表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/30

第15話 美咲のラブ・マニピュレーション

 昼休み。教室の窓辺でパンをかじるあかりの横に、美咲がひょいと顔をのぞかせた。


「ねぇあかり。最近、光といい感じじゃない?」

「えっ!?そ、そんなことないよ!?全然そんなのじゃないからっ!」


 あかりは手をばたつかせて否定するが、顔は明らかに真っ赤だ。

 美咲は心の中でニヤリと笑う。


(ふふん、このまま放っておいたら妄想エンジンが空回りするだけ……。ここは私が“プロデュース”してやらないと!)


 美咲は昼休みが終わると同時に、次の作戦を練った。



 放課後、廊下で立ち話をしていた光に、美咲はにっこりと声をかける。


「ねぇ光。あかりが図書室でちょっと困ってるみたい。手伝ってあげて」

「え、そうなのか?」

 光は素直に頷き、図書室へ向かう。



 その頃、図書室にいるあかりは机いっぱいにノートを広げ、悶々としていた。


(肛門皺は放射状=太陽光線……うーん、この仮説をどう展開するか……)


 と、そのとき――


「おーい、あかり」


「ひゃああっ!?」

 光の声に驚いて跳ね上がるあかり。

 ノートがぐちゃっとなりかけるのを必死で押さえる。


「美咲から聞いたけど、困ってるんだろ?」

「え、えええ!?あ、ああ!そうそう!すっごく困ってて、手伝ってください!」


 言葉は空回りするが、光は近くの席に座った。

 その距離、わずか数十センチ。


(ち、近いっ!これはもう重力双子星級!私と光が潮汐力で引き裂かれ、最終的には合体超新星爆発ぅぅぅ!!)


 光の指がノートに触れるたび、あかりの心臓は跳ね上がる。

 もしここで万有引力が働いたら――自分の存在はHawking radiationになって消え去るのでは……!?


「……あかり、顔すごいことになってるぞ」

「な、なんでもないですぅぅぅ!!」


 パタパタとノートで顔をあおぐあかりの様子を、廊下から覗く美咲は腕を組んでクスクス笑った。


(よし、仕掛けは効いてる。あとは勝手に妄想で燃え上がって赤面するだけ……最高のエンタメ♪)



 数分後、あかりは決意を固める。


「よしっ!決めた……!」

「えっ?何を?」光が首をかしげる。


「私……この宇宙における“愛の重力方程式”を証明するっ!!」


 図書室にしんとした沈黙が落ちる。

 あかりの瞳は宇宙の神秘を見つめる光のように輝いていた。


(世界ランク1位のアホ、ここに爆誕……!!)


 廊下の向こうで観察する美咲は、手帳を胸に押し付けて笑いを堪えた。

 冬の静かな午後、二人の間には、まだ測れない距離感と、勝手に膨張する妄想宇宙が広がっていた。



 こうして、あかりの妄想と光の無自覚ドキドキは、さらに加速していく。

 美咲の“ラブ・マニピュレーション”は完璧な成功を収めつつあり、次の一手でどんなブラックホール級の混乱が生まれるかは、まだ誰にも分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ