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ルシアは台所を出る。
実家では必要最低限しか外には出してもらえなかったし、聖女になった後は、お忍びの時でさえ、不届者に身を狙われないよう、あまり寄り道はしないようにと留意していた。
王達はルシアに良くしてくれたが、やはり市民や外部との交流は制限されていた。
本当はこんな風に、歩いていた道の先でばったり出会った人と、立ち話をしてみたかったのだ。
「よし!イルゼさん、できました!」
無事最後の一つをちぎり終えると、イルゼは既にパンを細くし終えて、それらを小鍋に張った水に漬けていた。
ルシアもその小鍋に、イルゼに倣ってパンを入れる。
「そうしたら、次はこれを火にかけるのだけど……ルシアさん、やってみる?」
「ぜひ!あ、でも——。」
実は少し前から、出て行ったきり帰って来ていないラモンが心配だった。
「やっぱりそれはイルゼさんにお任せします。——私、ちょっとラモンの様子、見てきますね。」
イルゼにそう言い残して、ルシアは台所を出た。




