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ラモンはイルゼの家に行く。
その後の道のりはあまり覚えていない。
ただ、ルシアが言うには、イルゼを医者に引き合わせて、二人一気に王に告発するのだそうだ。
だからまずはイルゼさんに会いに行く。
気付けば、屋敷の屋根が見える所まで来ていた。砂を踏む足音が妙に耳に残る。
四日前にここに来た時を思い出す。あの時はルシアを担いでいたけれど今よりも足が軽かった。
ドアの前に出て、ルシアがノックする。
自身の息の仕方がおかしい事に、不意に気が付いた。
長く吐いて、一瞬吸う。吐いて、吸って吐いて。
少ししてドアの奥から足音が聞こえて来た。
「はいはーい。」
扉を隔てて、ここ四日で聴き慣れた声が聞こえる。
軽い音を立てて、ドアノブが回る。ドアが開く。
果たしてそこには目を丸くしたイルゼが立っていた。
「あら二人ともお帰りなさい。どうしたの、何か忘れ物?」
ルシアが一度息をついてから口を開く。
「とりあえず」
彼女が言葉を発する前に、それを遮る。
「とりあえず、中入ってもいいですか。」
ルシアの視線が伝わってくる。
けれど。
こんな、イルゼを今すぐ外に放り出せるような場所で話をするのは、ごめんだった。




