ルシアは確固たる証拠を見つける。
ドアを開けた途端、艶やかで澱んだ香りがルシアの体を包み込む。その部屋のカーテンは締め切られて暗かった。雑然とした机の上に、調合途中の薬と書類が散らばっている。天井には乾いた薬草が逆さにされて干してあって、中にはよく見る、一般的な薬草もあった。
机に駆け寄り、確固たる証拠を掴もうと散らばる書類に目を通す。
——薬の製造日、薬草の販売元、原価。乱雑に並ぶ数字の中に……あった。違法薬物の取引履歴。
それをひったくるように掴んで、内容に目を滑らせる。
『……十八日、闇市に20バルの出荷。
……九日、支配人に市場拡大の打診。事前に拡大の為の土台を作れ、とのこと。』
開け放った扉の外から走る足音が聞こえてくる、ラモンだろう。とりあえず、その音が一人分である事にほっとする。
意識を紙に戻してもう一度読み直す。
決して見落としの無いように。
『……十一日、闇市に10バルの出荷。
……十五日、イルゼ夫人に社交界での流通ルートの開拓を要請。承諾を得る。』
見落としの無いように見開いていた目が、一度ぶれる。動かなくなる。必死に目を逸らそうとするが、意思に反してルシアの瞳はその文字を凝視する。音がルシアから遠ざかっていって、時間がゆっくりと進むような気がする。
あの柔らかな笑みを思い出す。
いつの間にか手に持つ紙がくしゃりと歪んでいた。
「うわ、なんだここ汚な。」
走って来たラモンが部屋の前で驚くのが聞こえる。
流れる時間に身を任せ、ルシアはゆっくりと振り返った。




