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ラモンは二人の対話を聞く。

 その姿が嫌というほど真実を物語る。

 けれど当の彼女は正反対の内容を口にした。


「……そんな訳ないじゃない、嫌だわ。貴族の方がこんな辺鄙な土地に家を建てる訳……それに。主人は既にこの家を出ているのよ。ほら、だからこの家には私以外、誰もいないでしょう。」


 確かにこの屋敷で一度もイルゼ以外の人間を見かけた事は無い。貴族の屋敷ならば主人であれ召使であれ、常に誰かしらはいるはずだろう。それにイルゼは以前、旦那との仲が悪かった旨の話をラモンとしている。

 けれど、イルゼはこんなにも憔悴している。それをたまたまだと断じるにはあまりにも。


 それにまだイルゼは本題の、麻薬の密売について言及していない。


 イルゼの言葉を受けたルシアは、少し視線を彷徨わせた後、「それは……」イルゼに、提案した。


「じゃあ、少し家の中を見させてもらってもいいですか。」


 ラモンは思わず振り返る。

 それはつまり。


「それは家の中を、漁る、ということかしら。……庭の隅から、箪笥の中、まで。」


 イルゼは憲兵がするような捜索を想像したのだろう。戸惑っている、その理由が伝わってくる。

 そして、ルシアはそれ頷いた。


「はい。」


「いや、やめろよ。俺たちにそんな権限無い。」


 他所の家の中を隅から隅まで調べる。

 イルゼの言った箪笥の中も、食糧庫の中も、今のルシアなら、その人だけの大切な物が入った小箱の中だってきっと調べる。

 そんなのはたぶん冒涜だ。

 人としての、人に対しての何かに、触れている。


 けれど、そんなラモンの気持ちとは裏腹に、イルゼは逡巡の後でしっかと頷いた。


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