ラモンは浅い息をする。
黙りこくる彼女は、少し間を空けてから言う。
「……イルゼさんが、麻薬の密売に協力してた。」
視界が、揺れているような感覚がした。
つい先程まで出ていた声が、引き絞られるような喉に阻まれて、出てこなくなる。
なぜ、そんな嘘を吐くのだろう。
あの少しの時間に何があったのだろう。イルゼを堕としたいと思う程の何かが?—-考えても考えても、その理由が見つからない。
「……そんなわけないだろ。」
言うけれど、その声に力がない事を悟る。
「さっきの部屋、多分、薬の調合室で、薬の受け渡しとか、そういう資料が沢山置いてあって、書いてあった。——貴族への麻薬売買のルートをイルゼさんが作る、って。
イルゼさん多分、貴族の人だったんだね。だから家だってあんな大きくて……。」
ルシアは一気に言って、涙を拭う。その手の奥には、ひしゃげるような笑顔があった。
「ね、ラモン、イルゼさんを告発しなきゃ。どのくらいの地位の人なのかは、わかんないけど、王に直接言えば確実でしょ?私達になら、できるでしょ。今まで来た道、戻る事にはなるけど——」
彼女はこれからの旅路について続ける。実際には王の所に戻る、帰り道。
けれど、ラモンの頭にはその半分も、入ってこなかった。
ルシアの言葉を、否定できなかった。
イルゼに会った時からずっと、小さな違和感があったからだ。それは、きっとラモン達に対する対応だとかで、自分でも気付かない程の、ほんの少しの違和感が積み重なっていた。だから、ルシアの言葉を否定できない。
ただ、浅い息だけが口から漏れ出るだけだった。




