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聖女は逃げた。
ルシアは従者に言った。
「よし、逃げよう。」
「は?」
そう言うないなや、ルシアは従者を抱えて走り出した。
ルシアに無様にも脇に抱えられながら、従者、ーーラモンは言った。
「え、なんで逃げるんすか。別に俺達なんもやましい事してないっすよ。」
「や、まあそうだけど。でもなんか、ずっとあそこにいるのも気まずくない?どうせ私の追放は決定事項なんだろうし、私がいなくても勝手に話進むでしょ。」
そう言いながらルシアはホールの玄関ドアを開ける。
「だからってこんな急がなくても…。」
「別に急いでないよ。」
「え?でもこんなにダッシュで、。かっ飛ばして…?えじゃあなんでこんな走ってるんすか。」
ルシアはその質問には答えなかった。ただただ、暗い夜の冷たい風を切りながら走る。
ルシアは今清々しい気分だった。踊り出したいような、走り出したいような、縦横無尽に芝生の上を転がりたいような。
こんな日をずっと待っていたのかも知れない。
毎日知らない誰かの侮蔑に耐え、上手くもできない仕事を黙々とこなす日々から、こんな風に逃げ出せる日を。