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第41話 敵はかつての仲間!?メモリミラーの強敵分身!

数日後。

つばきの強い決意から少し時間が経ち、いつものようにアレリアの部屋に三人と二匹が集まっていた。


部屋の中央には、つばきがゴロゴロと転がりながら愚痴をこぼしている。


「あ〜……なんでひよりなんかに〜……ううぅ……!! 私の方が可愛いはずなのに〜〜!!」


「つ、つばき様……落ち着いてくださいませ……!」


(この前とはまるで別人だな……)

「つばき、君が前に言った通りだ。実力で見返せばよかろう」


「そんなこと言ったって!! どうすればいいのよ!!」


つばきは両手で髪をぐしゃぐしゃにしながら、

突然アレリアに詰め寄った。


「アレリアはどう思うの!? 私とひより……どっちが可愛い!?」


「……私がわかるわけないだろう。ひよりを見たこともないし」


「……あ、そうだったわ」


アレリアは肩をすくめながらも、

どこか安心しているようだった。


(泣き疲れていたあの日より、ずっと元気そうだな……)


つばきはジタバタと床を転げまわりながら、

「も〜〜〜! 恋愛ってめんどくさいっ!!」


かつての重い空気はもうなく、

少しずつ、いつもの賑やかさが戻り始めていた——。



アレリアの部屋。

まったりとした午後、いつものようにお茶を囲んで雑談していた。


「ひよりか。そういえば、つばきとひよりとはどんな関係なんだ?」


「えー? ひよりと……魔法少女仲間であることと……同級生であることと……あと、ライバル?」


「ライバーー」


「ライバルってのは、互いに研磨し合う関係なのだ!」


「研磨し合う、ふむ。私の世界でいうと……ガロス、セリア、コーの存在のようなものか」


「多分……ちょっと違う気がするわ」


そんな何気ない会話が続く中、

部屋に突然――


ピコピコピコピコ!


「怪人なのだ!!」


「来たか……!チュチュ、案内しろ!」


「ちょ、ちょっと!アンタが仕切らないでよ!」


人気のない公園。

蝉の声も遠く、風に揺れる木々が不気味にさざめいている。


「ここね……反応はこの辺りを示してる」

つばきが周囲を見回す。


「なのだ……でも誰もいないのだ……」


「……いや、確かに感じるな」

アレリアが剣に手を添え、視線をある一点へと向ける。


そこは、公園の片隅にある公衆トイレ。

多目的トイレの扉が、わずかに開いていた。


「ト、トイレ!?まさか今回の怪人、トイレ怪人〜!? やだー!!」


「無駄口を叩くな。気をつけろ、何か来る……!」


ギィ……。

静かに開いた扉の奥、鏡面が不気味に光を放つ。


にゅううっ……と、鏡から腕が突き出た。

続いて銀色の身体が這い出してくる。


全身をメタリックな装甲で覆った人型。


「ふふふ……我が名はメモリミラー。

お前たちの“記憶”を映し出し、力に変える者だ。

さあ、ドール箱を頂きに来たぞ……」


「つばき、鏡の怪人は危険だ!視線を合わせるな!」


「もう入れ替わりはゴメンよ!」


二人は即座に距離を取り、構えを取る。


「ミラカワールの事か?フッ、あんな出来損ないと一緒にするな。

私は“記憶”を読み取る…!」


「来るわよ、アレリア!」


「任せろ!」


「ラブリー☆サンダー!」

「アンガー☆サンダー!!」


二人の放つ強烈な雷撃が交差し、メモリミラーを直撃する!


バチバチバチッ!! ドォォンッ!!


「やった……のだ?」


「いや、まだですぞ。最近の怪人は一筋縄ではいきません…」


煙が晴れていく――

そこに立っていたのは、なんとウェルミールの強力な結界を張っていた“あの姿”。


「……ば、バカな……ガロス!?」


銀色のボディをしているが、輪郭と髪型はガロスそのもの。


グニョン、と歪む姿。

やがて再びメモリミラーへと戻る。


「そう……私は、お前たちの“記憶”にある強者を映し出せる。

すべてを具現化できるのだ……」


「気味の悪い奴め、さっさと討伐してやる」


「ふふふ……そうはいくかな?」


メモリミラーの身体がぐにゃりと歪む。

銀色の金属が液体のように流れ、やがて四つの影へと分裂していった。


「な、なに!? 増えたのだ!?」


「分身……いや、どれも実体を持っている……!」


四体のメモリミラーのうち、三体がアレリアの前へ立ち塞がる。

残る一体はつばきの前に現れた。


次の瞬間――その姿がゆっくりと変化していく。


一体は、大斧を携えた筋骨隆々の男。

一体は、深紅のローブをまとい、掌で魔法陣を発動する魔女。

そしてもう一体は、中国拳法のような構えを取る達人。


「うわあわわ!なんか強そうなのだ!!」

チュチュが青ざめて叫ぶ。


「貴様……私の仲間を愚弄する気か。覚悟しろ、鏡の怪人!」


三人の幻影――ガロス、セリア、コー。

彼らの姿はまさに記憶の中の勇者一行そのものだった。


一方、つばきの前に立つもう一体は――。


「ひより……?」


見覚えのある笑顔。

優しく、それでいて芯のある輪郭。

この世界のもう一人の魔法少女、ひよりの姿だった。


「ひよりに化けるなんてね……! 丁度いいわ!

アンタに八つ当たりしたかった気分なの!!」


「つ、つばき様!それは強敵ですぞ!」


アレリアが指示を出す。


「つばき!二手に分かれるぞ!」


「…ええ!」


アレリアとつばきは息を合わせ、互いに逆方向へと飛び散る。

その動きは流れるような連携を感じさせた。


しかし――


ビキビキビキッ……!


アレリアの前に突如として光の壁が現れ、瞬く間に四方を包み込んだ。

眩い光が地面に魔法陣を刻みつけ、閉ざされた結界が完成する。


「ガロスの結界か」


周囲を覆う光壁から、低くうなるような音が響く。

次の瞬間――


キュインッ! キュインッ!!


結界の内側から複数の光線が放たれ、アレリアを狙い撃つ!


「次にセリアの解放!…となると」


アレリアは飛び退き、剣を横薙ぎに振る。

光線を弾き、爆煙が巻き上がる。


その煙の中――。


「……やはり接近はコー」


ズドンッ!!


強烈な拳がアレリアの腕に直撃した。

衝撃波が地面を割り、砂煙が舞い上がる。


「なるほど……再現の精度は完璧だな。

 この強さ、間違いなく“あの時”の彼らだ」


腕を押さえながらも、アレリアはわずかに笑う。

それは苦痛の笑みではなく――

かつて共に戦った仲間たちへの、懐かしさを滲ませた微笑だった。


「わわわ……アレリア……大丈夫なのだ!?」

チュチュが慌てて叫ぶ。


「問題ない。……これは私の世界の戦いだ」


アレリアの瞳が鋭く光る。

幻影であろうと、仲間を汚す者は許さない。


場面は変わり


ビシュンッ! ビシュッ!


鋭い光線が連続してつばきを追い詰める。


「相変わらず――見かけによらず脳筋なのね!」


つばきは飛行しながら身を翻し、ギリギリで光線をかわす。

髪がかすかに焦げるほどの接近弾。


「くっ……早いっ!」


しかし、彼女は怯まなかった。

すぐに反撃の構えを取り、魔力を掌に集束させる。


「アンガー☆バインド!!」


黒い稲妻のような網が放たれ、ひよりの偽物を絡め取ろうとする。

だが――


ガッ!!


きらめくピンク色の盾が現れ、ハートの輝きが網を弾き返した。


「へぇ……ラブリー☆バリヤー。バリエーションの少ないのも相変わらずね」



「つばき様っ……これは……!」


「心配しないでよ、クナギ!」

つばきは強く言い放つ。

額に汗を浮かべながらも、瞳はまっすぐだった。


「ここでひよりより、私の方が強いってこと、証明してやるんだから!!」


空気がピリつくほどの魔力が、つばきの全身から溢れ出す。



場面は再びアレリアの戦場へと戻る。


ゴッ!!


コーの偽物が突進し、鋭い拳をアレリアの顔面めがけて放つ。

しかし。それを紙一重で避け、手首を掴み流す。


「見える……! 前より確実に、速さが読める!」


ババババッ!!


次々と繰り出される拳。

そのすべてをアレリアは冷静に見極め、まるで流れるように捌いていく。


そこへガロスの偽物が巨斧を振り下ろし、セリアの偽物が解放を展開し始めた。


パキパキッ……!


アレリアの足元が一瞬にして凍りつく。

セリアの冷気が大地を覆い――


キィィィィ……!


ギュァーー!!


高密度の光線が氷面を貫いて襲いかかる!


しかしアレリアは――


「はぁっ!!」


全身に滲身の魔力を巡らせ、凍りついた足を強引に砕き、

閃光を跳び越えるようにかわした。

その瞬間、彼女の背後で爆風が弾ける。


「三人を同時に相手するのは久しぶりだ……

 だが――弱くなったわけじゃない。

 私が……強くなったのだな」


本来の仲間たちの強さ――ガロスの防御、セリアの魔法、コーの拳。

それらを凌駕しながら、アレリアは初めて気づいた。

魔法少女として得た“新たな力”と、勇者としての“才能”が融合している…強く実感をしていた事を。


「アレリア……すごいのだ……!!」


コーの偽物がラッシュを止めない。

鋭い拳の嵐が、アレリアの体を狙って次々と突き刺さる。


しかし――


ザザッ!!


アレリアはその嵐の中で、一瞬の隙を見抜いた。

聖剣が閃光のように走り、コーの偽物を一刀両断する。


「コーを……剣で捌ける時が来るとはな。」


斬られた偽物の身体がドロリと溶け、銀の液体のように崩れ落ちていく。


次の瞬間、ガロスの幻影が重たい足取りで前に出る。

巨斧を地に突き立てると、周囲に結界が展開――しかし今度はそれを外へ広げず、

自らの体に密集させ始めた。


光が収束し、結界は鎧のように硬化していく。


「密度を上げたか……なら、試してやろう。」


アレリアは聖剣を構え、魔力を一点に集中させる。


「ラブリー☆サンダー!!」


轟音とともに放たれた雷が一直線に閃き、

ガロスの強化結界を貫通する。


ガリガリガリ……ッ!! パリーン!!


破砕音とともに鎧が砕け、光の粒子が空に散り…偽物がもう一体溶け始める。


「次は……セリア、か。」


セリアの幻影は両手を掲げ、解放を始めた。

周囲に展開した無数の魔法陣が赤く輝き――高度な炎術を一斉に発動させる。


「――解放の技量は君に劣っていたが……今までは、だ。」


アレリアの聖剣から放たれた光が、熱を帯びて燃え上がる。

その炎はセリアの放つ火炎を倍に上回り、天へと轟いた。


「ラブリー☆ファイヤー!!!」


轟炎がぶつかり合い、炎の渦が空を赤く染める。

セリアの偽物はその中心で崩れ落ち、やがて静かに溶け出した。


「おおお……アレリア……こんな強い奴らを…やばいのだ!!」


「正直……私自身も驚いている。」

アレリアは剣を下ろしながら、肩で息をついた。


「魔法少女の強化魔術――これほどとは。

 ……さて、つばきは無事か?」




「ぜぇ……ぜぇ……!」


つばきと、ひよりの偽物は互角の戦いを繰り広げていた。

空中を駆ける光線、地をえぐる爆風。


「つばき様……! もう一息でございます!!」

「うるさいわね! 分かってるわよ!」


ひよりの偽物が杖を掲げ、無数の光線を放射状に撃ち出す。

ラブリー☆フラッシュが眩い光が網のように降り注ぐ。


「アンガー☆ニードル!!」


黒い雷針が雨のように返す。

光と闇の針が空中でぶつかり、爆ぜた。


ドドドドォォォン!!


「まったく……こんなバカスカ撃ってくる奴だったかしら……って、ん?」


キュイィィィィィィン……


敵が再び杖を掲げ、魔力を一点に集中し始める。

その光はまるで太陽のように輝き、圧が空気を震わせる。


「まずいですぞ!つばき様!あれは恐らく最大限のラブリー☆ビーム!今のうちに退避を!」


「望むところよ……!」


ズズズズズッ!!


つばきの杖が黒い稲妻に包まれる。

怒りが魔力に変わり、彼女の髪が揺れ、瞳が紅く光った。


「つばき様!?」

「私は絶対に、あいつを…超えてみせる!!!」


二人の魔力が限界まで高まり――


「アングリー☆ビーム!!!」


2つの光がぶつかり合う。


「ぐっ……ぐぅぅう!!!」

つばきは歯を食いしばり、杖を握り締めた。


「アンタねぇ!!!陽翔くんを奪っておいて……!

 何のんきに異界で遊んでんのよ!!さっさと帰ってきなさぁぁぁぁぁい!!!」


その叫びとともに、怒りが限界を超えた。

アングリー☆ビームの太さが増し、

ラブリー☆ビームを押し返していく。


ゴァァァァァ!!!


爆音とともに光が弾け、ひよりの偽物が直撃を受けた。


バァァァァン!!


散った魔力の中から、拳ほどの銀色の塊が転がり落ちる。

それは――メモリミラーの本体だった。


「な……なぜだ……!?

 それぞれの記憶にある強者を再現したのに……なぜ……!」


「それは“過去の強者”だからだ。」


歩み寄る影。

アレリアが聖剣を携えて現れる。


「今の私とつばきは、お互いの魔術を共有し磨き合い、

 あの頃より遥かに強くなっている。」


「ち、ちくしょおぉぉぉぉ!!!」


メモリミラーが断末魔を上げ、銀の体が歪む。


チュドォォォォォン!!!


爆炎が夜空に咲き、鏡の破片が星のように散った。


戦いは、ついに終わった。


メモリミラーのドールを回収し、

戦いの余波が静まった公園で、二人は並んで腰を下ろした。


「……少し懐かしいと思ってしまった

それくらい、時が経ったということだろう。」


「……私も、ひよりの面影を久しぶりに見たわ

どれくらい経ったのかしらね、あの子がいなくなってから。」


しばらく、沈黙が続いた。

潮風のような夜の風が髪を揺らす。


「私と対面した3人――当時の強さそのままだった。

だが、今は違う。苦戦すらしなかった。

 ……もし私がこの力のままウェルミールへ帰れれば、

 人類に勝利をもたらせる。そう確信している。」


「……そう、ね。」

「私も、ひよりの偽物と戦ってわかったわ。

 あの子に押し勝てるくらいには、私も強くなってた。

 ――アンタの“解放”の特訓、効いてきたみたい。」


「ふむ、それは良いことだ。」


「……あーあ。ひよりさえ帰ってくれば、胸を張って勝ち誇れるのに。」


「そうだな。」

「もう少しで百体。……さっさと集めるぞ、つばき。」


「だから! いちいち命令口調やめなさいっての!」


「お二人の間には、何やら強い“友情”を感じますな……」

「そうなのだ……!」


「ちょ、ちょっと! あんた達まで何言ってんのよ!」


その場に柔らかな笑いが広がる。

どこか戦いの後の空気とは思えない、穏やかであたたかな時間。


――100体まで、あと少し。

アレリアとつばきは確実に願いへと近づいていた。


その背中には、戦士としての誇りと、少女としての想いが静かに宿っていた。




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