ルシアは台所へ向かう。
口ぶりからして、この家の主人だろうか。
「二日も寝ていたのだから、ルシアさん、お腹空いてるんじゃないかしら。ちょっと待っていてね。これから何か、簡単に作っちゃうから。」
言われてみれば。水を飲んだことで多少マシにはなったが、起きた時から胃が締め付けられる様な感覚がしている。
——こんな夜中に調理をお願いするなんて、とも思わなくもないけれど空腹に気づいてしまった今、それを抑えつけることはもうできない。
ルシアは諸手を挙げて言う。
「お願いします!ていうか台所まで行かせてください!」
先程からルシアの腹が、ぐるるるる、と音を立てている。さながら涎を垂らした獣が喉を鳴らす様だ。
配膳の一分一秒が惜しかった。
イルゼは「でも病み上がりの方に無理をさせるのは……。」などと言っていたが、ルシアの勢いを見て考えを改めたのか、頷いてルシア達を先導する。
イルゼがドアを開ける。部屋の灯りと廊下の闇が拮抗する様な光の境界を跨ぐ時、ラモンがついて来ていないのに気付いて、振り返る。ドアの縁にランプの光が弛んで、境界は半円の形を作っていた。
「ラモン?どうしたの。」
——正直、イルゼが来る前に言い掛けた話だろうと予想は着く。けれど、あんな風に張り詰めた面持ちで話されようとした事を、もう一度聞いてみよう、とは思えなかった。イルゼの誘いに乗ったのはそんな理由も少なからずある。
「ほら、行こ。」
ルシアは彼に近づいて、強引に手を引っ張って行った。




