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ルシアはイルゼに話を切り出す。

 緩慢に流れているように感じられた時間は、けれど早く進んでいたようで、次に気付いた時には、ラモンとルシアはテラスに通され、茶と菓子の準備をしたイルゼが丁度それを持って来たところだった。

 ということは、ここまでの間、ルシアは一言も話しかけてこなかったのだろう。


 イルゼのことが分かってから、彼女の顔には表情が無かった。

 それが殊更、薄気味悪かった。


 テーブルに人数分の茶と茶菓子を置いて、イルゼが席に着く。

 彼女が要件を尋ねる前に、ルシアが口を開いた。


「イルゼさん、麻薬、売ってたんですか。」


「……え?」


 ああ……ああ。言ってしまった。始まってしまった、ついに。これからラモン達は彼女と見知らぬ医者を引き合わせ、二人を王都に連行するのだ。最低でも一日はかかるその道のりを、この四人で進んでいくのだ。


「売ってたんですか。売ってたんですよね、そうですよね!イルゼさん、貴族だったんですか。家が広いのも、立ち居振る舞いが堂に入ってたのもそのためですか。もしかして旦那さんはここの領主ですか。」


 堰を切ったように、けれど言葉の勢いとは裏腹に、無表情のまま、彼女が言い募る。


 イルゼは、目に見えて動揺していた。

 陽光の下、零れ落ちんばかりに見開かれた瞳のその瞳孔が、開いているのがよく見える。たるみの目立つ首筋には脂の混じった汗が滲んでいた。


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