ルシアは動揺する。
あの男達の仲間かも知れない。
ルシアは勢いよく振り返った。
そこには息を切らしたラモンがいた。
ルシアは驚き、目を見開く。
「——なっなんで、来たの——。」
そう言った一瞬、ルシアを眩暈が襲った。
それを意に介さず、ルシアは言葉を紡ぐ。
「——だって、ラモンは、もう従者じゃ無いし、私のこと、助ける、必要無いし——え?あれ。なんで、来たの?」
ルシアは頭を抱えながらラモンに問う。
ラモンは膝に手をつきながら言った。
「なんでってなんでだよ。従者じゃないと助けちゃ駄目なのかよ。」
また、ルシアの視界がぐらりと揺れた。脳裏に火の赤色がちらつく。
「——へ。いや別にそういう訳じゃない——と思うけど、でも、もう私主人じゃない訳で、ただの——。だから、そこまでする必要ないから——。」
今度は眩暈と同時にルシアの頭にズキンと痛みが走った。男達の叫び声が響いている。
ルシアの言葉を聞いているのかいないのか、ラモンの質問はまだ続いた。
「ただの、なんだよ。必要ってなんだよ。言ってみろよ。なんで夜に一人で部屋に居たんだよ。せめてロビーかどっかに居れば——。」
後半の言葉は責めているのか、心配しているのか、もう判別できない。そしてルシアにはそれを気にかける余裕は無かった。
先程まで断続的に起こっていた眩暈は、もう絶え間なく続いていて、視界の端が暗く染まり、足元が霞んでいく。
頭の中で、頭痛と同時に男達の悲鳴が響く。鼻には肉を焼くような匂いが、まだ残っているような気がしていた。
世界が赤黒く滲んで、全てが遠ざかっていく——。