
「かしこまりました、つばき様。」
穏やかな時間が流れいつの間にか日は落ちていた。
夜のベランダ
アレリアは静かに夜風に当たる。
「もうすぐだ……もうすぐ帰れるぞ。ガロス、セリア、コー……皆、待たせてしまってすまない。」
「アレリア、帰ったらどうするのだ?」
「ひとまずは状況報告だ。その後は再編成して討伐を再開する。
今の私ならネイヴくらいなら、一人でも勝てるかもしれん。」
「まったく、忙しいのね。」
背後から声。
いつの間にか、つばきが横に立っていた。
「私の世界には、まだ平和が来てないからな。」
その時だった。
キラッ――
「わっ! あー! 流れ星なのだ!」
「えっ!? どこどこ!!?」
夜空に、いくつもの光が走った。
秋の澄んだ空気の中、星々が燃えるように尾を引いている。
「あれは……私の世界にもあったぞ。『流れ星』というのだな。」
「へぇ〜、アンタの世界にもあるんだ。」
つばきは夢中で両手を合わせる。
「早く願いを唱えなきゃ……!」
「願い……? 願いが叶うのか?」
「うるさい!今はアンタに説明してる暇ないの!」
その時――ひときわ強く光る星が、空を裂いた。
「あっ! あった!! えーっと……陽翔くん、陽翔くん、陽翔くん……!」
「つばき様……それでは願いになってませんぞ。」
「あー、もっと具体的に……!!って、あの流れ星! まだあるじゃない! チャンス!」
「いや、待てつばき。……なにか、おかしいぞ。」
「おかしいってなによ! 早く願いを言わなきゃ消えちゃうわ!」
その時――
ピコピコピコピコ!!
「ええぇぇ!? こんな時に怪人!? 空気読んでよ!!」
「……もしや、あれが怪人か。」
アレリアの視線の先、夜空を横切る流星がどんどん大きくなっていく。
強烈な光を放ちながら、それはまっすぐに屋敷の方角へ――
「こっちに来るのだ!! 危ないのだ!!」
「「変身!!」」
「最後の一体……気を引き締めていけ、つばき!」
「まったく、指示出しは相変わらずなんだから!」
ギュオオオン――!!
眩い光とともに、流星が屋敷へ向かう。
「見ろ。あれは――人の形をしている……!」
光の中から、ゆっくりと影が浮かび上がる。
隕石の破片をまとったようなアーマー、額には“M”の紋章。
まるで海外ヒーローのような姿をした男が、虹色のオーラを放ちながら宙に浮かんでいた。
「HAHAHA!! 私の名はメテオマン! よろしく頼むよ、魔法少女たち!」
「な、なんかテンションが異様に高いのだ……」
「隕石のくせにやけにフレンドリーね……」
メテオマンは豪快に笑いながら指を鳴らす。
「さっそくだが――君にドール箱を賭けた一対一の勝負を仕掛ける! いいかな、アレリア!」
「……私、だと?」
アレリアが警戒して聖剣を構える。
メテオマンはニヤリと笑い、空から降り注ぐ流星のようなオーラを身にまとった。
「ここの中では君が一番強いんだろ? まぁ、せっかく魔法少女になってるのに……宝の持ち腐れってやつだがな。」
「……なんだと?」
アレリアの眉がピクリと動く。
彼女の後ろで、つばきが思わず飛び出した。
「むきーっ!!一番強いのは私よ!!眼中ない感じ出しやがって!!」
「つばき様、落ち着いてくださいませ!」
「まぁ、つばきの方が確かに使いこなしてるとは思うけどね!」
「……何を言っているのか、まったく理解できんが……
決闘なら、受けて立つ。」
「オーケー、それじゃ……場所を変えようか!」
山の開けた高台
パチンッ――。
メテオマンが指を鳴らすと、眩い虹色の光が一面を覆い、
辺り一帯が半透明の結界ドームに包まれた。
「こ、ここれは……ブシードと同じのだ!?」
結界の中にはアレリアとメテオマン、
外にはチュチュ、つばき、クナギ。
「きーー!! どいつもこいつも!! 私を除け者にして!!」
「アレリア! 負けたら承知しないからねっ!!」
「アレリア……大丈夫かのだ?」
「信じましょう……今は!」
結界の中のアレリアとメテオマン
「結界……魔術を封じるものか?」
「安心してくれ。ブシードみたいに面倒くさいルールはないよ。好きに攻撃してくれて構わない。」
「そうかなら、遠慮はせん。」
シュッ!
アレリアの姿が消える。
瞬間、光の残滓を残して一閃――!
ガィン!!
金属がぶつかる音。
メテオマンは、右腕でその一撃を素手で受け止めていた。
「悪くない。けど、まだ弱いな」
「フッ!」
メテオマンが地面を蹴る。
空気が弾けるような音とともに、一直線の正拳がアレリアの胸元を狙う――
ガィン!!
アレリアはとっさに聖剣で受け止めたが、
衝撃が両腕を伝い、骨の奥まで痺れる。
「……っ、く……っ!」
地面に足跡を残しながら、後退。
メテオマンは軽く腕を回して笑う。
「重い…!流石に決闘を仕掛けるだけはあるな」
アレリアは息を整え、聖剣を両手で構える。
剣先が微かに光を帯び、周囲の魔力を吸い上げていく。
「異界の魔法……ってやつか?」
メテオマンは腕を組み、まるで観察でもするかのように仁王立ちした。
「ラブリー☆サンダー!!!」
カッ!!
稲妻が夜空を裂く。
凄まじい雷鳴と共に、アレリアの聖剣から放たれた光が一直線に走り、
メテオマンの胸を貫いた。
バチバチバチバチ!!
辺り一帯が白光に包まれる。
しかし――
シュウゥゥゥ……
煙の中から現れたメテオマンは、
微かに焦げ跡を残しながらも、笑顔のまま立っていた。
「いいね。今度のはしっかり効いた。」
「手強いな」
アレリアの額に汗が滲む。
確かに直撃はした。だが、致命傷どころか体勢すら崩れていない。
「ふむ……じゃあ次は、こっちの番だな。」
(この異質な圧……ブシードを思い出す。
だが――奴とはまるで格が違う……!)
アレリアは珍しく、焦りを覚えていた。
目の前の敵から伝わる異様な気配。
肌がひりつくような感覚が、脳を警告していた。
ゴアッ!!!
地面が爆ぜ、砂煙が舞う。
その踏み込みだけで、地表がめくれ上がる。
「速っ――!!」
アレリアですら反応が遅れた。
「メテオパンチ…!」
メテオマンの拳が空気を裂く。
ドゴォ!!
鋼鉄のような拳がアレリアの腹部を貫き、
そのまま結界の壁へと叩きつける――!!
メギィィ……バキバキッ!!
「ぐ……あっ……! 防御はした……が!」
ぼとぼと……
口の端から、赤い雫が落ちる。
結界の外。
「あーー!! アレリア!! 何やってるのよ!!
そんな奴、さっさとぶっ飛ばしなさいよ!!」
「つばき様……あれはまさしく……過去最強の強敵ですぞ……」
「こんな奴、見たことないのだ……!」
「わ、わかってるわよ! アレリアは勇者なのよ!
ここでやられっぱなしになるわけにはいかないのに!!」
「……ふぅ、ふぅ……」
アレリアは膝をつき、呼吸を整える。
聖剣を杖のように支えながらなんとか立っていた。
「どうした?もう休憩か?」
メテオマンが静かに問いかける。
侮りも怒りもなく――ただ、“余裕”だけがあった。
アレリアは血を拭い、剣を構え直す。
「……なめられたものだな。」
「いいね。そうこなくっちゃ。」
再び衝突。
剣閃と拳がぶつかり、結界の中で光と衝撃波が乱舞する。
しかし、圧倒的だった。
アレリアの一撃は全て受け流され、
逆にメテオマンの拳は、防御の隙間を正確に突いてくる。
(速い……重い……反応が読めない……!!)
一方的に押される中、メテオマンは言葉を投げた。
「センスは悪くない。
だけど魔法少女の力を使いこなせてないのが、致命的だな。」
「使いこなせていない……だと?」
確かに、アレリアの戦闘センスは天才的だった。
異界の魔術の構築を理解し、新たな術式すら編み出す。
魔法少女の強化魔法と、滲身による肉体強化――
その両方を同時に発動し、完璧に制御している。
(これ以上……何をすればいい……?)
「つばきや君の前任は、割と早く使いこなせてたのにな。
効率やら理屈やら気にしてる頭でっかちには難しいか!」
メテオマンの軽口とは裏腹に、戦闘の速度はどんどん増していく。
衝撃波が地をえぐり、風が爆ぜるたびに地形が変わっていった。
「こんだけヒントあげてるのに、なんで気づかないかねぇ!」
「ぐっ!! さっきから――ごちゃごちゃと!!」
アレリアは防御と回避に専念しながらも、必死に思考していた。
魔法少女の力……その“本質”とは何だ?
結界の外。
「アレリア……負けちゃいそうなのだ……」
チュチュの声が震える。
「……」
クナギは拳を握り、ただ静かに見守る。
「……あんな顔のアレリア、初めて見た……」
つばきの声は、かすかに震えていた。
「HAHAHA! ペースが落ちてきたねぇ!」
「はぁ……はぁ……っ!」
(コイツ……何かが違う。敵なのに、伝えようとしている……?
“魔法少女の本質”……? ひよりやつばきは、早い段階で使いこなせていた。それに対して、私は……何が欠けている?)
メテオマンが頭をかく。
「うーん、こりゃダメっぽいな。ここで終わらすか。」
ゴアッ!!
虹色のオーラが爆発的に膨れ上がり、空間が震える。
「失礼、そろそろ本気でいこうか。」
「……っ! 魔力が増した……!
ウェルミールの幹部どころじゃない、これは――!」
「あわわわ!!さっきまで本気じゃなかったのだ!!」
「これは……まずいですぞ、つばき様!!」
「アンタ達……!! アレリアを信じなさいよ!!」
つばきは叫ぶように言った。
結界の中から大きな声が聞こえる、
「つばき……! 君の魔力の本質は怒りか?」
「え……? ええ! そうよ!!それが何か!?
アンタも怒るのよ!!むかーー!!って!!」
「チュチュ!ひよりは戦闘中、何を気にしていた!?」
「え!?えっと……ボロボロになっても、みんなの安全と平和を!
ひよりは優しいのだ! 誰よりも思いやりがあるのだ!
そういう時、凄い力が出てたのだ!!」
「怒り……慈悲……なるほどな。
確かに私は冷静に、効率や技術ばかりを追っていた。
…感情が作用するのか……勇者が聞いて呆れるな。」
そして、ゆっくりと顔を上げる。
「ほう、これだけ実力差があるのに……まだ立ち向かう気かい?」
メテオマンがにやりと笑う。
「私にも信念がある、強い感情もある…!
勇者としての、“勇気”がな。」
カッ!!!
アレリアの身体から、金と紅が混ざり合ったようなオーラが噴き出す。
空気が震え、結界全体が鳴動する。
「つばき様のアングリーとはまた異質…!これは!?」
「アレリアが……変わったのだ!!」
「やっと理解したね。面白くなりそうだ!」
メテオマンが笑みを浮かべ、構えを取る。
(未だにコイツの意図はまだ読めない……だが今はこの感情を力に変えることに集中する!)
地を蹴る。
瞬間、二人の姿が視界から消える。
ガキィィィンッ!!!
金属がぶつかるような音が響き渡り、衝撃波が結界の壁を波打たせた。
剣と拳が交錯し、火花が散る。
つい先ほどまでの圧倒的な力の差それが今、確かに埋まっていた。
「アレリアが……!互角に戦ってるのだ!!」
「ほらね!言ったじゃない!信じなさいよって!!」
チュチュとつばきが声を上げる中、
結界の中では凄まじい速度の攻防が繰り広げられていた。
ガインッ!! ガインッ!!
一撃ごとに空気が震え、
砂塵が舞い上がる。
メテオマンが僅かに距離を取る。
「いいね……!その調子だ!」
そのまま両手を前にかざすと――
虹色の光が掌の間に集まり、周囲の重力が歪み始めた。
「さて……大技、いくぞ!!」
「来い!受けて立つ!!」
次の瞬間、
メテオマンの手から小型の流星群のような光弾が一斉に放たれた――!
アレリアは静かに聖剣を構え、
刃の先に濃密な魔力を溜め込む。
対するメテオマンは、両腕を大きく開き、笑みを浮かべた。
「行くぞ――メテオバースト!!」
「ブレイブ☆サンダー!!」
ジジジジジッ!!!
轟音とともに、二つの光が結界の中で激突した。
雷と流星のエネルギーが混ざり合い、震え上がる。
シュウゥゥ……!
爆煙の中、両者が距離を取る。
「互角……か。これはいけないな。」
メテオマンが姿勢を整えようとした――その瞬間。
グワッ!!
「終わりだ…!」
アレリアは既に間合いの内側にいた。
その剣閃は、音を置き去りにする速さだった。
ズバァッ!!
虹色の閃光が走り、
隕石のようなアーマーを真っ二つに斬り裂く。
「ぐ……あぁ……! お見事……!」
パリパリッ!!
結界が音を立てて崩壊していく。
「やったーーー!! アレリアが勝ったのだ!!」
「ほっとしましたぞ……!」
「ほら見なさいよ! アレリアは私の次に強いんだから、当然でしょ!!」
喜びの声が響く中、
アレリアは倒れたメテオマンのもとに歩み寄った。
「はぁ……はぁ……。
魔法少女の本質を、ようやく理解してくれたようだな。」
「感情を込めるのだな…敵ながら感謝しよう。
だが、なぜここまで私に教えた?答えろ。」
メテオマンは微笑む。
「……いずれ、わかるさ。
今まででは……救うには、実力が足りなかった。
でも……今の君なら安心だ。」
「何を言って――!」
ボフンッ!
淡い光とともに、メテオマンの姿が崩れ、
ドールとなって消えた。
「……“救う”だと?
“実力不足だった”……? 一体、何を……?」
アレリアはドールを拾い上げ、
しばし沈黙した。
遠くから、明るい声が響く。
「アレリアーーー!!やったのだ!!おめでとうなのだ!!」
「ついに……! 100体目ですぞ!!」
「ふんっ、ずいぶん時間がかかったじゃない! ま、褒めてあげるわよ!」
アレリアは微笑みを浮かべ、
夜風を受けながら空を見上げた。
「ふふ……ありがとう、みんな。
これで――ウェルミールに帰れる。
長い道のりだった……。
本当に、みんなのおかげだ。」
ドール箱の光が、
静かに、そして確かに輝きを放つ。
だがその瞳の奥には、
まだ消えぬ“疑問”と“予感”が残っていた。
(……メテオマン。救うとは、何を…誰を…だ?)
こうして、アレリアたちは100体のドール回収を成し遂げる。
勇気の魔法少女として新たな力身につけながら…




