第4章:砂漠の都市アル=ザハル
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広大な砂漠の向こうに、 アル=ザハル の街並みが見えてきた。
「やっと着いた……」
オーブリーは額の汗をぬぐい、喉の渇きを感じながら呟いた。
「砂漠の移動は思った以上に体力を奪うな」
ロランドもまた、砂の上を歩き続けた疲労を感じていた。しかし、ここで休むわけにはいかない。目的ははっきりしている。
ゴールドラベンダークォーツの次の手がかりを探し、次なる宝石「ピーチサンジェイド」の情報を得ること。
二人は砂漠の街 アル=ザハル に足を踏み入れた。
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アル=ザハル は、砂と風の国。
広がる市場には、鮮やかな布をまとった商人たちが声を張り上げ、交易品が所狭しと並べられていた。香辛料の香り、焼き立てのパンの匂い、人々のざわめきが混ざり合い、まさに活気溢れる場所だった。
「この町、王都とは全然雰囲気が違うわね」
オーブリーは興味深そうに露店を眺めていた。
「砂漠の民と交易商が集まる町だからな。ここでは金と情報がすべてだ」
ロランドは市場の中心に目を向けた。
「さて、情報を集めるには……」
すると、目の前の露店で、奇妙なやり取りが目に入った。
「ほう、この剣は見事な品だな。しかし、私の目を誤魔化すことはできん。この細工、どこかで見たことがあるぞ……」
そう言いながら、金髪の男が商人をからかうような口調で交渉していた。
「……あいつは?」
ロランドは男に視線を向けた。
「さあね。でも、商売人みたいな感じ?」
すると、男は軽くこちらを振り返り、にやりと笑った。
「そこの二人、何かお困りかい?」
「……あんたは?」
「俺か? グスタボ だ。ただのしがない商人さ」
「ただの商人にしては、随分と口が達者だな」
ロランドが警戒の色を滲ませると、グスタボは肩をすくめた。
「何、俺はただ、金になる話に敏感なだけさ。それより、何を探してる?」
「ピーチサンジェイドの情報だ」
グスタボはその言葉を聞くと、ニヤリと笑った。
「へえ、あんたら、なかなか面白いものを探してるな。でも、その情報が欲しいなら、タダじゃ教えられないね」
「何か条件があるってこと?」
オーブリーが眉をひそめると、グスタボは愉快そうに頷いた。
「そういうこと。ちょうど今夜、オークションが開かれるんだ。そこに出品される『サンドホライズンクォーツ』を落札してくれたら、情報を渡すよ」
「……ただの鉱石じゃないのか?」
ロランドが疑問を口にすると、グスタボは笑みを崩さないまま答えた。
「この町では、ただの鉱石が大きな価値を持つこともある。取引のルールに従ってもらうさ」
「……なるほどな」
ロランドは短く頷いた。
「わかった。条件を飲もう」
「決まりだな」
グスタボは軽く手を打ち合わせ、商談成立の合図を送った。
こうして、ロランドたちは アル=ザハルのオークションに参加することになった。
(続)