ルシアは応戦する。
驚きに固まる男達の顔を、ルシアは見もしなかった。今は、生きることだけが優先だ。
ルシアはすぐさま魔法で、四肢を縛る縄を切り、弾かれた石に駆け寄った。
だが狼狽えていた男達の一人がハッとした様にルシアに腕を伸ばし捕まえようとする。
反射的に、ルシアの手のひらから閃光が迸った。空気を裂く光が、男の腕を弾き飛ばす。
「痛っ!」
男は反射的に手を引っ込める。
そうしてルシアは一目散に石に駆け寄り、手に取ると、ひと塊りになっている男達を目掛けて投げ付けた。
すると、石が男達に当たった途端、火を噴き、男達に燃え広がった。
肉を焼く匂いが鼻をつく。
男達は膝をつき叫んでいたが、暫くすると静かになった。
ルシアはそれらに近づくが、火の勢いはまだ衰えず、中の様子は確認出来なかった。
これはいつ落ち着くのだろうとルシアは心配になった。
火はまだ勢いを失わない。フリアンの説明は、止め方までは及んでいなかった
とりあえず水をかけてみようと、倉庫の扉を後ろ手に閉めながら、外に出た。
外は森のようになっていて、人や家の姿は無かった。
ルシアが井戸は無いかと辺りを探していると、遠くから足音が聞こえてきた。
土を蹴る音が、風を切るように近づいてくる。息は荒く、何かを急いでいた。