ルシアは帽子を買う。
足元に砕石が敷かれるくらいになると、その幅も大きくなって、人通りも増えていた。
道の脇には宿屋や小さな商店が並んでいる。
「ここの裏通りに逸れると病院があるらしい。」
ラモンの言葉にルシアは小さく頷く。
「じゃあ、帽子買ったらそこに行こう。」
そう言って、二人は再び歩き出した。
改めて辺りを見回すと、いろいろなモチーフの看板が目についた。右から宿屋、パン屋、仕立て屋、雑貨屋——酒場もあったが、この時間帯は皆働いているのか、あまり賑わってはいなかった。
そうして少し進んだところで、ついに帽子のモチーフが目に入る。
青空を背負うような背の低いその建物に、二人は入って行った。
——気が付けばかなりの時間が経っていた。
ルシアとラモンは、一方はほくほく顔、もう一方はげっそりとした顔で店を出る。
勿論、ほくほくしているのはルシアの方だ。
「なんっっで、俺の金なんだよ!」
「だって私お金持ってないし。」
ルシアが、持参したアクセサリーの換金方法を知らない事に気が付いたのは、つい先程のことだった。
「じゃあもっと、ハンチング帽とか、安いやつにしろよ!なんでそんな、ひらひらしたっ……!」
「そこまでひらひらしてないよ。」
ルシアは『安いやつにしろ』という部分には答えずに言う。
ルシアが被っているボンネット帽は今まで社交界で見ていた令嬢が着けていた物よりも随分と質素で、飾りといえば、つばと本体の境目にリボンが巻かれているくらいだった。
だが、今の彼はその程度のひらひらも気に入らないのか執拗に突っかかってくる。




