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第19話 アレリアの号泣? つばきの大弱気?恐ろしいガス攻撃! 



学園祭も無事に終わり、

つばきとアレリアは部屋でゲームに熱中していた。


「ぐっ……指が追いつかん!」


「甘いわね!スマッシュよ!!」


バシュッ!


アレリアのキャラが上に吹っ飛び、星マークになって消えていく。


「ほほほほ!私の勝ちよ!」


「つばき様の圧勝でございます!」


クナギが拍手する中、部屋には笑い声が響く。

ただ、当のアレリアは冷静にコントローラーを握り直していた。


(瞬発力と判断力を要求するこのゲームとやら……模擬戦に近い感覚だな。ただし触感も痛みもないのは大きな難点だが……)


チュチュが口を尖らせる。


「つばきちゃん、初心者に容赦ないのだ」


「うるさいわね!勝負の世界は厳しいのよ!」


「チュチュ。残念ながらその通りだ。戦場において弱者は問答無用に淘汰される」


「そ、そんなシリアスに言ったわけじゃないのよ!」


ぼちぼち暇つぶしをしていると


ピコピコピコピコ!


「怪人なのだ!」


「もう!いいとこだったのに!」

つばきはコントローラーを強く置き。


「アレリア!」


「そうだな、行くぞ」


二人は同時に立ち上がり、きらめく光に包まれる。


「「変身!」」


煌めく魔法のエフェクトと共に、二人の姿は魔法少女へと変わる。


「いっくわよー!」

つばきはカーテンをめくり、窓から勢いよく飛び出した。


ひらり、と宙を舞うつばき。

その後ろ姿を見上げたアレリアが眉をひそめる。


「つばき、前々から聞こうと思っていたのだが」


「なによ!」


「君はどうやって飛行しているんだ?」


「……へ?」


思わぬ直球の質問につばきは硬直。

「えっと…クナギ、私達ってなんで飛べるんだっけ?」


「それはつばき様とひより殿のセンスが良いからでございます」


「その通りなのだ!」


つばきは胸を張る。

「ほら!才能ってやつよ!」


「とにかく…こう、ふわ!!って感じで!」


つばきが両手をバタつかせながら、

よく分からないジェスチャーで説明する。


(……何を言ってるのかさっぱりわからんが……浮遊を想像しろ。ネイヴとの戦闘、物を浮かす能力を使っていた。ならば応用できるはずだ…)

(この姿なら解放も使える。滲身…解放…2つを組み合わせ…)


アレリアは深く息を吸い込み、集中する。

すると――


スッ……

たちまち彼女の身体が宙に浮き始めた。


「ア、アレリアが浮いたのだ!」


「これは素晴らしい…流石は勇者…」


自分の魔術をこの世界の仕組みに応用し、魔法少女として浮遊を実現させたアレリア。

その瞳は輝き、口元は珍しく笑みを帯びていた。


「やはり魔法少女の力……素晴らしい!行くぞ!」


ゴォォォッ!!!


爆発的な風圧を巻き起こしながら、アレリアは矢のような速度で大空を駆け抜けた。

それを慌てて追いかけるチュチュ。


「ま、待つのだー!!速すぎるのだーー!!」


置いてけぼりにされた二人が残される。

呆然と見上げるつばきとクナギ。


「ねぇ、アレリアって魔法少女というよりは……」


「スーパーヒーローですな」


とある町の上空。

薄暗い雲が渦を巻くように集まり、その中心には怪しげな姿の怪人が漂っていた。

体は煙でできているかのように曖昧で、口からは常に紫色のガスを吐き出している。


「スモスモモー! 気分転換モー!」


現場に真っ先にたどり着いたアレリアが聖剣を構える。


「怪人だな?私は魔王討伐隊のアレリアだ。

これより討伐する」


「そしてチュチュなのだ!」


怪人は不気味に笑いながら胸を張った。


「スモモモー!僕の名はモクモクラウン!

皆の性格を変えちゃうモー!」


チュチュが小声でアレリアに囁く。

「なんで自己紹介するようになったのだ?」


「なぜだか分からんが、この姿になってから名乗らねばならない気がするからだ」


そんな会話をしている隙に


「スモーッ!チェンジングガス!」


モクモクラウンが口を大きく開け、もくもくと怪しげなガスを吐き出す。

瞬時に迫る霧を、アレリアはかわした。


「空気に干渉する魔術か……これは危険だな」


彼女は剣を構え直し、力を解き放つ。


「ラブリー☆ファイヤー!」


ゴォォォッ!!

濃密な炎の奔流が怪人を直撃し、空中で爆発を巻き起こす。


ドカーーーン!!


「うぎゃあああ! やられたモー!」


「やったのだ!」


しかし爆煙の中で、黒い影が再びゆらめいた。

集まった煙が渦を巻き、あっという間に怪人の形を取り戻していく。


「なーんてね!僕に攻撃は意味ないモー!」


「なんだと!?」

アレリアの目が鋭くなる。


再生を終えたモクモクラウンは、楽しげに両腕を広げた。

「僕は煙そのもの!切っても燃やしても消えないモー!」


アレリアは息を整え、表情を引き締めた。

「……厄介な相手だな」


「どきなさい!」

後方から響く、聞き慣れた声。


「アンガー☆ガールつばき参上!」

「クナギでございます!」


モクモクラウンは不気味に笑った。

「スモモ〜、二人まとめて来るモー!」


「そう言えるのも今のうちよ!新技を見せてあげるわ!」


彼女の杖から光が広がり

「くらいなさい!アンガー☆バインド!」


放たれたビームは網目状に変化し、煙の怪人を捕らえて絡めとる。


「モモモッ!?動けないモ!」


「ほっほっほ!どう?煙だろうが何だろうが、私の技の前では無力よ!」


勝ち誇るつばきに、アレリアが低い声で釘を刺す。

「つばき、汎用性のある技だが油断するな。奴の力はまだ未知数だ」


「大丈夫よ!こうなったらもう何もできないでしょ!」


だが、モクモクラウンの口元から、紫色の霧が漏れ出す。

「くぅ〜!チェンジングガス!」


「えっ!?きゃあーー!!!」


回避の暇もなく、つばきは直撃を受けた。


「つばき!あれほど言ったのに!大丈夫か!?」

煙が薄れ、その姿があらわになる。


そこにいたのは普段の勝気な彼女ではなく、目に光を失った少女だった。


「はぁ……また私、ダメだったわ……。ほんと情けない……」


アレリアは言葉を失う。

「つばき……?」


「なんで私みたいな役立たずが魔法少女になってるんだろう……。クナギ……私、こんな私でごめんなさい……」


「つばき様!なんてお姿に!」

クナギは慌てて飛びつくが、つばきの瞳は揺れることなく、ひたすら自己否定に沈んでいた。


「クナギ、一時退避だ!」


「わかりました!」


「スモモ〜!逃げられると思ってるモー!」


アレリアは迷わずつばきを抱き上げ、チュチュとクナギの腕をがっしりと掴む。


「つばき、息を止めておけ」


「はぇ……?」


ゴォォッ!!!

アレリアの身体は凄まじい速度で飛び立つ。


「えええ!?速すぎるモーーー!」



場面は変わり、とあるビルの屋上。

そこには陽翔の姿があった。

遠くの怪人を警戒しながら観察している。


「……本当は危険だってわかってるけど。俺は守られてばかりで情けない……せめて怪人を観察して弱点でも探れれば」

拳を握りしめ、息を呑む陽翔。


その視界に、信じられない光景が飛び込んできた。

凄まじい速度で空を切り裂き、飛行するアレリア。

その腕にはつばきの姿。


「えっ!?アレリアさんが……空飛んでる!?」


アレリアも陽翔に気づき、無理やり方向を切り返す。

スピードが落ちず苦労するが、

なんとか全員を下ろした。


「くっ……まだ制御が難しいな」

乱れた息を整えつつ、アレリアは陽翔に問う。

「陽翔、なぜこんな危険な場所にいる?」


「え、えっと……それは……」

答えに詰まる陽翔。


「本来なら叱りたいところだが……好都合だ。つばきを頼む」

「すみません!……つばきちゃん、大丈夫か!?」


「ん〜……陽翔くん……いつもごめんね……迷惑ばっかりかけて……」

「えっ!? つばきちゃん、どうしたんだ!?」


アレリアが険しい声で告げる。

「怪人の魔術だ。性格に作用する」


「このままじゃ危ないのだ!」


陽翔はつばきの手を握り、必死に訴えかける。

「迷惑なんかじゃない!俺の方こそ、何もできなくて……いつも守られてるのは俺の方だ。大丈夫だよ!」


「陽翔くんは……こんな私にも優しいんだね……」

弱々しい声のまま、つばきの瞳は揺れない。


「陽翔殿に声をかけられても戻らない……なんて強力な……!」

クナギが震える声を漏らす。


「とにかく、全員を安全な場所に移す。掴まってくれ」


陽翔とつばき、チュチュとクナギが必死にしがみつく。

だが、飛び立とうとした瞬間


「モモモモーー!!見つけたモーー!!ドールをよこすモーー!!」

怪人モクモクラウンがガスを撒き散らしながら迫ってきた


「もうバレたか、飛ぶぞ」


二人を抱えて飛行するアレリア。

しかしまだ空中での制御には慣れておらず、迫りくるガスを紙一重でかわしていく。


「……まずいな。このままでは押し込まれる」


進路を変えた先すでに待ち伏せるようにガスが充満していた。


「ぐっ!」


急旋回は間に合わない。瞬間、アレリアは決断する。


「陽翔!チュチュ!クナギ!つばきを頼む!」


その叫びとともに、陽翔とつばきを強く建物の窓へと突き飛ばす。

ガラスが砕け散り、二人は室内へ転がり込む。


「うわっ……っ! ぐっ、いってて……」

必死に身を翻し、陽翔はつばきを抱きかかえるように受け止める。

「つばきちゃん、大丈夫か!?」


「ん……陽翔くん……」

つばきは辛うじて意識を保っていた。


一方その背後で。

アレリアは止まりきれず、ガスの渦中へと突っ込んでいった。


「アレリアさん!!」

陽翔が窓越しに叫ぶ。


チュチュとクナギも駆け寄り決意する。


「……僕達が行くのだ!」


「大丈夫なのか?」

陽翔が心配そうにチュチュとクナギに問う。


「息を止めていくのだ!」


「我々は10分くらいなら余裕ですぞ!!」


「すごいな!頼む!」


陽翔の声に、二匹はうなずくと迷わず宙へ飛び出した。

ガスの渦の中へアレリアを救うために。


(アレリアー!どこなのだ!?)

(チュチュ!見ろ、あそこだ!)


ガスが徐々に晴れていく中、シルエットが浮かび上がる。

背中を向け、肩を小刻みに震わせるアレリアの姿だった。


(アレリア!無事なのだ!?)


肩を叩いた瞬間――


「きゃーー!!やだやだやだぁぁ!!」


凄まじい速度でこちらから逃げ出すアレリア。

そのあまりの豹変にチュチュとクナギは唖然と立ち尽くす。


一方、遠くからその光景を窓越しに眺めていた陽翔。

「アレリアさん……チュチュ、クナギ……クソッ!俺が余計なことを!」


そう呟いた直後――。


ドンッ! 勢いよくドアが開き、

「陽翔ぉーー!!助けてえぇぇぇ!!怖いーーー!!」

涙をぽろぽろ流しながら、少女のように駆け寄ってくるアレリア。


「……え、アレ……アレリアさん!?」


「もう戦うのはいやぁぁ!!私、帰りたい!!ガロスとセリアとコーに会いたいよぉぉ!!うわーーん!!」

アレリアは陽翔の胸に飛び込み、しがみついてわんわん泣きじゃくる。


「アレリアーー!待つのだ!!」

「陽翔殿の方へ行かれましたぞ!!」

必死に追いかけてきたチュチュとクナギが部屋へ飛び込んでくる。


そこで二匹が見たものは地獄絵図。


床に座り込み、ひたすら自己否定に沈むつばき。

「私……今日で魔法少女卒業だわ……これからは地味に生きてこ……」


その隣では、アレリアが少女のように泣きながら訴える。

「チュチュ!私、頑張ったんだよ!?怖かったんだよ!?褒めてよぉぉ!!」


「地獄なのだ……」

「そのとうりだな…」


「あ……あわ……なんてこと……」


この世界で唯一戦える二人が戦闘不能。

陽翔は目の前の光景にパニックを起こし、頭を抱えた。


外では、モクモクラウンが街中にガスをばらまきながら、魔法少女たちを探していた。

その影響で人々は次々と性格を変えられていく。


手錠を振り回す警官は叫ぶ。

「おらぁ!てめぇら全員逮捕だ!」


ネクタイを緩めたサラリーマンは歩道に寝転び、

「仕事だる〜……昼寝しよ……」


逆に善行に燃えるチンピラは、せっせとゴミを拾いながら。

「街をきれいにしねぇとな、俺がやらなきゃ!」


街全体が、奇妙な混乱の渦に包まれていた。


その様子を窓越しに眺めることしかできない陽翔。

「どうしよう……君たち、何か解決方法はないかな?」


うーん……と頭を抱えるチュチュとクナギ。

やがて、チュチュがパッと顔を上げた。


「そうなのだ!ガスなら薬局で酸素スプレーを持ってくるのだ!

それに僕たちの解呪魔法を込めて吸わせれば、正気に戻せるはずなのだ!」


クナギも大きく頷き、表情を明るくする。

「なるほど、チュチュ!それは妙案ですな!」


「じゃあ、早速取りに行くのだ!行くぞ、クナギ!」

「承知!」


二匹は勢いよく部屋を飛び出していった。


残されたのは、陽翔と……力なく座り込むつばきとアレリア。

つばきは相変わらず落ち込んだまま、か細い声で呟く。


「……私、もう役立たずだわ……魔法少女なんて、私には向いてないのよ……」


陽翔はそんなつばきを見て、胸が締めつけられるのを感じていた。


すると横から、涙で赤くなった目をしたアレリアが声をかけてきた。


「ねぇ、陽翔……私、孤児院で育ったの…」


「えっ……そうなんですか?」


「そこでは、沢山の大人に期待されてて…何年も

皆のために頑張ってきたの……」

「でもね、どれだけ頑張っても世界は全然良くならなかった……もう嫌だ……」


正直、陽翔にはその言葉の重さを完全に理解することはできなかった。

だが、アレリアという存在が背負ってきたものの大きさを実感する。


アレリアはさらに涙声で続けた。

「私だって……みんなみたいにキラキラした服着たい。友達と美味しい物食べたい。神様でもないのに、皆が私を称えてくる……そんなの、もう疲れたのに……」


初めて聞く、アレリアの弱音。


陽翔はまっすぐ彼女の瞳を見て、言葉を選びながら告げた。

「アレリアさん……貴方がどんな世界で辛い思いをしてきたのか、俺には想像しきれません。

でも……俺は、アレリアさんにひとりの女性として、ひとつの人生を歩んでほしいです。ここまで本当に、よく頑張ったんですね……お疲れ様でした!」


その言葉に、アレリアは堪えきれず嗚咽する。

「うわぁああん!……そんなの、初めて言われたよ!陽翔……優しいんだ!」


次に陽翔は、うなだれるつばきの前にしゃがみ込む。

「つばきちゃん……君はダメなんかじゃない。

あの時は助けたけど、それ以上に俺を助けてくれたのは間違いなく君だ。ありがとう」


「陽翔くん……私を……励ましてくれるんだ……」

つばきの瞳に、かすかに光が戻っていく。


その時。


「プハァ!急ぐのだー!」

「見つかりましたぞ!まずい!ぜぇ…ぜぇ」


チュチュとクナギが酸素スプレーを抱えて戻ってきた。

だがすでに、追跡していたモクモクラウンが迫ってきていた。


「スモモモ!もう逃がさないモー!」


「大変なのだ!すぐそこまで来ているのだ!」


陽翔は振り返り、深く息を吸った。

「……俺が時間を稼ぐ!二人は頼む!」


そう言うと、近くにあった古い箒を手に取り、タオルで口元を固く縛った。


「大丈夫かのだ?」


「息を止めるさ……二人に任せっぱなしじゃダメだ。俺が責任を取る!」


強く息を吸い込み、口元を覆ったタオルを握りしめる。

陽翔は一気に部屋を飛び出し、建物の近くで待ち受けていたモクモクラウンに向かって箒を振り下ろした。


ザシュッ!


怪人の体が切り裂かれる――が、その断面からすぐに煙が渦を巻き、元の姿へと戻っていく。


「スモモ!そんな攻撃、無駄だモー!」


(わかってる……でも、できるだけ時間を稼ぐんだ!)


必死に箒を振り回す陽翔。

だが、次第に肺が焼けるように苦しくなり、視界が滲む。


(息が……もう……限界だ……)


膝が崩れ落ちそうになったその瞬間――


「アンガー☆バインド!!」


眩い光の網が空間を走り、モクモクラウンの体を縛り上げた。


「モモモ!? な、なんだこれは!?」


その場に倒れ込む陽翔の前に、声が響く。


「陽翔……命がけでよく頑張ってくれた。ありがとう」


「私達をここまで苦しめておいて……ただじゃ済まさないわよ!」


煙の中から姿を現したのは、怪人の術から復活した二人の魔法少女――アレリアとつばき。


「間に合ったのだ! 陽翔くんのおかげなのだ!」

「つばき様が戻られましたぞ!」


「ゲ、ゲゲゲ……これはまずいモー!」


動きを止め、形勢逆転する魔法少女達


「つばき、一斉に叩き込むぞ!」


「わかってるわよ!百倍にして返してやるんだから!」


拘束されたままのモクモクラウンに、二人の必殺が放たれる。


「ラブリー☆ファイヤー!!」

「アングリー☆ビーム!!」


二つの光が絡み合い、より強大な一条の輝きとなって怪人を呑み込む。


「モーー!ヤダァァァーーー!」


チュドーーーン!!


爆発音と共に、モクモクラウンは四散し、ポトリとドールが落ちてきた。

同時に町を覆っていたガスも霧散し、人々の姿も元に戻っていく。


「ぶはぁっ……!危なかった……」

陽翔は荒く息を吐き、二人を見て深く頭を下げた。

「二人とも、今回は俺のせいです。すみませんでした…」


しかし返ってきたのは、予想外の言葉だった。


「……尊厳を粉砕された気分だ……」

アレリアは虚ろな目で呟き、肩を落とす。


「私も……もうお嫁に行けないかもしれないわ……」

つばきは両手で顔を覆い、震えていた。


「ちょっと今は、そっとしておいてほしいのだ……」

「全くもって同感でございます……」


勝利の余韻はあるのに、どこか痛々しい空気だけが漂っていた。


少し時間も経ち、落ち着きを取り戻した二人。

つばきはそっと口を開いた。


「つばきちゃん、いつも本当にありがとうね」


「い、いいのよ!陽翔くんが無事ならそれで……! あ、あの、私…違うから!あのと操られてただけだから!私、帰るから!行くよ、クナギ!」


照れ隠しするように早口で言い残し、つばきとクナギは足早にその場を去っていった。


残されたのは、アレリアと陽翔。

アレリアはモクモクラウンのドールを握りしめていた。


わずかな静寂のあと、陽翔が意を決したように口を開く。


「その……アレリアさん」


「……陽翔。さっきは、私の弱音を聞いてくれてありがとう」


「いえ……そんな。アレリアさんも大変なんだなって、思っただけです」


「そうだな。私も結局は人間だからな。……だが、吐き出すのはこれっきりにしておこう」

アレリアは小さく息を吐き、背筋を伸ばす。


「ははは……前向きですね」


「前向きでなければ、世界は救えないからな」


「世界って……アレリアさんの世界のこと?それとも、この世界のこと?」


「どちらもだ。そして……ひよりのことだが、安心しろ。必ず帰ってくる」


「はい!俺はいつまでも、ひよりを待ってます!」

陽翔は強く頷き、握り拳を作る。


アレリアは夜空を仰ぎ、胸の奥で静かに誓った。

(この頻度で怪人が現れるのなら……きっと、帰れる日もそう遠くはないはず。

ひより……もし会えたら、一度は必ずお詫びをさせてくれ)


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