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ちっちゃい僕とパパ三人  作者: 橘可憐


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「手伝うか?」


エルムは今までレヴィアスやキラルの個人行動に関して興味を持つことも無く何かを頼まれれば手伝ってはいたが、別段何かを深く考えた訳でもなくなんとなくそう口にしていた。


「大丈夫だ。これは私が受けた依頼だ。何かしたいのならそこでのびているヤツらを助けたらどうだ。見たところかなり訳ありみたいじゃないか。意外に面白いかも知れないぞ」


レヴィアスには珍しく少々饒舌に揶揄うように面白そうに語る。

エルムはレヴィアスに促され興味もなく一瞥を投げると、男二人だと思っていたが片方が女なのに気付く。


それに見れば女の方は安物のフード付きマントを羽織ってはいるがその下は高級そうな服装だ。きっと何処かのお嬢様なのだろう。

男の方は特別に身なりが良い訳ではないので、多分身分違いの恋愛の果ての駆け落ちだろうと簡単に推察できる。

そこからして下手に関われば面倒くさい案件なのは決定だ。


それにもう既に奪われたか何処かに落としたかは知らないが荷物を何も持たない手ぶら状態だ。

先行きの考えもなく一時の激情だけで行動した若い二人の、この先の行方はエルムにも容易く想像できる。


もっともこのお嬢様が金も無く苦労をいとわない生活ができるのなら少しは望みはあるかも知れないが、エルムには疲れ果て罵り合い責任を押しつけ合う二人の姿しか思い浮かばない。そんな人間を今まで嫌というほど見てきた。

思い通りに行かない結果を受け止められず、誰かのせい何かのせいにせずにはいられない悲しい人間達は山ほど居た。


それに何もかもを失ったこの二人が愛し合い慈しみ合いながら貧乏生活を乗り越える未来を願う気にもなれなかった。若さだけで行動できるのを羨ましいとも応援したいとも思えない。


寧ろ今は親の立場でこの二人の親の管理不行き届きを叱り飛ばしたい感情の方が大きいかも知れなかった。

自分達の取った行動の結果、命を失うかも知れない危険性がある事を教えられなかったのは明らかに親の責任だ。


そんな親に育てられた若い二人に下手に関わり、恩人扱いされ寄生された果てに破局されてはエルムも寝覚めが悪い。と言うか考えれば考えるほど胸くそ悪い結果しか見えなかった。


「やだよ、面倒くせぇ」


エルムが心底嫌そうに顔を顰める。


「フッ、お前には良い勉強になるかも知れんぞ」

「何がだよ」

「人間は予想外の事をする時もある。お前もロザリーにはいつも驚かされていただろう」


レヴィアスが珍しく契約している少女の名前を口にした事にエルムは驚いた。

少女が姿を消した事を三精霊の中で一番悲しんだのはレヴィアスだった。

シャルのお陰でどうにか生活をする気力は保てていたようだが、思い出すのも考えるのも辛いのか名前すら口にする事も無くなっていた。

だから必然的に三人の間で少女を話題にする事など今まで全く無くなっていた。


「ロザリーは別格だ。でなければ契約などしていない」

「そうだな」


レヴィアスはそれだけを言うと、薄らと微笑みを浮かべ軽く手を上げ五人の盗賊達を連れ何処かへと転移して行った。

今はこの程度の会話だとしてもレヴィアスの傷も少しは癒えたのかとエルムの心はなんとはなしに軽くなる。


エルムは比較的少女とは付き合いが浅いので多分傷も浅いが、レヴィアスやキラルの落胆振りを見ればあの時のショックと傷の深さは窺える。

だけどいずれもっと傷が癒え話ができるようになれば、少女を探すのか探さないのかなど話し合わなければならない事が山ほどあった。


(それにしてもいつもいつも見事な転移だな)


瞬きする間に跡形も無く姿を消すレヴィアスの転移魔法をエルムは賞賛した。

レヴィアスは三精霊の中で唯一転移魔法を使える。自分の知っている場所という縛りはあるがかなり便利な能力だと思う。


実際森の中に引き籠もっていた時も、便利な魔道具や生活必需品を手に入れてくれていたのはレヴィアスで、精霊の自分達だけならば必要ない物でもシャルを育てるにはどれもこれも必要な物だった。


転移魔法を羨ましいとは思うがレヴィアス、キラル、エルムとそれぞれに属性に応じた適正というか得意不得意があるので仕方ない。


三人ともが使える魔法と言えば気配を消す認識阻害系の魔法くらいだろうう。

しかしエルムにとっては認識阻害を使わなくてはならない事など殆ど無いので、今まであまり必要に思った事もない。


「帰るか」


今にも意識を取り戻しそうな様子を見せる二人を前に、エルムは一人そう呟くと家へと戻り大人しく休むのだった。



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