第5話 すれ違う軌道、交わる赤面
(……間違いない。昨日の夜の仮説は揺るぎない)
昼前、トイレの個室を出たあかりは、鼻息荒く廊下を闊歩した。
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昼休み。
教室に戻った彼女は、やけに堂々と弁当を広げる。
(もう“肛門=宇宙”は確定事項! ふふふ……!)
カバンの横目チェックも怠らない。
だがチャックの隙間から、禁書の背表紙がこんにちは。
「……っ!? やば!」
そこへ現れる東雲光。
「お、また本か。さすが宇宙オタク!」
(やばっ!? 見られた!?)
慌てて押し込むあかり。
だが光は気にせずに笑った。
「やっぱり宇宙好きなんだな。星の本、持ち歩いてるなんて」
(……宇宙? 本? あ、医学書を宇宙本と勘違いしてる!?)
助かったと同時に、墓穴を掘らないようにあいまいに笑う。
「そ、そうそう! 宇宙……だいすき……」
「だよなー! だって宇宙ってロマンだろ。
爆発で始まったのに、それが終わりじゃなく“始まり”なんだからさ」
(ちょ、ちょっと待って! それ昨夜の“小さなビッグバン”と同じ!?)
あかりの胸が跳ねる。
思わず机を叩いて身を乗り出した。
「そ、そうなの! 出すって、むしろ始まりなんだよ!!」
「……お、おう? なんか熱くね?」
光は苦笑しつつも話を続ける。
「俺さ、最近思うんだ。宇宙って“入口であり出口”だなって。
ブラックホールとホワイトホール、表裏一体でさ」
(……入口であり出口!? 肛門じゃん!! 完全に肛門じゃん!!)
顔を真っ赤にして震えるあかり。
光は気づかず夢中で語る。
「もし俺たちも宇宙の一部なら、体のどっかに“宇宙”が宿ってるのかもな」
「~~~~っっ!!!」
(やめて! それ絶対肛門でしょ!! 私の頭ではもうそうとしか聞こえないの!!)
ついに立ち上がりかけたあかりに、光が首をかしげる。
「……あかり? 顔赤いけど、大丈夫か? 宇宙の話してただけだぞ?」
「な、なんでもないからっ!!」
叫ぶように返し、席に崩れ落ちるあかり。
机に突っ伏しながら、心臓が爆発しそうに鳴っていた。
(……違う、宇宙の話。宇宙……わかってるのに……!
どうして全部、肛門宇宙論に直結しちゃうの私~~!?)




