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ラモンは動転する。

 一瞬前まであんなに憤っていたのが嘘のように、脳の裏が冷えていく。


 ラモンは震える脚を踏ん張りながらルシアに駆け寄り身体を揺する。


「——ルシア。ルシア!なんで、どうして。返事しろよ。おい!へんじ——。」


 ラモンは目を見開く。

 ルシアの、長い髪の隙間から覗く顔は真っ青だった。

 慌ててルシアの口元に手を当てる。

 かなり浅いが、呼吸はあった。


 病院に行こうと思い、ラモンはルシアをおぶって町の方へ走り始めた。


 いつからだったのだろう。


 今思えば、彼女を見つけたときから少し様子がおかしかった。

 それを、怒りに任せて気付かずに過ごしてしまったのだ。

 つい先程まで、彼女を思って走っていたというのに。


 何分か走っていると、街に出た。

 たが、そこは街の中でもだいぶ外れの方らしく、住宅はあれど、病院の姿は無かった。


 ラモンはさしあたり一番近くの住宅の戸を叩く。

 

「はいはーい。」


 ドアの向こうからとことこと足音がする。

 その音が今はじれったかった。


 キィと音を立ててドアが開く。

 ドアを開けたのは中年の婦人だった。

 夫人は、青ざめた二人を見ると小さく悲鳴をあげた。


 そんな婦人に、ラモンは、愛想を良くしようと努めながら話し掛けた。


「突然のことですみません。同行者の体調が急に優れなくなりまして、近くに病院はありますか。」


 それを聞いて何かを察したようで、夫人は少し慌てたようにラモンに家に入るよう伝えた。


「それならどうぞお入りください。すぐにベッドを用意します。ああ、病院はこの辺にはありませんが、医者に来てもらうほうが早いかもしれません。少々お待ちください。」


 そう言って夫人はパタパタと家の中に戻って行った。


 ラモンも夫人の勢いに気圧されながらも家の中に入る。

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