ラモンはお茶をする。
イルゼは瞬く間に茶の用意を済ませると、先にテラスに通されていたラモンに、アールグレイティーとシフォンケーキを差し出した。
昼の日差しが紅茶の赤にきらきらと反射する。
ティーカップの金色の縁取りに口をつけた。
「ごめんなさいね、こんな安物しかなくて。お貴族様には少々物足りないでしょうけど許してくださいな。」
服装や振る舞いから推測したのだろう。イルゼはラモン達が高位の者だと見抜いて、言った。
「いえ、俺達は貴族では無いですし、このお茶も美味しいです。お気になさらず。」
別に嘘では無い。ラモン達は元々は従者と聖女。どちらも貴族とは少し違った地位だし、それも今は剥奪されている。
「そう。喜んでもらえて良かったわ。」
イルゼはそう言って笑う。
先程も見た笑い方だった。目尻の皺が際立ち、眉が少しだけハの字になる笑い方。
よく見ると目尻の皺は他よりも深く、昔から同じような表情なのだろうと思えた。
「ところで、お名前を聞いてもいいかしら。」
言われて気付く。主人が倒れたのだから当たり前だが、なにぶんバタバタしていて自己紹介をすっかり忘れていた。
「すいません、自己紹介が遅くなって。——ラモンです。さっきも言った通り、残念ながら貴族じゃないので苗字は無いですけど。」
「いい名前ね。女の子の方は、なんてお名前なの。」
少し逡巡し、言う。
「ルシアです。」
「——まあ。聖女様と同じ名前ね。素敵だわ。」




