ルシアは病院を観察する。
けれど、受付の持っている帳簿をちらっと見ると、それなりの人数が利用しているようだったから、この位の町にしてはいい方なのだろう。
「お嬢さん、病院は初めてかい。」
「へ?何でですか?」
壁沿いのベンチに座るおじいさんに聞かれ、答えるため、腰を屈めようとして——その必要がない事に気付く。聖女だった時の癖でやってしまったけれど、もうそこまでする必要は無いのだった。
「いや、なに、随分熱心に見回っているからね。」
「ああ。いやあ、ちょっと前まで病院に関わる仕事をしてたので、その時の癖なんです。」
病院の訪問では患者を見舞った後、毎回院長との面談があった。その中で運営状況について話すことも多かったので、先に情報を収集する癖を、つけていた。
「でも、そうやって見つけた事も、私口下手なのであんまり、話したりとか改善したりとかはできなくて……。」
面談ではいつも必要最低限しか話さなかったし、まして新しい聖女が現れてからはその子に任せっきりにしていた。
「そうかい。じゃあ、これから何かの役に立つんだろうね。」
(……?)
おじいさんの言っていることがわからなくて、思わず首を傾げる。
おじいさんは、そんなルシアを見て笑いながら言った。
「努力というのは、必ず何かに繋がるようにできているから。そうやって努力と成果が輪になって、人生は形作られていくんだろうね。」
おじいさんの言っていることがもっとわからなくなって、自然と首の角度が狭まってしまう。
「すまんの。変な事を言ったわい。まあ、臨死の老人の戯言とでも思っといておくれ。」
笑いながら席を立って、おじいさんを呼ぶ受け付けの方に歩いて行った。




