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第11話 初変身!新ラブリー☆ガール、筋肉を打ち砕け!


アレリアがこの世界に転移してから、数週間が経った。

つばきは怪人との戦いに奮闘し、アレリアはその傍らでサポートに徹していた。


「はぁ〜……なんで私、こんなに頑張ってるのよ……」 

机に突っ伏しながら愚痴るつばき。


「つばき様、お疲れ様でございますぞ」


「でもおかげでドールは58体まで集まってるのだ!順調なのだ!」


「そうだな。つばきには本当に助かっている」


「……あ、あんたたち……私に一生感謝しなさいよね……」


ふらりと身体が揺れる。


「あ、あれ……?」


バタン、と机に倒れ込む。


「つばき!どうした、大丈夫か!」


ーーーー


「風邪でございます。しばらくは安静ですな」

布団の中で眠るつばきを見ながら、クナギが静かに言った。


「つばきちゃん……頑張りすぎたのだ」


「私の責任だ、申し訳ない。余計な心労を与えてしまった」


「いえ……これは少し内緒ですが」


声を潜め、アレリアの耳元で続ける。


「貴方がここに来てから、つばき様……少し楽しそうでいらっしゃって。ひより殿の件もあるのであまり大きな声では言えませんが、多分、思ったより迷惑ではないかと」


「なんでなのだ?」


「流石にそれは思い違いだろう」


「ええ、あくまで私の主観ですので」


つばきの看病も終え、後はクナギとメイドに任せる。


「この前、つばきに“トレーニングルーム”というものを教えてもらった。身体を効率的に鍛えられるらしい。興味深い」


「それ以上鍛えてどうするのだ」


「君の世界では必要ないかもしれないが、帰ったときに身体が鈍っていたら戦力にならん」


並んで歩くアレリアとチュチュ。

その前方から、見覚えのある少年がやって来た。


「あっ!あの時の……確か、アレリアさん!」


「む、そういう君は……天城陽翔、だったな」


「なのだ!」


お互いにつばきを助けに向かった同士。

馴染むのに時間はかからなかった。


「そうだチュチュ……聞きたいことがあって。ひよりって、本当に海外留学なのか?」


「そ……そう、なのだ!」


「私も君に聞きたいことがある。少し時間あるか?」


ーーーー


喫茶店。

昼下がりの柔らかな陽光が窓から差し込み、カップから立ちのぼる湯気が揺れている。

向かい合って座るアレリアと陽翔。


「あの時は突然援護してくれたな。その節は感謝する」


「いえ……俺は最初、あまりにも超スピードでチュチュとクナギを掴んで走るから……正直、怪人かと思ってました」


「なるほど、それと君は、つばきやひよりの知り合いなのか?」


「ひよりとは同じ学校です。つばきちゃんは……昔、交通事故に遭いそうになったところを俺が助けて、それ以来の知り合いですね。

あと、俺……他の人と違って、使い魔が見えるんですよ。

気になって追いかけてたら魔法少女の戦いを知ってしまった、ただの中学生です」


「……誰も気にしていなかったから、てっきり皆に見えているものだと思っていた」


「あっ……説明するの忘れてたのだ」



「そういえば……俺からも聞きたいんですけど。貴方、何者なんですか?

チュチュはいつもひよりと一緒にいるはずなのに、なんで貴方といるんです?」


「……え、えっと…」


「黙っていても仕方ないな。実は――」


その瞬間――


ピコピコピコピコ!

チュチュの胸元が激しく点滅する。


「キャー!怪人だー!」

外から響く悲鳴と騒めき。


「来たか!ここの怪人の出現頻度は、私の世界の魔族にも劣らぬな…」


「とにかく行くのだ!」


「ええっ!? ちょ、ちょっと待って!」


ーーーー


轟音とともに、トレーニングルームの壁をぶち破って現れたのは体長3メートル、全身筋肉の塊、まるでプロレスラーのような怪人その名もマッスルムーキン。


「ムッキーーン! ここは我々が乗っ取った! 貧弱なお前らはとっとと出ていけぇ!」


背後には、同じくムキムキの部下が4人、腕を組んで睨みを利かせている。


「この星のトレーニングルーム、全部オレのものにしてやるぜ!」


アレリアは人混みをかき分け、一歩前へ。


「……あれか、今回の怪人は」


「今日はとびきりのピンチなのだ! つばきちゃんも熱でダウン中…アレリア! 今日こそ――って、あれ?」


ゴォォォ!

風を切って、アレリアが一気に間合いを詰める。


「ふっ!」


強靭な加速からの怪人の腹部へ渾身の正拳突き!


ドガッ!!


…しかし


「ぐおぉっ!!…いいね…いいね!いいね!!

君、鍛えてるねぇ〜!」


「何だと!?」


ガシィッ!

怪人の巨大な手がアレリアの腕をがっちりと掴み込む。


「こんな細腕でそのパワー…気に入った!とりあえず、一緒にプロテイン飲もうぜ!」


「くっ…! 離せ!」


バキィッ!


腰の回転を最大限に生かした回し蹴りが、怪人の顔面に炸裂する。


「おーう…ナイスキック!だが、筋肉が足りてなーい!

スクワット100万回だ!」


ドゴォッ!!

怪人の拳がカウンターでアレリアの腹部にめり込む。


「ぐっ…!!」


息を呑む間もなく、その衝撃でアレリアの身体が宙を舞い


ドガーンッ!

遥か後方のビルの窓へ突っ込み、粉塵と破片が辺りに飛び散る。


「アレリアーー! 今行くのだ!」


「あ、アレリアさん!」


拳を握りしめ、唇を噛む陽翔。


「くそっ…アレリアさんの力が通じない…どうすれば…!」



人気のないビルの瓦礫の中から、アレリアがゆっくりと身を起こす。胸元を締め付ける鈍い痛み。


「ぐっ……肋骨……折れたか?」

「私の滲身術式が効かないとは……肉体だけの強さなら、あれは幹部にも匹敵する……」


羽音が駆け寄ってくる。


「アレリア〜! 大丈夫かのだ!?」


「ああ……まだ戦闘は継続できる。だが……せめて解放と結界が使えたらいくらかマシだったな…」


わずかに息を吐き、決意をチュチュへ向ける。


「……チュチュ、仕方ない。変身だ」


「!…わ、分かったのだ! しかし呪文、覚えているかのだ?」


「一度見た詠唱と動きを再現できなければ、勇者は務まらん」


「わかったのだ! これを……!」


ふわりとチュチュの体が光を放つ。

その手の中に、純白の光をまとったアレリアの聖剣が現れる。


「これに呪文を込めたのだ……あとは、頼むのだ!」


アレリアは剣を受け取り、手の中で軽く回す。


「……君はつくづく優秀だな。よし…やるぞ」


アレリアは聖剣を胸の前に構え、目を閉じる。

額から頬へと淡い光が走り、剣先に集まってゆく。


「……変身!」


聖剣からピンク色の光が弾け、彼女の全身を包み込む。


「ミラクル・ラブリー・チェンジっ☆!」


背後に現れたハートの輪郭が輝きながら回転し、花びらのような光片が舞う。

長い髪がふわりと揺れ、ひよりの衣装をベースにした、

しかし胸元やスカートに大人びた装飾が施された魔法少女服へと形を変える。


アレリア「愛と希望をこの手に!

ハートきらめくピンクの光!

ラブリー☆ガール、アレリア!」


最後に剣を掲げてポーズを決めるアレリア。


「やったのだ! 一発で成功したのだ!」


「……これは凄い! 力が湧いてくるぞ!」


元々強大であった魔力が更に増し大気を歪むようにも見え

今まで以上の練り上げを帯びていた。


「さて、討伐せねば」


――同時刻。


ふらふらと空を飛び、怪人のいる場所へ向かうつばき。


「暑い〜……しんどい〜……」


額には汗、顔はほんのり赤い。


「つばき様、無理は禁物ですぞ」


「だって……私が倒さないとドール化できないし……あ、いた……」

視線の先に、暴れる巨大な怪人と、

その周囲で逃げ惑う人々と一人の少年。


「……って、陽翔くんも!」


「く……くそ、せめてつばきちゃんが来るまで……」

腕を広げて人々をかばおうとするが、その顔には焦りが滲んでいる。


「お、おい! そこの――」


ドガァンッ!


怪人の目の前に、強烈な衝撃と共に何者かが強く着地した。

舞い上がる砂煙の中から、

ピンクの光を纏った魔法少女…?が現れる。


「私は魔王討伐隊、戦闘員のアレリアだ。お前に決闘を申し込む……名を名乗れ!」


「……は? えっと……マッスルムーキンだ……」


(恐らく……これも必要工程なのだろう)


「え……? 誰……?アレリアさん?」


「なんと……これは……」


「えええぇ……魔法少女じゃない……何もかも……」


「自己紹介は必要ないのだ」


「何!? そうなのか!」


「ラブリー☆ガールみたいな格好しやがって!違和感だらけなんだよ!」


吠えると同時に、鍛え上げられた腕がアレリアの腹部へと突き出される。


ドガッ!!


が、アレリアは一歩も引かない。


「……効かないな」


低く呟くと、即座にカウンター。


腰を沈め、全身のバネを使った拳がマッスルムーキンの腹部を抉った。


ゴッッ!!!


鈍い衝撃音とともに怪人の巨体が一瞬震え、目が見開かれる。


「おおっ!? おぐ……オエッ……なんだこのパワーは……」

たまらず後ずさりしながら、咆哮を上げる。


「おい! お前ら! やれ!」


「ムキムキッ! ムキムキッ!」


四方から部下の怪人たちが跳びかかってくる。

チャキ……

パッ……!!


瞬間、アレリアの聖剣が微かに光を反射した。

次の刹那、目にも留まらぬ斬撃が連続で走る。


チュドドドドーンッ!


部下たちの怪人は切断され次々と爆発。


「これで一対一だな……

お前に合わせて拳で戦ってやる。構えろ」


「ぐっ……くそ……マジ・ムーキンだァ!!」


全身の筋肉が膨れ上がり、血管が浮き上がる。

肉の鎧が倍の厚みを持ち、巨体がさらに大きく影を落とした。

その一歩ごとにアスファルトがひび割れ、地響きが周囲を揺らす。


「喰らえぇっ!! ムキムキマジパンチ!!」


ドゴォッッ!!!

鍛え上げられた拳がアレリアの顔面を直撃。

衝撃波が周囲に走り、足元のアスファルトが深くひび割れ、放射状に割れ目が広がっていく。


アレリアは表情一つ変えず呟く。


「……それが本気か。ならば私も本気で行ってやろう」


ドゴッ!


鋭いジャブがマッスルムーキンの顔面を正確に打ち抜く。


「がっ!」


次の瞬間、止まらない。

左右の拳が嵐のように襲いかかり、速度はさらに増していく。


ドゴゴゴゴゴゴゴ!!!

拳が残像を描き、音すら置き去りにする連打。


「おごぉごごごごごご!」

耐える間もなく押し込まれ、よろめく巨体。


「おおおおおお!!!」

全身の力を絞り、渾身のアッパーカットを突き上げる。


ゴォンッッ!!!

マッスルムーキンの巨体が宙に浮き、天高く舞い上がる。


「タンパク質が……足りなかったぁぁ〜!」


ドカーーーーーーンッ!!!


眩い爆発が夜空を裂き、衝撃波が周囲の窓ガラスを震わせた。

煙の中に立つアレリアのシルエットだけが、ゆっくりと姿を現す。


「やったのだ!色々とおかしいけど、とにかく怪人を倒したのだ!」


「……これで、私ひとりでも怪人討伐ができると証明できたな」


「アレリアさんが……魔法少女……!?」


ポトッ

空から、マッスルムーキンがドール化して落ちてくる。


「これか……チュチュ」


「そうなのだ!魔法少女の力で倒したから、こうしてドールになるのだ!」


(いや、ほぼ素手で倒してたけど……)

陽翔は怖くて心の中でツッコむのが精一杯だった。


背後から、つばきとクナギがゆっくりと降り立つ。


「……アレリア……チュチュと……契約したのね……」


「つばき!無茶をするな!」


ふらつくつばきを、お姫様抱っこで抱き上げるアレリア。


「つばきちゃん……! すごい熱……頑張ってるね…」


「君は本当に強い子だ……私よりもな」


「全くもって、その通りでございます……」


しんどい中、戦闘に参加しようとしてくれたつばき

それを労うようにアレリアと陽翔は称える。


(おおおおお!?陽翔くんに褒められ、アレリアにお姫様抱っこ……!無理して来た甲斐があったわ〜……ほっほっほ……でも……もう限界……)


キュー……

そのままダウンするつばき。


「あ……すみませんアレリアさん。結局、あなたは何者なんですか? なんで……魔法少女になれるんです?」


「私にも、魔法少女に似た能力があってな。

理由あって、ひよりの代わりに魔法少女を務めている。

……ひよりは今、私の国で旅をしている」


「な、なるほど……?じゃあ、ひよりは本当に海外に……?」


「ああ……だが、とても……遠い場所にな」


「とりあえず、良かったです。俺はひよりに逢えなくて…

とにかく…ありがとうございます!」


(……今は全てを話せない。だがいつか……この子には真実を伝えよう。その時が来るまでは……)


初めて魔法少女として戦ったアレリアは、複雑な想いを胸に隠しながら、静かに歩き出した。



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