ルシアはただ水分を補給する。
ベッドサイドのランプに火をつける。炎の柔らかな橙が部屋の全体を照らした。
部屋はどうやら寝室のようで先程まで眠っていた寝具以外に目立った物は無かった。窓の外には畑と、点在する民家が見えた。とするとここは、田舎にある一人暮らしの人間の住居といったところだろうか。
そう思い至ったところで、突然戸の外からドタドタと足音が聞こえてきた。
ドアノブがちゃりと大きな音をたてて開き、息を詰めたラモンがその隙間から滑り込んで来た。
部屋のドアから漏れた明かりでルシアが起きたと気づいたのだろう。
——あれ、ということは、まさかずっと廊下に?
戸惑いながら、(とりあえず「おはよう。」だな。)と口を開けて——声が出ない事に気づく。先程まではパニックで気が付かなかったが、ルシアは喉が渇いていた。
ルシアの掠れた、声未満の喉の音を聞き、今しがた部屋に入ったばかりのラモンは部屋を飛び出していった。
呆気に取られたのも束の間、ラモンはすぐさま水差しとコップを持って戻って来る。
動揺しながらも、差し出されたコップを手に取り、欲望の向くままに水を喉に放り込む。喉が大きな音を立てて飲み込んだ。
気の利くルシアの元従者はお盆いっぱいにコップを置いていて、ルシアが水を喉に放り込むと次々にコップに水を注いで手渡した。
両者共にルシアの喉の渇きを埋めるためのバケツリレーを無言で続ける。
そのうち、水差しが空になって、やっとひと息吐いた。
横を見ると、ラモンは空いてしまった手をうろうろと彷徨わせていた。




