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ルシアは料理に挑む。

「それ、屑、落とさないのは無理だと思うぞ。」


 隣を向くと、ルシアの手元に目を落としたラモンがいた。窓から差す四角い月明かりが丁度顔にかかって、表情がよく見える。先程からぼうっと突っ立っていたが、明かりの下、表情をよく見ると案の定、いつもより陰って見えた。


 やはり怒っているだろうか、ラモンの話を聞こうとしない事を。内容のわからないルシアでも聞く勇気が出ずにいるのだ。それを言おうとしたラモンの決心はどのくらいのものか知れない。


 手元に戻しかけた目を、再びラモンに向ける。

 青白い光に照らされ、彫りの際立つ横顔は、今は一心に料理に集中しているように見えた。


 視線を戻し、二つ目のパンもちぎり終えたところでイルゼに持っていく。後ろのラモンはまだ一つ目のパンをちぎっているところだった。


 少し離れた所で、ルシア達と同じくテーブルに向き合うイルゼは小鍋に水を注いでいた。城のパン粥は牛乳で作られていたが、そこは地域差があるのだろうか。


「イルゼさん、できましたよ。」


 言って、イルゼにパンを差し出す。


「まあ、ありがとう。」


 そう言って彼女は笑顔で受け取ろうとして——ピシリと固まる。引き攣った笑顔で言った。


「……ええと、ルシアさん?……これじゃあ、ちょっとまだ、大きすぎるかなぁ。」


 一足遅くパンをちぎり終えたラモンもこちらに寄って来た。

 それを渡そうとして、イルゼの目線の先、ルシアの千切った——三等分にした——パンを見て顔を顰める。


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