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ちっちゃい僕とパパ三人  作者: 橘可憐


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「シャルどうやって帰ってきたか教えてくれるか?」


朝食の席でエルムは努めて冷静にシャルに尋ねる。本来なら朝食を済ませてからじっくり聞いた方が良いのだろうが、エルムにはその我慢ができなかった。

そしてそれを誰も止めないところを見るとレヴィアスもキラルも同じ思いなのだと思われる。


「チョビと一緒にパッとして帰ってきた」


シャルはウサギ耳のように飾り切りされ焼かれたウインナーをフォークに突き刺しながら答える。


「そのパッってのを詳しく聞きたいんだがいつからそんな事できるようになったんだ」

「う~んと・・・。この前お漏らししそうになった時、気がついたらトイレに行けた」

「それからずっとそのパッっていうのをしてたのか?」


レヴィアスは絶えずシャルの気配を感知し追っていたのに気づけなかったのかと反省しながら確認する。

もっともシャルが寝静まった後はその限りでは無いので、気付かなかったとしたらその時かとも思う。


「ううん、それからしようと思ってもできなくてチョビと練習してた」

「って事は実践で成功したのは今日が初めてって事か」


エルムの口調が普段通りになったことに安心したのか、それともこれ以上の質問はないと判断したのか、シャルはフォークに突き刺したウインナーを口に入れる。


「だがあの場にそれほどの魔法が使われた形跡は無かった」


転移魔法はこの世界で使える者は何人も存在しない。レヴィアスの認識では多分レヴィアス達が契約する少女だけでは無いかと思っている。

その理由は転移魔法の術式を知り理解できる者が居ないという事と、理解できたとしても発動させるにはかなりの魔力量を必要とするからだ。


そもそもそんなに豊富な魔力量を持つ人間がこの世界に存在する訳がないと思っている。レヴィアスが契約する少女以外では。

だから例えばシャルがあの場で知らずとは言え転移魔法を使ったのだとしたら、当然かなりの魔力を使うことになりその残存魔力に気付かないレヴィアスではない。


「じゃあ魔法じゃ無いんじゃないかな」

「魔法じゃ無かったら何だと言うんだ」

「魔法じゃ無い不思議な力?」

「・・・」


キラルの脳天気な反応にレヴィアスは一瞬イラッとする。レヴィアスは納得できないことをそのままにはできない性質なので、キラルの追求しない態度を理解できないことがあるのだ。


「そんなことは今はどうでもいいだろう。それよりシャルそのパッっていうのは今後一切使うのは禁止だ」

「えっ、どうして!?」

「シャルの他にその力を使える人間はいない。万が一誰かに知られたらシャルは大変な目に遭うぞ」

「大変な目って?」


エルムはシャルが何処でも構わず転移を使い誰かの目に留まるのを危惧した。

それにいつも絶対に成功する保証も無い事も不安だった。

しかし大変な目に遭うをシャルにどう言えば分かって貰えるかとあれこれ考えを巡らせるが、上手い例が思いつかずに困り果てる。


「シャル。人間は自分とは違う者を簡単には受け入れられないんだ。だからみんなに避けられるようになり友達を作りづらくなるのは確かだな」


レヴィアスは周りの人間がシャルを奇異の目で見るのは我慢できないと考えた。

それに相手を子供で自分より弱者だと侮ると人間は何処までも残酷になれ、そこに集団心理でも働くと何をしても許されると思い上がる。

だからシャルに対して攻撃的になるバカなヤツらが増殖するのが簡単に想像できた。


もっと危惧するならば、シャルの転移の能力を利用しようと考えるヤツも出てくると思われる。

実際にレヴィアス達が契約する少女が転移を可能にした魔導具を錬成したが、その仕組みはいまだに解明されず少女がいなくなった今普及される事が無くなった。


なので転移に関する魔導具は各国のトップシークレットになっているが、逆に言えば解明でき転移の魔導具が作れれば確実な富が約束される。今でもどの国も目の色を変えて騒いでいるだろう。

その騒ぎの中シャルが転移を使えると知られれば、解明のために拘束してでも利用しようと考えるヤツも出てくるかも知れない。


しかしもしそんなことになったなら、迷わずに思い知らせてやるとも思っているが、とにかくシャルを危険な目には遭わせたくないのは確かだった。


「でも僕はそんなことで態度を変えるのは友達とは言わないと思うな。そんな友達シャルには必要ないよ。もしそういう子が居てもシャルは毅然として居なよ」


キラルはシャルの能力は隠す必要が無いと考えているようだった。それよりも付き合う人間を選んだ方が良いと気楽に思っているのだろう。


「何にしてもそのパッっていうのをちゃんとできるようになるまでこれからは私も一緒に練習する。だから私が大丈夫だと判断できるまでは私の許し無く使う事の無いように。これはシャルとチョビの安全のためだと理解してくれ」


レヴィアスはきっぱりとシャルに言い渡す。

その魔法じゃないかも知れない能力の解明とシャルの能力向上をレヴィアスは既に計画し始めていた。

万が一シャルの能力が誰かに知られても自衛できる位にはシャルの能力を高めておこうと。


「そうだな。安定して使えるようになるまでは禁止だな。俺もレヴィアスが教えるなら安心だ」

「レヴィアスとエルムがそう考えるなら仕方ないね。僕もシャルには安全に力を使って欲しいし。それよりご飯が冷めちゃったよ早く食べよう」

「うん!」


シャルは今度こそ安心して、すっかり冷めてちょっと堅くなったオムレツに取りかかるのだった。



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