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第13話 アレリアドキドキの女子会!戦場はショッピングモール!?



休日。

つばきの熱もすっかり下がり、朝の光がカーテンの隙間から差し込む。時計の針は午前8時を少し過ぎていた。


「ふぁ〜……久しぶりの早起き」


まだ半分眠たげな声を漏らすつばき。

クナギが、穏やかに一礼する。


「おはようございます、つばき様。本日はいつもよりお早いお目覚めで」


「でも……ねむい……やっぱり二度寝しようかな」


そう言いながら、ふらふらと何故かアレリアの部屋へ向かう。


ガチャ。


「ごきげんよ〜。朝ごはん、食べるの?」


ドアを開けると、アレリアは椅子に腰掛け、分厚い本を読んでいた。視線だけこちらに向け、淡々とした声で続ける。


「つばきか。今日もずいぶん遅い起床だな。平和な証拠だ」


「アンタと比べないでよ……今日は何時に起きたの?」


すると、ベッド脇からチュチュがひょいっと顔を出した。


「午前5時なのだ! 起きたらすぐトレーニングルームに行ったのだ!」


アレリアは軽く頷く。

「あそこはいい。時間を選ばず利用できる」


「……何もない日でもトレーニングしてるのね」

つばきが少し引き気味に尋ねる。


「戦士たるもの、訓練は欠かせない」


「もしかして……ずっとそうだったの?」


「そうだな。幼少期から今に至るまで、魔王を討つことだけに力を注いできた」


「……アレリアって25歳なんだよね? もっとこう……女子っぽいこと、してこなかったの? スイーツとか、オシャレとか、

女子トークとか……そして、れ、恋愛も…」


「この世界の周期はどうか知らないが、そのくらいの年齢だな。生憎、暇を楽しむ状況ではなかったが…まぁ興味はないな」


つばきはニヤリと笑い、手をパンと叩く。 


「……今日、どうせ暇でしょ?10時までに支度しなさい!

この世界の女子ってやつを教えてあげるわ! 感謝してよね!」


そう言い残し、ドタドタと部屋を飛び出すつばき。


バタン。


アレリアは首を傾げながら、静かに本を閉じた。


「女子とは、一体……」


10時ちょうど。

コンコン、と軽やかなノック音が部屋に響く。


「支度終わった? 行くわよ」


扉を開けると、アレリアはまっすぐ立っていた。

背筋を強く伸ばし、まるで出陣前の騎士のような姿勢だ。


「大丈夫だ。よろしく頼む」


そこへ、チュチュが申し訳なさそうにいう。

「あの〜、つばきちゃん……新しい服をあげて欲しいのだ」


「服? ……あっ」


目に飛び込んできたのは、

上下真っ黒のトレーニング用ジャージ。


「あー……はいはい……」

(そこからだったか)


アレリアは少し首をかしげる。

「服装が間違っているのか?

 この支給された服は素晴らしいぞ。動きやすさが格別だ」


「そういう事じゃないのだ」


つばきは腰に手を当て、強く言う。


「これから行くのは訓練場じゃないの!

オシャレな場所よ。服見せる仕様に着替えるの!」


「見せる仕様とは一体」

アレリアの眉が、わずかに寄った。


ーーーー


つばきが用意した服に着替えるアレリア

淡いクリーム色のワンピースだった。

胸元には小さなリボン、裾には繊細なレースの縁取り。

生地はさらりと柔らかく、まるでお嬢様のような、上品な一着だ。


「やはり……これは落ち着かないな」

アレリアはぎこちなく裾を摘み、視線を泳がせる。


「つべこべ言わない! 郷に入っては郷に従え……だわ!」


「ふむ、ここではそういう規則というのなら守ることにしよう」

真顔でうなずくアレリア。そのかしこまった態度に、チュチュが耳を垂らす。


「か、かたっ苦しいのだ……」


家を出て、並んで町へと歩く二人。


「女子会といえば………ここよ!」

つばきが胸を張って案内したのは、巨大なショッピングモールだった。


「ずいぶん大きいな……ここで女子会というものをやるのか?」

「いや、その……今日はとりあえず私に黙って従いなさい!」


半ば強引に連れて行かれた先は、

きらびやかなコスメコーナー。


「あら、これはこれはつばきお嬢様。いつもお世話になっております」


「ごきげんよう。今日はお願いがあって来たの。

あの人に化粧をしてあげてもいいかしら?」


「まぁ! これはまた……お美しい方ですね。腕が鳴りますわ」


そうしてアレリアは椅子に座らされ、手際よく化粧が施されていく。

数分後、鏡に映った自分の顔を見て、アレリアは目を瞬かせた。


「……まるで、私じゃないみたいだな」


アレリアの変わり様を見て動揺するつばき


「……! ま、まぁ……まぁじゃない?」

(アレリア……! めちゃくちゃいいじゃない!! なんで今まで自分の魅力に気づかなかったの? ありえない!)


「化粧か……任務がない時にセリアがしていたが、私には無縁だと思っていた」


「次はここよ!」


つばきが意気揚々と案内した先は、衣類コーナー。


「ふふ……お姉ちゃんの服じゃバリエーションがなさすぎるわ。今日は私がオリジナルを選んであげる!」


やけに気合いの入るつばきに腕を引かれ、そのまま更衣室へ。

トップス、ボトムス、髪型が…

しばらくの間、つばきの着せ替え人形と化すことになる。


「女子会……この疲労感……まるで拷問だな……」


「ほっほっほ……楽しくなってきた!」


珍しくぐったりとするアレリアの様子に、つばきは満足げな笑みを浮かべた。


「最後はやっぱりここね!

私のイチオシスイーツがあるカフェよ!」


つばきが案内したのは、

屋上にあるより上品な雰囲気のカフェ。

目の前に広がる街並みと空の境界線に、アレリアは思わず目を見張る。


「……ここは、いい景色だな」

先ほどまでの疲れが、風と共に溶けていくようだった。


「感謝しなさい。私が無理を言って、今日は貸し切りにしてもらったのよ。さあ、スイーツスイーツ!」


テーブルを囲むのは、アレリアとつばき、そしてチュチュとクナギ。

つばきは巨大なデラックスパフェを、アレリアはブラックコーヒーとショートケーキを。

チュチュとクナギは仲良くシュークリームを前にしている。


「ん〜っ! ここのパフェはやっぱり最高ね〜!」

頬を緩めてパフェを頬張るつばきを横目に、アレリアはショートケーキを前に小さく首をかしげる。


「つばきの言うままに頼んでしまったが……これは味の想像がつかん。チュチュ、大丈夫なのか?」


「大丈夫なのだ! つばきちゃんを信じるのだ!」


覚悟を決め、フォークで一口。


「……! う、美味い! こんな味は初めてだ!」


その顔は、戦場で見せる鋭さとはまるで別人の、

無垢な明るい表情だった。


「当たり前よ! なんたって私のオススメなんだから!」


「初めてとはいえ……疑ってすまない。菓子にこれほどの工夫があるとは思わなかった」


ショッピングモールで何もかもに新鮮な反応を見せるアレリアに、つばきはふと胸の奥に切なさを覚える。

この人、こういう日常をほとんど知らないんだと。


「じ、女子会の最終項目よ……それは……女子トーク!」


「女子トーク……か。私もセリアと作戦の打ち合わせなら――」


「ちがーーーう!!もうこのやりとり、しつこい!!

そうじゃなくて、もっとこう……日常的なやつ!」


「そ、そうか……そうなのか、チュチュ?」


「ひよりもそうしてたのだ!」


グッドサインをアレリアに送るチュチュ


「……そうか」


いきなり、女子トークのメインテーマを踏み込むつばき。


「アレリアは……ずばり、その……こ、こ、恋人とかいたわけ? 

好きな人とか……」


その言葉に、アレリアはふっと目を伏せ、

遠い記憶を思い出す。


(恋人……セリアの恋人を救えなかった私に、恋をする資格などあるだろうか。セリアだけじゃない……救えなかった人たちにも、きっと家族や恋人、友がいたはず……)


さっきまでの笑顔が嘘のように消え、表情は硬くなる。


(あっ……これ、地雷踏んだ!?もしかして恋人が魔族に…

とか、そういうやつ…?あ〜、私のばか!)


アレリアは、申し訳なさそうに静かに答えた。


「朝にも話したが……生憎、生い立ちゆえ無縁だったものでな」


「そ、そう……」


空気が一瞬、重くなる。

するとアレリアがふいに口を開いた。


「つばき……君は、信じているものはあるか?

神とか、人物とか……」


突然の質問に戸惑うかと思いきや、つばきは即答する。


「……あるわ!私よ!私は私を信じてる!むしろ自分を他の何かに委ねるなんて絶対ありえない!」


「つばき様の言う通りでございます」

クナギがうなずく。


「……フフ」


アレリアの口元に再び笑みが戻る。


「やっぱり君は強いな……そして素敵だ。私もだ。自分を信じていなければ、誰も救えない」


「な、何よ急に……!ほんと変な質問……こんな女子会初めてだわ」


照れと困惑の入り混じった声を上げるつばき。


「今日は……本当に有意義だった。ありがとう。一生、忘れることはないだろう」


「女子会くらいで大げさよ!またすればいいじゃないの。

……なんなら付き合ってやらないこともないわよ!」


「そうだな。その時は、よろしく頼む」


食事を済ませた二人と二匹は、夕暮れ色に染まる街を背に帰路につこうとしていた。


その時…!


ピコピコピコピコ!


チュチュとクナギの胸元が反応する。


「怪人なのだ!」


アレリアは足を止め、視線を鋭く遠くのビル街へ向けた。


「わかった、すぐに着替える」


「必要ないのだ!」


「変身すれば魔法少女の服になり、変身解除すれば着ていた服に戻るのだ!」


チュチュが小さな前足をぶんぶん振る。


「……相変わらず都合のいい魔術だな。だが助かる」



「アレリア、チュチュ! 何ぐだぐだしているの! 行くわよ!」


つばきが先に駆け出す。


「……そうだな!」


アレリアも足を踏み出し、チュチュと並んで走る。


夕焼けに染まる街を、二人の魔法少女が駆け抜ける。

トーキョーの平和を守るため、今日もまた。


「「変身!」」




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