ラモンは茶会を終える。
一年間本当にありがとうございました。今後もどうぞよろしくお願いします。よいお年を!
袖下片藍
どうやら聖女本人だということは気づかれなかったようだ。ラモンは小さく息を吐く。
別にやましい事をしている訳ではないので本名を使っても問題無いのだが、知名度があり、さらに渦中の人間であるので、身分がばれるのは望むところではなかった。
予想通り、顔までは伝わっていないようで安心する。
目線を上げると微笑むイルゼが目に入る。
「それでラモンさん、これからはどうするの?別段ここらに用事があるわけではないんでしょう?」
「とりあえず、ルシアが目を覚ましたらお暇させていただきます。目的地は決まっているので、辻馬車でそこに向かおうかと。」
もう元いたメドソルムからどの位離れたのかわからない上、国お抱えの御者とは別れて一日程過ぎてしまっている。——彼はラモン達が逃げ出したのだと思うだろうか。それとも何か事件に巻き込まれたのだと思うだろうか。
どちらにせよラモン達が消えた事を彼は王に報告しなければならない。今頃既にメドソルムを発っていることだろう。
行き違いになるくらいなら、辻馬車で新たな領地に着いてから生存と到着を報告すれば良いとラモンは考えた。
「そうなの。この辺りの辻馬車は混むから高貴な方には辛いと思うけれど大丈夫かしら。」
(またか。)
苦笑しながらラモンは答える。
「だから俺は貴族ではないですよ。——重々気をつけます。ありがとうございます。」
イルゼは微笑んで頷く。
その後、少しだけ世間話をして小さなお茶会はお開きになった。




