第5章:砂嵐の試練
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アル=ザハルの夜——市場の喧騒が消え、街の一角にある オークション会場 には貴族や富裕な商人たちが集まっていた。
砂漠の都にふさわしい豪華な装飾が施された会場の中央には、大理石の台座が置かれ、その上には様々な貴重な品々が並んでいる。
ロランドとオーブリーは、観客席の隅に座りながら、出品される品々を見守っていた。
「本当に、ここでサンドホライズンクォーツが出るのね?」
オーブリーが小声で確認する。
「ああ、グスタボの言葉を信じるならな」
ロランドは慎重に辺りを見回した。
「だが、それだけじゃない……」
「え?」
「どうも妙だ。このオークション、ただの商売の場って雰囲気じゃない……」
ロランドは違和感を覚えていた。この会場には、 異様な緊張感 が漂っていた。
やがて、司会の男が壇上に立ち、オークションが始まった。
「さて、次の品は……!」
会場の視線が一斉に壇上へと向く。
「出ました! サンドホライズンクォーツ!」
ロランドたちが求めていた品が、ついに台座に置かれた。
「入札開始は 500ゴールド!」
「600!」
「750!」
「1000!」
次々と価格が吊り上げられていく。
「な……なんでこんなに高騰してるの?」
オーブリーが驚きながら尋ねると、ロランドは険しい顔をして答えた。
「やはり、ただの鉱石じゃないようだな……」
◆
その時——
「5000ゴールド。」
低く響く声が会場に広がった。
一瞬で空気が張り詰める。
振り返ると、そこには 黒装束の男 が座っていた。
「……誰だ、あいつ?」
オーブリーが不審そうに男を見つめる。
ロランドも同じく警戒を強めた。
「これは……厄介なことになったな」
「どうするの?」
「決まってる。競る」
「えぇ!? でも、そんなお金どこに——」
「黙って見てろ」
ロランドは静かに手を挙げた。
「6000ゴールド」
「7000」
「8000」
「……9000」
黒装束の男が、一瞬だけロランドを見た。その視線は、冷たい鋭さを持っていた。
「……ふむ」
黒装束の男は、それ以上の入札をせず、椅子にゆっくりと腰を下ろした。
「9000ゴールドで落札です!」
会場がざわめく中、ロランドは息を吐いた。
「……なんとか手に入れたか」
「ちょっと! あんた、本当に9000ゴールドも持ってるの!?」
「持ってるわけないだろ」
「えぇ!? じゃあどうするのよ!?」
「グスタボの手助けがある。計算は済んでる」
ロランドは自信ありげに微笑んだ。
こうして、 サンドホライズンクォーツ はロランドたちの手に渡った。
しかし、あの 黒装束の男 の正体は未だ謎に包まれていた——。
(続)