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39話 意外としたたか

 不良の副リーダーはどういうわけか、トール・ハクギンがカフェに来ることを誰から聞いたのか思い出せなかった。


「あ、あれ……? そもそも俺はいつ、誰からこの話を聞いたんだ……!? どういうわけかハクギンさんの苗字や顔を知って……あれ!?」


 トールの話によると副リーダーは、改造リトルナイトに幻術をかけられた可能性があるらしい。


「おい、どういうことだよ……!」


 ゴウカを肩に乗せたフレアは、頭を抱える副リーダーを見つめながらトールに問いかける。


「改造リトルナイトって、ただ強いわけじゃないのか!? 人を騙せるほどの幻術って、もはやリトルナイトの域を超えてるだろ……!」


「改造されたリトルナイトは制限を超えた力を行使できる。もはや妖怪」


 動揺を隠しきれないフレアに対し、トールは感情を出さず淡々と話を続ける。


「元々、リトルナイトの心には式神や守護精霊などの人を守る精霊を使用してる。リトルナイトの改造は、リトルナイトの身も心も化け物に変換する恐ろしいもの」


「妖怪って……つまり改造リトルナイトってのは、リトルナイトの制限を何もかも外して、人間の脅威になるような化け物を生み出す行為ってことなの?」


「大体合ってる」


 首元にカマイタチのダイキチを巻いている光朗の言葉にトールは頷く。


「幻術で人のフリをする改造リトルナイトの話も聞いてる。最近この辺に出没しているらしい」


『リトルナイトは主人から離れて活動できる……! ワシらが学園に通ってる間も、その改造リトルナイトは好き勝手してるということではないのか!?』


「それってかなりまずいんじゃないの?」


「実際まずい。改造リトルナイトはやったら駄目なことも平気でできるから、結構被害も出てるみたい」


 カイエンとスミの指摘に、トールは頷きながら答える。


「想像以上にまずいことになってるんだ……」


 改造リトルナイトの想像以上の脅威にほんの少し恐怖を覚えた私は、ピントが収まっている鞄をぐっと引き寄せた。


『大丈夫だよカエ、何かあったら僕が守るからね』


「ピント、ありがとう」


 ピントは鞄から身を乗り出して私の腕を抱きしめてくる。私はピントの頭を撫でてお礼を言う。



「さて……とりあえず副リーダーはどうするんだ?」


 再びフレアは発言して場を仕切り直す。


「強い幻術をかけられた疑いがあるのなら、念のために病院行った方がいいんじゃねーの?」


「うん、それがいいと思う。最寄りの病院に駆け込んだ方がいい」


「そ、そうする……」


 フレアとトールの提言に副リーダーは素直に頷いた。



「不良軍団はこれでよし。後でカフェの店長にお礼を言って……あ、そうそう」


 トールは何かを思い出すと、鞄からチケットのようなものを2枚取り出しながら光朗と小次郎の方を向いた。


「これ、ピント達を助けてくれたお礼」


「やったー! ありがとうございまーすっ!」


『これで高くて手が届かなかったパーツを買える〜!』


 トールが差し出したのは、リトルナイト関連の商品と引き換えられるチケットらしい。

 光朗とカマイタチ型のダイキチは大喜びでチケットを受け取った。


「わざわざお礼なんて……でも、ありがとうございます。ありがたく受け取らせていただきます」


『感謝』


 忍者リトルナイト「クロカゼ」の主人である小次郎は遠慮がちにしながらも、うやうやしくチケットを受け取った。


『なるほど、やけに協力的だったのは報酬があったからか』


『当然でしょ! 報酬無かったらわざわざあんな危険地帯に飛び込まないって!』


『現金な奴だ……まあ、そういう点ではある意味信用できるかもしれないな……』


 ダイキチがゴウカ達に協力的だった理由に納得いったのか、ゴウカは静かに頷いていた。


「さて、後は……」


『あ、そうだ。さっきカイエンがバラバラにされてたけど大丈夫?』


「バラバラ……」


「え〜? そうなの?」


 ピントの問いかけにトールとスミが反応する。


『むぅ……その通りだ。スミ、念のために……近いうちに、ナイト工房に寄ってワシを修理に出してくれんか?』


「いいよ〜」


 カイエンは申し訳なさそうにメンテナンスを申し出る。対するスミはカイエンの申し出に対し笑顔で快諾した。



「にしても……カイエンって、スミとは全く性格が違うよな」


 フレアはカイエンとスミの性格の違いを指摘する。スミとは異なる性格を持つカイエンのことは、私も気にはなっていた。


「カイエンはお爺ちゃんの心がこもってるリトルナイトなんだよ〜。優しくて心配性で、豪快なところは完全にお爺ちゃん譲り〜」


「なるほど、どうりで……」


 カイエンの性格がスミと似ていない理由が分かった。

 納得するフレアに対し、スミは更に話を付け足す。



「カイエンはね、お爺ちゃんが最後にプレゼントしてくれた大事なリトルナイトなの」



 スミの一言に周りがしんと静まり返る。特に顕著だったのは副リーダーで、一瞬で顔が青ざめていた。


「あ、あの……スミさん……」


 副リーダーは青を通り越して真っ白になった顔でスミに近寄る。


「なあに?」


「えっと……指示出してリトルナイトをバラバラに解体させたのは俺です。あの……修理のお金とか、諸々は俺が出しますんで……」


「いいの?」


「はい……と言うか、出させてください……何の関係もない一般人を巻き込んだなんて番長が知ったら……いや、そもそも不良としてそんなシャバい真似晒す真似はできないんで……」


「大丈夫なんだけど……でも、此処で断ったら副リーダーさんは納得できないんだよね? じゃあ、お願いしようかな?」


「あ、ありがとうございます……!」


 どういうわけか副リーダーは、賠償をスミに受け入れられて感謝の言葉を述べている。

 そんなスミに、フレアはこっそり話しかけに向かう。


「スミ、そのカイエンそんなに大事なリトルナイトだったのか……」


「うん。私が小学生最後の時にお爺ちゃんがくれたの。去年の魔法学校の最後の時はリトルナイト関連の色んな物をくれて……」


「えっ?」


「ちょっと待って」


 スミの言葉に疑問を抱いた私は思わず話に介入する。


「もしかして……スミのお爺ちゃんって、まだ生きてる?」


「うん。お爺ちゃんは強い魔法使いだから誰よりも長生きするって〜。昨日もお話したよ〜」


「スミったらもう……」


 まさかスミにこんな一面があったとは。スミは割としたたか性格なのかもしれない。

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