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ルシアは夜をもがく。

 暗い部屋の中、ルシアは目を覚ました。

 頭の上、カーテンの隙間からもう随分と冷たくなった風が吹いている。


 ——ここはどこだろう。


 ゆっくりと、頭を巡らせる。


 確かルシアは、王城を出されて、宿に泊まっていて、——拉致されて、殴られて。

 ああ。そうだ!


 ——人を殺した。


 気づいた途端、喉から嗚咽が漏れる。息が浅くなる。

 蘇るようだった。脂の焼ける匂い、男達の叫び声——。


 まとわりつくように淀んだ藍色の中、忙しなく手を動かして必死に身体中を確認する。


 身体のどこかに煤がついている気がした。人を焼いた煤が。

 鼻に脂がべっとりとついている気がした。耳に叫び声が、その残響が残っている気がした。


 彼らが生きていた証が残っている気がした。


 ——落とさないと。私がしたことが、誰にも気付かれないように。


 死物狂いで手を動かしながら、もう一度寝てしまおうかと考えた。

 もう一度寝て、目を閉じたまま朝が来なければいい、錯綜した頭で、そう思った。

 また起きてしまっても、その時にはきっと朝になっていて、それを繰り返していれば、そのうち記憶も薄れてずっと昔の事になる。


 そう思って、喘ぎながらも目を閉じて——。


 駄目だ、と思って目を開けた。


 なんとなく、いけない気がした。

 人を殺した、責任から逃げて自分だけがのうのうと生きているなんて、いけないと思った。

 彼らを殺した、私だけは覚えていなければ、と。


 これは、自罰的であまり褒められた考え方ではないだろう。それでも。


(私だけは、目を背けちゃだめだ。)


 そう決意すると、それを契機にふっと身体の力が抜けて、呼吸が落ち着く。


 ルシアは一つ息をついて、ベッドから出る。


(とりあえず、明かりつけよ。)


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