ルシアは診察を受ける。
すると同時に私の名前が呼ばれる。
ラモンと合流して受付に行くと、
「順番になりましたので、診察室へどうぞ。」
案内通りに廊下を曲がり、診察室へ向かう。一つ部屋を通り過ぎて、ふいに慣れない匂いが鼻をついた、ような気がした。薬草のような、けれどもどこでも嗅いだことのないような……。馴染みの薬草の中に甘ったるい匂いがするような。
まあ、気のせいか、と考えていると、いつの間にか診察室に着いていた。
看護師に扉を開けてもらって中に入る。
中では、医者であろう、白髪のおじさんが座っていた。イルゼと丁度同じくらいの年齢だろうか。
診察室に入ると、先程嗅いだような匂いはなく、薬草の爽やかな匂いだけがしていた。
(やっぱ気のせいかな。)
部屋の中は、やはり領主の補助を受けているだけあって、ルシアが出入りしていたような病院よりも、随分と清潔にされていた。昼の日差しに壁の白さが際立ち、家具が、ルシア達が浮いているような感覚さえある。
勧められるまま医者の前に座り、後ろに控えるラモンが言う。
「先日、彼女の意識が無いところをみてもらったのですが——今はもう回復しているようですが、やはり心配で。」
「なるほど。大事をとってもう一度、ということですね。」
「はい。よろしくお願いします。」
ラモンが礼をし、ルシアも慌てて頭を下げる。
早速、医者はルシアの全身を診察していく。目の動きから外傷の確認まで。
その瞳は鋭く、腕のいい医師なのだろうと思わせる。
ひと通り確認すると、表情を緩めて言った。
「うん。特に問題無さそうですね。一応消化に良い薬を出しておきますから、胃もたれなどあるようだったら、飲んで下さい。」
後ろを振り返ると、ラモンがあからさまにほっとした表情をしていた。そこでやっと、本当に心配させていたのだと気付いた。




