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第27話 アレリアが2人?ニセモノを見破れつばき!

トーキョーとある山奥の開けた場所。

つばきとアレリアは、夕陽を背にして魔法の練習をしていた。


「アンガー☆サンダーッ!!」


しかし、何も起こらない。


「むきぃぃ!!なんで何も出ないのよ!」

悔しさに歯ぎしりするつばき。


「ふむ……解放を教えたいのだが、私は難なくできていたからな。とにかく、自分の中に“色”があることを理解するんだ。その色を脳を通して外に放つように意識しろ」

淡々とアドバイスするアレリア。


「それができたら苦労しないっての!もう一回……アンガー☆ファイヤーッ!!」

しかし、またしても空振り。


山に響く声と、虚しく揺れる木々。

気づけば夕陽はすっかり傾き、橙色が空を染めていた。


「はぁ……さっぱりわかんないわ……」

疲れ切った声で肩を落とすつばき。


「つばき様、きっと打てるようになります」


「……そうだな。焦るな、つばき。才能は確かにある」


帰宅、そして次の日の休日。

朝の静けさを破るように


ピコピコピコピコ!


「怪人なのだ!」


「今日もか……。この世界も休ませてくれんな。ところでつばきは?」


「すみません……何度も起こしているのですが、全然目を覚まさなくて」


「そうか、気にするな。私が向かう」


アレリアは即座に魔法少女へと変身し、反応があった地点へと飛ぶ。


街の一角

商店が並び、親子連れや買い物客でにぎわう通り。

人々は楽しげに歩き、パニックの気配はどこにもない。


「ここで反応が出ているのだ!でも……怪人の姿が見えないのだ」


「なるほど。表立った騒ぎもない……潜入型の怪人か。これは厄介だな。引き続き探すぞ」


「なのだ!」


警戒を強め、通りを見渡すアレリアとチュチュ。

その様子を、少し離れた路地の影から一つの人影が覗いていた。


「ぽここ……見れた見れた……」



そうすると、一人の女性が駆け寄ってきた。

「魔法少女ですか…?どうか、助けてください!」


すぐさま足を止めるアレリアとチュチュ。


「魔法少女……だな、今は。何かあったのか?」


「はい……実は、あの山に恐ろしい怪人が走っていくのを見てしまって……」

彼女は怯えた表情で遠くの山を指差す。


「山か。どんな姿をしていた?」


「そ、それは……お化けのような見た目で……」


「お化け……? チュチュ、お化けとはなんだ?」


「えっと……布を被って、こう…『わぁ!』って脅かすやつなのだ!」


「具体性に欠けるが……まあいい。とりあえず山へ向かおう」


ギュイーーン!

アレリアはその場を蹴り、凄まじいスピードで山の方へと飛び去った。

チュチュも慌てて後を追う。


残された女性。

その口元が、にやりと歪む。


ドロンッ!


女性の姿は煙に包まれ、たぬきのような姿の怪人へと変わる。


「ぽこここ!馬鹿な奴らめ。これでしばらくは戻らない!……そして――」


再びドロン!

現れたのは、アレリアの姿をした“ニセアレリア”。


「この姿でアンガー☆ガールからドールを奪ってやる……ぽここ!」



そして場面はつばきの家へ戻る。


「つばき様……起きてください。怪人ですぞ」


「むにゃ……もう起きるから。クナギ、お水持ってきて……」


「まったく……」

小さくため息をつきながら、クナギはブツブツと文句をこぼしつつキッチンへと向かっていった。


寝室には、ベッドでうつらうつらしているつばきだけが残される。


――ガチャリ。

静かに扉が開き、影が差し込む。


「ぽここ……この姿、本当に便利ぽこ。すぐに部屋まで案内してもらえたぽこ……さてさて、ドールはどこかな?」


アレリアに化けたポーコッコが忍び込み、部屋を物色し始める。

その手がベッドのつばきへと伸びた、その時――


ムクリ、とつばきが起き上がった。


「むにゃ……クナギ……って、アレリア?なんでここに?」


「……!ぽこっ!? ――いや、起きたのか!」


「アレリア、怪人はもう倒したの?」


「ぽ……じゃなくて……う、うむ、倒したぞ。なかなか手ごわかったぞ!」


「相変わらず速攻ねぇ……やっぱり戦士ってみんなそうなの?」


「戦士……? あ、ああ、そうだな。戦士はみんなこうだぞ!」


(セ、セーフ……!バレてないぽこ……!)

ポーコッコは冷や汗をかきながらも、なんとか誤魔化し続けるのだった。


「つ、つばきは休んでていいぞ〜!」


「……へ?」


(まずい……今のは少し調子が違ったか!?)


つばきがジト目でアレリアを見つめる。


「アレリア、今日ちょっと変じゃない?」


「そ、そうかな? 私はいつも通りだぞ?」


「……怪人に何かされたんじゃないの?」


「そ、そうそう!怪人の攻撃の影響だ!スナオニナールって技を受けたんだよ〜!」


「スナオニナール? ……はぁ。やっぱりあんたも油断する時あるんじゃない。あれだけ私に偉そうに言っといて、恥ずかしくないの?」


(ぐぬぬぬ……コイツ……僕に言ってる訳じゃないのに、いちいち腹立つことばかり言いやがって!)


ポーコッコは内心で地団駄を踏みつつも、必死に「アレリア」としての威厳を保とうとしていた。


扉が開き、クナギが入ってくる。

「つばき様、お水をお持ちしました……って、アレリア殿!」


(げっ……!戻ってきやがった!使い魔め!)


つばきが説明する。

「クナギ、アレリアが怪人の技を受けちゃって、ちょっと変になっちゃったのよ。ほんと情けないわね!」


「おほほ〜、そうなのそうなの〜!“スナオニナール”受けちゃって困っちゃったなぁ〜!」

(この……小娘、好き放題言いやがって……!)


クナギは冷静に一礼して、

「それは大変でしたな。私が診てみましょうか?」


「……!? い、いやいや!大丈夫、大丈夫!時間が経てば自然に戻るから!それよりクナギ、つばきと二人っきりで話したいから……ちょっと席を外してくれるか?」


「? ……かしこまりました。ごゆっくり」


クナギは不思議そうな顔をしつつも、丁寧に頭を下げて部屋を後にする。

バタン――。


残されたのは、ベッドに腰かけるつばきと、ニセアレリア。


「んで、なによそのスナオニナールってのは?」


「そうね!文字通り“素直”になっちゃうの!つばきはいっつも頑張ってて偉い!思ってることを言っちゃうの!」


「……!……ほんと?」


「ほんとほんと!かっこいいな!アレリアご褒美してあげたいくらい!」


「そ、それじゃ……お疲れ様の……ハグ……してよ」


「えっ?」


「ハグしてっつってんの!!何度も言わせない!!」


「あ、はい!わかりました!」

(コイツ……ちょろいぞ!)


「ほら〜、アレリアお姉さんだぞ〜。ぎゅー」


ニセアレリアはぎこちなくも、つばきを抱きしめる。

「えへへ……悪くないわぁ〜。それじゃ次は肩叩いて」


「ほれ!トントン!」


幸せそうに身を委ねるつばき。だがその外では――


玄関にて待機していたクナギが腕を組み、眉をひそめていた。

「つばき様……本当に大丈夫なのかな……?」


そのとき、前方から別の声が聞こえる。


「やはり怪人は見つからなかった。夜が明けたら再び捜索するとして……チュチュ、君の反応は出現の時しか分からないのか?」


「そうなのだ。もう少し精度があれば助かるのだけど……」


「えっ?アレリア殿?」


「クナギか。なぜそこに立っている」


そこには山から帰還した“本物のアレリア”が立っていた


「アレリア殿!先ほどつばき様と一緒にいたはずでは!?」


「いや、私は今日はチュチュと怪人の捜索に出ていた」


一気に血の気が引くクナギ。

「大変ですぞ!アレリア殿!恐らくニセモノがつばき様の元へ!」


「なに!?」

「大変なのだ!!」


3人は一気に駆け出し、つばきの部屋へと急ぐ。


バタァーン!

勢いよく扉を開くと――


「はい、つばきちゃん、あーん」

「はーい、あーん!」


ショートケーキを食べさせてもらうつばきと、にこやかに笑う“アレリア”の姿があった。


「つばき様!それはニセモノです!」


「!? クナギ!2人っきりに……って、えええ!? アレリアとチュチュ?なんで?」


「私が本物のアレリアだ。つばき、下がれ!」


冷徹な眼差しを向けるアレリア。本物の迫力に押され、ニセアレリアは慌てて一歩退く。


「ぽここ……く、くそ!!ここまでか!」


ドロン!

煙が弾け、姿を現したのはたぬき怪人・ポーコッコだった。


「ぽここ!僕はポーコッコ!変身できる怪人だ!まんまと山へ行った馬鹿な奴らめ!」


「へ……全部……嘘だったの……?」

つばきは、幸せだと思っていた時間がすべて幻想だったことに気づき、目を見開く。


ポーコッコは窓から飛び出し逃走。

「ぽこここ!おさらばだぽこー!」


「逃がさん!」

アレリアも窓から飛び出し、その後を追う。


「逃げるかよ!こうなったらギガントポーコッコを見せてやる!」


ドロンッ!


瞬く間に膨れ上がり、屋敷と並ぶほどの巨体へと変貌。毛並みは黒ずみ、牙は禍々しく伸び、たぬきの面影は怪物そのものだった。


「ボゴゴゴ!これが俺様の最強パワーだぽこ!」


「……でかいな。確かにこれは手こずりそうだ」


だがその時、アレリアは背後に別の気配を感じて振り返る。

「……!? なんだ、この魔力は!」


そこに立っていたのは変身したつばき。

赤黒いオーラが怒りと共に噴き上がり、彼女の輪郭すら霞んで見えなくなっていた。


「返してよ……私の……ご褒美を!!!!」


地を揺るがすほどの怒声と共に、つばきの魔力が爆発する――。

「つばき……なのか?」

アレリアはその異様な気配に息を呑む。


「アレリア!逃げるのだ!」

「私も……ここまで怒ったつばき様は初めて見ます!!」


怒気に呼応するように、風が渦を巻き、全てがつばきの身体へと吸い込まれていく。


「ボゴゴゴゴ!!お前の姿は実に情けなかったな!“あーん”だってさ!」

巨大ポーコッコが嘲笑う。


「…………」

つばきは一言も発さず、ただ怒りをエネルギーへと変えていた。


「ボゴォー!くらえ!!たぬきパンチ!!」

山を砕かんばかりの巨大な拳が振り下ろされる。


だが――つばきは拳を見据えたまま、静かに呟いた。


「……アングリー……!!!! ☆バースト!!!」


ゴォオオオオオオアアアアアア!!!


轟音と共に放たれたのは、ギガントポーコッコの巨体すら覆い尽くすほどの巨大光線。

あまりにも圧倒的な破壊力に、空気が震え、大地が軋む。


「ボゴォォォォ!!!???」

怪人の断末魔は光にかき消され、巨体は一瞬で飲み込まれていった。


チュドォォォォン!!!


轟爆の閃光が、夜空を昼のように照らし出す。


シュウ……

荒ぶるオーラが消え、夜風が吹き抜ける。


「ふぅ……最近ぶちかましてなかったから、スッとしたわ!」

先ほどまでの鬼気迫る姿が嘘のように、普段通り不機嫌そうなつばきへ戻る。


「よかったです!つばき様!」

チュチュがホッと胸をなでおろす。


「つばき……やはり君は凄い魔術師だな」

アレリアは真剣な眼差しで言葉をかける。


「……!……当たり前よ!」

照れ隠しにそっぽを向くつばき。


だが、ふと振り返りアレリアを見つめる。

「それと……ねぇ。アンタはちゃんと“本物”?」


「む……そうだな。本物だが、疑うのならなんでも質問してくれ」


「いいわよ!……それよりさ……アレリア、疲れたから……ハグ、してよ」


「ハグ?ハグとはなんだ?」


「うわーーん!!本物のアレリアだ!!なんでいつもこんな目に遭うのよーー!寝坊しただけなのにーー!」

つばきは床にへたり込んで泣き叫ぶ。


「本物のアレリア殿はブレませんな……」


「しかし酷いのだ……」


ニセアレリアは、つばきにとって理想の“優しいアレリア”だった。

だが現実のアレリアは、どこまでも戦士であり、融通の利かない本物だった。



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