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第33話 青き海の決戦!チーム魔法少女VSチーム海怪人

アレリアが魔法少女となってそれなりに月日が経った

幾多の試練を乗り越えてきた彼女に、また新たな試練が訪れようとしていた。


「む……日差しが強いな」


「……なのだ〜……」


「暑い〜……クナギ、今日何度よ?」


「つばき様、本日は36度でございます」


「めちゃくちゃ暑いじゃない……もう……早く冬にならないかしら」


「つばき様……半年前は『早く夏が来ないかしら』と申していましたぞ」


「どうだっていいのよ、そんなの……」


つばき一行は夏休みの期間に入っていた。

つばきを護衛するため、アレリアとチュチュも常に同行している。


「ウェルミールより湿度が高いな……」


「とりあえず……早く帰ってクーラー浴びたいわ……」



屋敷に戻ると――


「あぁ〜!……涼しいぃ〜!」


「回復するのだぁ〜」


皆が涼しさに癒やされる中、アレリアだけはエアコンをじっと見つめていた。


「この小さな箱に……黄色、青、赤すべての属性が組み込まれている……効率的に変換し、空気を操る……見事な技術だな」


「相変わらずよくわかんないけど……エアコン作った人は神だわ」


しばらくすると、つばきは険しい顔で悩んでいた。


「う〜む……夏休みももうすぐ終わる……思い残したこと……思い残したこと……」


そしてハッと顔を上げる。

「そうだ!!海だわ!!」


「海だと?」


「海水浴場!夏休みの醍醐味よ!!今こそ陽翔くんを誘うべき……!」


つばきは震える手でスマホを取り出し、メッセージ画面を開いた。


「は、ははは……陽翔くんにぃ〜……お誘いを……!!」


「普通に誘えばよかろうが」


「アンタみたいに即断できるものじゃないのよ!恋愛ってのは!」


「そ、そうか……」


「はぁ……はぁ……ふ、二人で……」


翌日


「つばきちゃん!誘ってくれてありがとう!アレリアさんやチュチュ、クナギも来たんですね!」

笑顔で手を振る陽翔。


「うむ。護衛も兼ねてな。陽翔は剣道を続けているのか?」


「はい!俺、あれから結構強くなりました!」


健気な会話を横で聞きながら、つばきはぽろぽろ涙をこぼす。


「あ〜……なんで私は二人っきりで誘えなかったのよ〜!トホホ……」


けれど、胸の奥では拳を握っていた。

「でも……ここまで来たら二人きりになるタイミングは絶対あるはず……!その時こそ、ものにしてみせるんだから!」


「つばき様……応援しておりますぞ」


「シーッ!バレるじゃないの!」


「海か……これほどの老若男女が何事もなく――」


「あ〜はいはい、そういうのは後にして!とりあえずテント借りられたから、水着に着替えるわよ!陽翔くん、また後でね♡」


ぐいっとアレリアの腕を引き、強引に更衣室へ連れて行くつばき。


「あ、了解〜。……それにしても、つばきちゃんってアレリアさんにだけやけに強気だな……」

陽翔は苦笑しながら見送った。



着替えを終え、順にテントへ戻ってくる一行。


「ふふふ……陽翔くんと水着で海……これはもう確定イベントじゃないの?ね、クナギ!」


「確定でございます……!」


紫のフリルがあしらわれた可愛らしい水着姿のつばきは、チュチュにアレリアの着替えを任せ、一足先にテントで待機していた。


そこへ――


「おーい!ごめん、待たせちゃった」


陽翔が姿を現す。


「つばきちゃん、水着すごく似合ってるよ!……うん、夏って感じだ」


(や、やったーーーー!!陽翔くんに褒められた……!!日頃あんなに怪人やら訓練やらで苦労してるんだもの!これは絶対に神様からのご褒美に違いないわ!!)


「ありがとう陽翔くん……!!そ、それに……そっちも……か、かっこいい……!」


「ありがとう。……大丈夫かな、つばきちゃん。少し顔が赤いけど」


「後は……アレリアさんだけかな?」

(正直、アレリアさんがどんな水着を着てくるのか……気になる。いや、ひよりに悪いかな? だけど……その……好奇心が……)


「チュチュに任せたけど、ちゃんと迷子にならずに来れるかしら」

(シンプルめな水着を渡したはずなんだけど……見た目が見た目だし、着こなしたら結構刺激強めになるんじゃ……)


年頃の二人は、自然と胸の内で期待や好奇心を膨らませていた。


そして――


「おまたせなのだー!」


「すまない、遅れた。どうも更衣室とやらが慣れなくてな」


アレリアが現れた姿は……

トレーニング用の短パンに、ラッシュガードを羽織っただけの格好だった。


「えぇ〜!!水着を渡したでしょ!!」


チュチュが小声で補足する。

「し、下にはちゃんと着てるのだ……」


「今日は水泳をするんだろ?あれか、あれが水着というのか? どう見てもあれは下――」


「しっ! そんなはしたないこと言わないの! ほら、周りを見てみなさいよ!」


アレリアが周囲を見渡すと、華やかな水着を着た男女が楽しそうに笑い合っていた。

可愛らしい水着、鮮やかで大人っぽい水着……様々な装いが広がっている。


「……!? 一体どういうことだ! この世界の価値観は、まったく分からん!」


「……あはは……なんだか、ほっとしたような……少し残念なような……」


波が穏やかに揺れる浅瀬では、ビニールボールを投げ合う楽しげな声が響いていた。

沖の方では、アレリアと陽翔が並んで泳ぎ、つばきはクナギに浮き輪を押してもらいながら必死に追いかけている。


昼には屋台で焼きそばとラムネを買い、砂浜に腰を下ろして頬張る。

潮風に吹かれながら食べるそれは格別で、自然と笑顔が広がった。


そして午後――。

テントに戻り、波音をBGMにそれぞれがまったりと身体を休める。


「夏だわぁ〜……」

砂浜に寝転がり、うっとりと空を仰ぐつばき。


「海を遊び場として使えるとはな……。平和とはこういうものか」

アレリアは腕を組み、しみじみと呟いた。


「アレリアさんはいつも真面目ですね」


「……くせになってしまっているな」



そんな穏やかな時間に――


ピコピコピコピコ!!


「怪人なのだ!!」


センサーが鳴り響き、空気が一変した。

テントの中で気だるげだったつばきも、一気に飛び起きる。


「また!? このタイミングで!?」


海面が激しく泡立ち、

ザババァーン!!と音を立てて現れたのは、タコの頭に人間の胴体を繋ぎ合わせたような異形の怪人だった。


「ターッコッコ!!俺様は海の怪人オックン!この海を支配してやるぜぇ!」


「出たな、怪人…」


「アレリア!変身よ!更衣室へ急ぐわよ!」


「「変身!」」


決め台詞とポーズを決め、光に包まれた二人は一気に沖の方へと飛び出していく。


「今回の敵は水中が主戦場か…厄介だな」


「タコの怪人なんて、さっさと倒してデート再開だわ!」

つばきは苛立ちを隠さず叫ぶ。


だが次の瞬間――


「ターッコッコ!!まさか俺様だけだと思ったかぁ!?」


ババババァン!!


海面を割って次々と新たな影が飛び出す。


「イーカッカ!俺はイークン!」

「パッカッパー!!僕はアサーリ!」

「クララララ!私はクラゲングよ!」

「シャーッシャ!サメの怪人シャークンだぜぇ!」


四体の海洋怪人が一斉に並び立ち、波飛沫が轟音と共に空へ舞う。


「ひぃぇ……めちゃくちゃ出てきたじゃないの…!気持ち悪っ!!」

つばきが青ざめる。


「落ち着け、つばき。我々は空を飛べるが、奴らは海に潜れる。お互いに有利不利は限られている。ここは状況を見極めて――」


「アンガー☆ビーム!!」


苛立ち混じりの強烈な光線が海を貫く。

しかし――


ジャボボボンッ!!


怪人たちは一斉に海へ潜り込み、姿を消した。


「きぃぃ!!ずるいわよそんなの!!」


怒りに声を震わせるつばき。

しかし波間には怪しげな影がうごめいていた


「これならどうだ、ラブリー☆サンダー!」


轟音と共に、強烈な電撃が海面を走る。

一瞬で海一帯を光が包み込むが――


「パカー!アサーリガード!!」


海中から飛び出したアサーリが身を翻し、殻を広げる。

電撃はすべて吸収され、海水にシュウウと蒸気が立ちこめるだけだった。


「お前の攻撃は、全部僕が受け止めるパカー!」


「硬い上に素早い…まるで、動けるベラフといったところか」

アレリアが歯を食いしばる。


その刹那――


シュッ!


オックンの触腕から黒いタコ墨レーザーが放たれ、

真横を駆け抜ける。


「ぐっ!」


間一髪でかわすアレリア。

だが、気づけば周囲は海洋怪人たちに包囲されていた。


「ターッコッコ!でかい方の魔法少女は俺たちが相手だ!」

オックンの号令で、クラゲングとアサーリも加わり、三方向からアレリアを取り囲む。


一方、残るイークンとシャークンがにやりと笑いながらつばきの前に立ちはだかった。


「イーカッカ!こっちは俺が見てやる!」

「シャーッシャ!血祭りだぜぇ!」


二手に分かれ、戦場が鮮やかに分断されていく。



「つばき様!アンガー☆ニードルならば…!」

「そうね!アンガー☆ニードルッ!」


無数の光のニードルが宙に舞い、雨のように二体の怪人へと降り注ぐ。


「シャーッシャ!そんな直線的な攻撃、効くかよッシャ!」


「イーカッカ!海は俺たちの庭だ!」


ザブンッ!

イークンとシャークンはあっさりと海中へ潜り込み、攻撃をしのぐ。


「きぃぃ!!いい加減にしなさいよ!」


「つばき、冷静になれ!敵は多いが、一体ずつ確実に……くっ!」


アレリアが言い切る前に、オックンのタコスミレーザーが放たれた。

黒光りする光線が一直線に走り、彼女の頬をかすめる。


「っ……!戦況が悪いな」


「アレリア!ピンチなのだ!」


観光客たちは恐怖で逃げ惑い、砂浜にはほとんど誰も残っていない。

ただ一人、陽翔が立ち尽くしていた。


「……っ!」

目の前で繰り広げられる戦闘に息を呑みながら、ぎゅっと拳を握りしめる。


「泳いでサポート……?いや、俺が出ていっても足手まといだ……くそ……!」


「イーカッカ!イカスミスモーク!」


ブシュゥゥッ!

濃い黒色の煙が一気に広がり、つばきの周囲を覆い込む。


「なっ……何よこれ!視界が真っ黒じゃない!こんなのアリ!?」



「つばき!!」

アレリアがすぐに援護へ向かおうと駆け出す――。


だが、その動きを狙っていたように、背後から鋭い声。


「クララララ!!油断したねぇ!!」


ヒュッ!

無数の細くしなやかな触手が、まるで鞭のような速さでアレリアを襲う。


「……っ!」

アレリアは反射的に片腕を振り抜き、触手を素手で弾き飛ばした。


「くだらん小細工が――!」


そう言い切ろうとした瞬間――。


ドクンッ!


「……!?」

アレリアの動きが急に鈍る、痺れて力が抜ける感覚。


「……身体が……痺れる……これは……毒か……?」


膝が沈み、額から汗が落ちていく。

普段なら容易に無効化できるはずの攻撃

しかし、クラゲングの毒はじわじわと全身に回り始めていた。


「チュチュ…解毒はできるのか?」


「できるのだ!でも少し時間がかかるのだ…!」


「攻撃を避けながら……厳しいな」


アレリアは触手を必死に避けながら、つばきへ声を飛ばす。


「つばき!私は毒を喰らった!上空へ高く上がれ!そしてアンガー☆サンダーを放て!」


「ええぇ!?アンガー☆サンダー!?できるわけないじゃない!」


「大丈夫だ!君にはその素質がある!」


つばきは煙を振り切り、勢いよく空高く舞い上がる。


「アンガー☆サンダー!!」


しかし――何も起こらなかった。


「ほら見なさいよ!できないって言ったじゃない!」


「つばき!エアコンを思い出せ!魔力を電気に変換するんだ!」


「そんなの簡単にできるわけないでしょ!」


アレリアは舌打ちし、毒で痺れる身体を必死に動かしながら思案する。

(このままでは二人とも危ない……仕方ない、つばきの“怒り”に賭けるか)


「つばき!あんだけ練習しておきながら何もできないのか!?いつも気を抜いてるからだ!えっと…それにな……最近わがままが増えてるぞ!魔法少女としての自覚をもっと持て!」


「ア、アレリア……?」


チュチュは驚愕の表情を浮かべる。


「……さらに言うぞ!陽翔も見てるんだぞ!そんな情けない姿、見せていいのか!?」


空に浮かぶつばきの瞳がギラリと光った。


「……言ってくれるじゃない……この脳筋・強面・冷血勇者……!」


ゴゴゴゴゴッ!!


「つ、つばき様!!!」


怪人たちはその異様な気配に気づき、顔を見合わせる。


「お、おい!なんかヤバいのが来るぞ!総員、潜れ!」


ドボボボンッ!


次々と海に潜っていく怪人たち。

だが、その頭上ではつばきの怒りが雷雲を呼び、空気がバチバチと震えていた。


「よし……成功だ。チュチュ、急いでここを離れるぞ!」


「やばいのだ!了解なのだ!」


毒でふらつきながら、アレリアはチュチュと退避する。


その時――


「アングリー!!!☆サンダーーー!!!」


ピシャアアアアンッ!!! ゴロゴロゴロ……!!


天空を裂くような雷鳴が轟き、つばきの怒りを宿した雷撃が海全体を覆った。


「「「「「あばばばばばばーーーっ!!!」」」」」


チュドォーーーン!!!


深く潜っていた怪人たちも、電撃が海をつたって全員直撃。水飛沫と悲鳴を上げて次々と沈んでいった。


「おおお!新技に昇華しましたぞ!流石はつばき様!!」



浜辺に戻った一行。


「ふぅ……チュチュ、解毒助かった。ありがとう」


「なのだ!」


「アーレーリアーーー!!」


つばきが駆け寄ってくる。


「つばきか。……見事な一撃だった。まさか自らの力で進化させるとはな」


「そんなことどうでもいいのよ!!」


「……?」


「私をあんなにバカにして煽っておいて!何様のつもりなの!?」


「もう怒らなくてもいい。冷静になれ」


「なれるわけないでしょーーー!!!」


海辺に再び雷鳴が走りそうなほど、つばきの怒りは止まらなかった。


「つ、つばきちゃん…落ち着いて…!」


「げっ!陽翔くん!?こ、これはその…アレリアが私をバカにしたから…!」


「でも、そのおかげで怪人に勝てたんだろ?すごい一撃だったよ、つばきちゃん!

俺なんか浜辺で見てるだけだったし……はは」


「そんなことないわよ!陽翔くんの応援があったから勝てたのよ!」


アレリアは小さく、誰にも聞こえないほどの声でつぶやいた。

「……私も今現在、陽翔に助けられた」


ーーーー


浜辺では帰り支度が始まっていた。

つばきと陽翔はすでに着替えを終え、アレリアを待っている。


「あ〜……せっかくの海だったのに。怪人ってホント空気読んでくれないんだから〜」


「あはは。でも君たちが戦ってくれるおかげで、俺たちはこうして平和に過ごせてるんだ。お疲れさま」


「そそそ、そんな大したこと〜……あるかな?」


「お礼ってほどじゃないけど、自動販売機でジュース買ってあげるよ。クナギの分も」


「ありがとうございます、陽翔殿!」


「えっ!?いいの?やったぁー!」

(これだけでも、今日誘った甲斐があったわ〜!!)



その頃、更衣室では――。


アレリアはつばきに渡された水着を身に着け、鏡の前に立っていた。

白を基調にしたシンプルなデザイン。横に結び目があり、所々にさりげない装飾が施されている。


「この世界の人々は、これを着て海で遊ぶのか……。似合っているのか?チュチュ」


「めちゃくちゃ似合ってるのだ!」


「そうか……だが、もう着る機会はないだろうな。……む、しまった。服を忘れていた。テントまで遠くはないし、仕方ない」


アレリアが更衣室から出た瞬間――。

そこには、つばきと陽翔の姿が。


「「!!?」」


「つばき、陽翔……?なぜこちらに?」


「なぜって、自動販売機に……」


「くっ!」


ビュン!


「待つのだー!!」


アレリアは慌てて更衣室に戻り、顔を真っ赤にしてうずくまった。


「見られてしまった……こんな姿を……」


一方で、残された二人は顔を見合わせる。


「アレリアの水着姿……すごかったわね。シンプルなのに、なんか……」


「……うん。ドキドキした」


二人にとって、それは少々強すぎる刺激となった。



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