ルシアは頬を紅潮させる。
「これはちょっと、無いだろ……。」
「えー。ウソそんなに?」
思って、ラモンの千切ったパンを見ると、確かにどれも一口大にされている。なるほど、ルシアの方が早く終わるわけだ。
ルシアはとぼとぼとテーブルに戻りパンを、今度は細かくちぎり始める。
自分の仕事を終え、手持ち無沙汰になったラモンはそっと台所から出ていった。
一欠片分を終えて、次に行こうとテーブルの上に手を伸ばした時、いつの間にか隣にいたイルゼの手とぶつかる。
「あ、ごめんなさい。」
「いえ。」
断りながらイルゼはパンを一欠片取って、ルシアと同じようにちぎり始めた。けれど、その動きはルシアよりも手慣れている。その手の動きを追っていると、イルゼが口を開いた。
「ルシアさんは、元いた場所ではあまり家事はしなかったの。」
元いた場所——城のことだろうか。ラモンは一体どこまでイルゼに話したのだろう。彼の消えていった扉を視界の隅に入れながら頷く。
「そうですねー。基本的には、料理は専属の料理人がやってくれたし、他の家事も使用人がしてましたね。」
だから。
「だから、今すごく新鮮で、楽しいです!——それに、今まではできなかったようなことが、これからは沢山、こういう風に、できるんだろうなって思って……本当に、楽しくて!」
つい頬を紅潮させて言うルシアを、イルゼは慈愛を湛えて見つめていた。




